Disc Review

Written in Chalk / Buddy & Julie Miller (New West)

リトン・イン・チョーク/バディ&ジュリー・ミラー

ロバート・プラントとアリソン・クラウスのデュエット・アルバムって、日本ではまったくと言っていいほど話題にならなかったなぁ。グラミーを獲りまくったころにほんの一瞬、その存在が着目されたくらい。カントリーにせよ、ブルースにせよ、R&Bにせよ、ロックンロールにせよ、男女デュエットというのはアメリカン・ルーツ音楽の世界で時を超えて生き続ける伝統的なフォーマット。その最新型をプラント&クラウスは、Tボーン・バーネットのプロデュースのもと、実に巧みに見せてくれたわけで。ああいうのを軽くスルーしちゃうのは絶対もったいないと、ぼくは思うのだけれど。

まあ、仕方ないのかなぁ。ロバート・プラントに限らず、日本ではロック系アーティストのファンの大半は、そのアーティストが好きな音楽とかにはまったく興味がないみたいだから。ジェフ・ベックが彼のアイドル・ギタリストのひとり、クリフ・ギャラップに最大の敬意を払った『クレイジー・レッグズ』ってアルバムがベック・ファンからはなかったことにされているのと一緒か(笑)。

ともあれ。そんなロバート・プラント&アリソン・クラウスのコンサート・ツアーで、ギタリストとして彼らをがっちりバックアップしていたというバディ・ミラーが久々に自らのアルバムをリリースした。やはりシンガー・ソングライターとして素晴らしい活動を続けている奥様、ジュディ・ミラーとの連名アルバム。連名ではこれが2枚目ってことになる。プラント&クラウスの即席デュエットに対して、こっちはほんまもんの夫婦デュオだぜ、と。そんな心意気もあったのかも。

ナッシュヴィルにあるバディのホーム・スタジオでのレコーディング。ブレイディ・ブレイド、マット・ローリングス、クリス・ドナヒュー、ジョン・デデリック、ジェイ・ベラローズら旧友ががっちりサポート。エミルー・ハリス、パティ・グリフィン、そしてロバート・プラントらも参加。ディラン人脈としてもおなじみ、ラリー・キャンベルのフィドルも聞ける。こうした顔ぶれに囲まれ、ジュリー・ミラー作の楽曲を中心に、古いカントリーのカヴァーも交えて全12曲。デュエット曲あり、それぞれのソロ曲あり、ゲストを迎えてのデュエットあり、多彩な編成で聞かせる。

デュエット曲「ガソリン・アンド・マッチズ」のやさぐれたドライヴ感がごきげん。ガーフ・モーリックスのラップ・スティールやステュアート・ダンカンのフィドルを従え、バディ・ミラーとロバート・プラントがぐっと抑制の効いたクールなデュエットを聞かせるメル・ティリス作品「ホワット・ユー・ゴナ・ドゥ・リロイ」のカヴァーもいかす。ジュリーの「ロング・タイム」でのジャジーでブルージーな感触もぐっとくる。ミネアポリス出身の女性シンガー/ソングライター/トランペッター、カミ・ライルのミュート・トランペットも泣ける。アルバムのラスト、レオン・ペインの曲をカヴァーした「ザ・セルフィッシュネス・イン・マン」に漂う深く重い空気感も印象的だ。

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