チャーム/クレイロ
ファースト・アルバム『イミュニティ』はロスタム、セカンド『スリング』はジャック・アントノフ。なかなか興味深い顔ぶれがプロデューサーとして関わってきた“クレイロ”ことクレア・コトリル。ロスタムの下ではローファイな感触とかベッドルーム・ポップ的な感触とかを深掘りして、アントノフの下ではナチュラルなシンガー・ソングライター・サウンドへと一歩踏み出して…。
で、今回はなんとダップトーン系というか、トゥルース&ソウル・レコードとビッグ・クラウン・レコードの共同創設者であり、エル・ミシェルズ・アフェアのリーダーとしておなじみのリオン・マイケルズにプロデュースを依頼。
本作も前作の延長線上ではあるのだけれど、ウーリッツァー・ピアノやメロトロン、オルガン、フルート、クラリネットなどがいい感じに編み上げるソフトかつヴィンテージなアンサンブルの背後に、しかし柔軟なグルーヴが流れ続けているのが新味か。マイケルズによるこの巧みな音作りが、思いの外、クレイロ持ち前の儚げなソングライティング感覚と相性がいい感じ。
『スリング』ではアントノフが構築するアンサンブルに引っ張られている局面もなくはなかったけれど、今回は楽曲そのものがちゃんと全体をリードしているようで。今作のリリースに至るまでに、精神的にも肉体的にもいろいろと壁にぶつかったり。ナーヴァスな状況を乗り越えてきた体験が活きているのかな。去年の秋、Bandcamp限定で新曲「ラヴェンダー」をリリースして、収益をすべてガザ地区の救援活動を行なう国境なき医師団に寄付していたのも印象的だった。
静かに、でも確かな意志を持って活動を続けるクレイロ。ソングライターとしてだけでなくパフォーマーとしても成長したな、としみじみ。