Disc Review

Fork in the Road / Neil Young (Reprise)

フォーク・イン・ザ・ロード/ニール・ヤング

ボブ・ディランの新作ももうすぐっすね。

アルバム・リリースに先駆けて「ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン」って曲だけすでに配信されていて。これがむちゃくちゃかっこいい。なんでも、新作アルバム自体、往年のチェス・ブルースを意識したものになりそうだとかで。この曲は、もう、もろオーティス・ラッシュ。まあ、クラプトンでもおなじみの「オール・ユア・ラヴ」にメロディがそっくりなんだけど。メロディそっくりってのは、ディラン内では無問題であることをわれわれは経験上知り抜いているので(笑)。

でも、「オール・ユア・ラヴ」といえば、誰しもコブラ・レコードからのど派手なヴァージョンをまず思い出すわけですが。さすがディラン。チェス・レコードへのこだわりなのか、オーティス・ラッシュとアルバート・キングの連名でチェスから出たアルバム『ドア・トゥ・ドア』収録の、ちょっと渋めの60年ヴァージョンのほうを下敷きにしている感もあり。一筋縄にはいかない。アコーディオンとかも交えてエキゾチックにきめてます。

まじ、新作リリースが楽しみなのだけれど。そうこうしているうちに、なんとニール・ヤングの新作アルバムも出てしまった。ニール・ヤングといえば、このところ過去の音源の再発が相次いでいて。噂のブルーレイ10枚組アーカイヴスも発売決定ということで。うまくいけば、もうそれが出ているはずだったのに。なんと、新曲がたくさんできちゃったからという、なんとも直球ど真ん中な理由でアーカイヴス・ボックスの発売は6月に延期。急遽、ニュー・アルバム『フォーク・イン・ザ・ロード』がリリースされた。

これ、ニール・ヤングが今、全力を投入している話題のエコ・カー“Linc Volt”プロジェクト絡みの1枚。Linc Voltってのは、技術の粋を尽くして愛車1959年型リンカーン・コンチネンタルを夢のエコ・カーへと改造したもので。説明すると長くなりそうなので、詳しいことはググっていただきたいのだけれど。ニール・ヤングに言わせると、エネルギー源の見直しこそが現在の戦争を終結させる最大の方法だ、と。なるほど。石油なんか使わなきゃいいんだってことか。言えてるかも。

しかも、ニールさん曰く、みんなエコ・カーの開発というと小さく小さく考えがちだけど。でも、車はでっかいほうがいい。これまで通りのでっかいボディのアメ車で、しかもエコ。それを開発したいんだ、と。なぜなら、車はでかいほうがかっこいいから(笑)。この理由も、ニールン・ヤングっぽいというか、ロックンロールっぽいすね。

というわけで、今回の新作アルバムに出てくる“She”という単語は、ほとんどLinc Voltのことを指している。この娘がどんなに強力で、エコで、いかしたやつかをハード・ドライヴィンなサウンドに乗せてぐいぐい聞かせてくれる。もちろん、現在の社会への不満とか怒りも満載。ビル・モンロー「ヘヴィ・トラフィック・アヘッド」、ハンク・ウィリアムス「ロスト・ハイウェイ」、サニー・ボーイ・ウィリアムスン「ポンティアック・ブルース」、ジャッキー・ブレンストン「ロケット88」、チャック・ベリー「ユー・キャント・キャッチ・ミー」、ジーン・ヴィンセント「レース・ウィズ・ザ・デヴィル」、ビーチ・ボーイズ「アイ・ゲット・アラウンド」、ブルース・スプリングスティーン「サンダーロード」など、ロックンロール・ヒストリーにはごきげんなカー・ソングが溢れているのだけれど。その最新型が登場したって感じ。エコだけど(笑)。

やっぱりDVD付きエディションがいいか、と。収録曲のクリップとか、ツアーのアンコールで歌っていた「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」とか、映像も入ってます。ちなみに、米iTunesヴァージョンには別映像も。ネットで見ることができた映像ばかりではあるけれど。油断なりません。

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