Disc Review

Lollipops & Teardrops: 34 Pop Diamonds from the 1960s / Various Artists (Teensville)

ロリポップス&ティアドロップス:34ポップ・ダイアモンズ・フロム・1960s/ヴァリアス・アーティスツ

シックスティーズ・ポップのコンピレーションを編む選曲センスに関して、現在右に出る者なしという感じの豪ティーンズヴィル・レコード。

本ブログでも、たとえばボビー・ヴィーに影響を受けた楽曲を集めた『燃ゆる瞳に魅せられて〜ボビー・ヴィーを目指した男たち(The Night Has A Thousand Soundalikes: 60s Teen Pop Influenced By Bobby Vee)』とか、レアなサンシャイン・ポップ集『お楽しみはこれから〜あなたの知らないソフト・ロック名曲選第三集(Let The Good Times In: Sunshine, Soft & Studio Pop 1966-1972)』とか、これまたレアなガール・グループもののコンピ『グッバイ・ボーイズ〜60’sガールズ・ポップ蔵出し名曲選第二集(Goodbye, Boys, Goodbye! Girl Pop Gems: Obscure & Unreleased (1963-1967))』とか、その続編『蒼い口紅〜60'sガールズ・ポップ蔵出し名曲選第三集(Blue Lipstick: 34 Glorious Girl Pop Gems From the Mid-Sixties)』とか、以前はちょくちょく紹介していました。

その後もティーンズヴィルはごきげんなコンピを次々リリースし続けて。ぼくたちオールディーズ・ファンをわくわくさせてくれているのだけれど。ふと気を抜くとすぐにソールド・アウトになってしまって。もちろんストリーミングとかもないし…。

以前はMSIが独自に日本流通盤を確保して日本語解説付きでティーンズヴィルの諸作をリリースしてくれていたので、輸入盤を買いそびれても入手がわりと容易でありがたかったのだけれど。超残念なことに2022年10月、MSIは30年の歴史に幕を下ろしてしまって。それ以降は輸入盤をこまめにチェックするしかなく。気がついたら入手困難になっていることも多く。いくつもの力作コンピを紹介しそびれたままになってきたのですが。

久々に1作、ご紹介します。これも今年の1月くらいに出て、ちょっとぼんやりしているうちにいったんソールドアウトになって。あちゃーっ! と思っていたら、なんとこのほど再プレスが実現したらしく。ようやくぼくもゲットできました。まあ、また気を抜くと入手困難になるのかもしれないけれど。とりあえず今なら買えそうなのであわあわと紹介させていただきます。

アルバム・タイトルからもわかる通り、1963年から1966年にかけてレコーディングされたティーンエイジ・アイドルもの34曲のコンピレーション。といっても、さすがティーンズヴィル。ほぼ全曲が初CD化、みたいな。でも、もちろんどれもいい曲ばっかりで。やばいです。

収録されているアーティストで、名前を見て普通に通じそうなのは、ジョー・サウス、レターメン、ボビー・ヴィー、B.J.トーマスくらいだけど。でも、ジョー・サウスのものは後にザ・タムズやビリー・ハーナーらがカヴァーすることになる自作曲の自演ヴァージョンだったり、レターメンのやつはチャートインは逃したもののジミー・ハスケル編曲/レッキング・クルー演奏のポップなロックンロール・チューンだったり、ボビー・ヴィーのは作者不詳の未発表曲だったり、B.J.トーマスのは後にセプター・レコードでのセカンド・アルバムの収録曲「マイ・ホーム・タウン」へと改作される曲の原型というか、ペースメイカー・レコードからちょこっとだけ地味に出た初期シングル・ヴァージョンだったり。もう油断できないものばかり。

ロサンゼルスの人気DJ/司会者だったサム・リドルがマイク・カーブのプロデュースの下でディッキー・リーからの提供曲を歌ったアルバム・タイトル・チューンに始まり、ウィリー・ネルソン作の「時のたつのは早いもの(Funny How Time Slips Away)」のカヴァーを一発ヒットさせたことがあるジミー・エレッジとか、ポール&ポーラの「ヘイ・ポーラ」を世に送り出したプロデューサーであるビル・スミスが手がけたボビー・スケルとか、アーチーズの“本当の声”としておなじみのロン・ダンテがロニー・ダンテ名義でリリースしたソロ・シングル曲とか…。

冒頭のほんの数曲を眺めただけで、なんだかとんでもなくマニアックなティーンエイジ・ポップスの隠れ名曲が並んでいて。しびれる。アニタ・ブライアントの名B面曲「涙にくれて(It's Better to Cry Today Than to Cry Tomorrow)」のベニー・トーマスによるカヴァー(これもB面だったみたい)とか、ごきげん。幸せだ。24ページのフルカラー・ブックレットが付いていて、全曲それぞれ詳細な解説が添えられている。幸せになれるうえ、勉強にもなります。

ストリーミングがないので、サウンドクラウドに載っていた収録曲のサワリをメドレーにしたファイルへのリンク、貼っておきますね。

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