Disc Review

The Complete U.S. Bearsville & Warner Bros. Singles / Todd Rundgren (Rhino/Warner Music Japan)

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コンプリート・ベアズヴィル&ワーナー・ブラザーズ・シングルズ/トッド・ラングレン

ずいぶんと昔。あれはいつだったか。確か、1987年。何月号だったか忘れたけれど、『ミュージック・マガジン』読みながら大ウケしたものだ。ほんと笑えた。各輸入盤屋さんの広告が。とんでもなかった。

トッド・ラングレン。

この名前しかなかった。広告ページに。東京の各輸入盤屋さんの広告ときたら、どれ見ても軒並みトッド、トッド、トッド。米ライノ・レコードを通して、彼がベアズヴィル・レコードに残したソロ・アルバム群がまとめて再発売されるという広告ばかり。あのときはLP、カセット、CDなど様々なフォーマットでソロ18作の大規模な再発プロジェクトが勧められたのだけれど、時期的にちょうどCDが世の中に浸透し始めた時期でもあり、話題の中心はCD。お店によっては、CDを独自にボックスセット化して売るところまで現われた。“マガジン”を読みつつ輸入盤を愛好してるタイプの音楽ファンの間におけるトッドの根強い人気を改めて強く思い知らされたものだ。

で、そんな流れを受けて、翌88年、ビクターを通して日本盤CDでの再発も始まり。勢いに乗って、日本で独自にトッドのコンピレーションを作ろうという話が持ち上がった。光栄なことに選曲してもらえないかという話を持ちかけられたのだけれど。あんまり選者の自意識が強いベスト盤とかは嫌いなので、だったらトッドのシングル曲を発表順に全部並べたらいいんじゃないか、と提案させてもらった。

そんなふうにして完成したのが『シングルズ』というCD2枚組だ。74年にリリースされた「ウルフマン・ジャック」の、本物のウルフマン入りのシングル・ヴァージョンほか、このコンピでしか聞けない音源も一部収めることはできたのだけれど、すべてのシングル独自ヴァージョンの音源使用許諾まではきちんとたどり着けなかったようで、実質的には“トッドがシングルとしてリリースした楽曲のアルバム・ヴァージョン集”みたいな、中途半端な仕上がりになってしまっていたのも事実。選曲コンセプトを提案させてもらったぼくとしてもとても残念に思ったものだ。

が、あれから30年以上。そんな残念な思いを吹き飛ばしてくれる素晴らしいトッドのシングル音源コンピが出た。今年4月のレコード・ストア・デイに合わせて米ライノが限定リリースしたアナログ盤LP4枚組『コンプリート・ベアズヴィル&ワーナー・ブラザーズ・シングルズ』。まあ、トッド自身は特にシングル・リリースに思い入れはなかったようで、極端に珍しいシングル・ヴァージョンが存在するわけではないのだが、ミックス違いはもちろん、エディット違いなども含めて、今回ようやくすべてのシングル・ヴァージョンが勢揃いすることとあいなった。85年以降、ワーナーに移籍してからの音源も入っている。うれしい。

海外ではレコード・ストア・デイ用のアナログしか出ていないのだけれど、このほど日本独自にそのCD化が実現。CD2枚組で市販された。全43トラック中15トラックが、まあ、細かい話ではあるが、ミックス違い、エディット違い、ピッチ違いなどのあるシングル・ヴァージョンだ。それら貴重なヴァージョンも含めて、とにかくシングルAB面に収められて世に出た曲だけを発表順に並べたシンプルな構成。が、シンプルなぶん逆に、年代を経るごとにトッドがどう成長し、珠玉のメロディメイカーぶりに磨きをかけていったか、その過程をクールにたどり直すことができる。

ヴァージョンがどう違うだの何だの、あまりマニアックなことを言わず、トッドのベスト盤としてシンプルに楽しむのも悪くない。幅広い音楽的局面を持つトッドゆえ、切り口しだいで多彩なコンピレーションが編める。そんな中から、ここでは主に優れたポップ・ミュージック・クリエイターとしての彼にスポットが当てられているわけだ。当然、「トゥー・ファー・ゴーン」だとか「ジャスト・ワン・ヴィクトリー」だとか、そのテのシングル未カット曲の代表作は入っていないのだけれど、そんなこと言い出したらキリがない。コンプリート・アルバム・ボックスも出ているから、それと本コンピを合わせてカタログ全制覇を目指すしかないか。

間もなく来日。そっちも楽しみです。

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