Disc Review

Stormy Monday: The Blues Years 1985-2008 / Chris Farlowe (Strawberry/Cherry Red)

ストーミー・マンデー:ザ・ブルース・イヤーズ1985〜2008/クリス・ファーロウ

以前、本ブログでもちらっとお知らせした“オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐」”。東京・池袋の映画館、新文芸坐で、オノ セイゲンさんがマスタリングした超絶高音質で音楽映画を楽しむことができる企画シリーズですが。

その一環として、明日5月25日と、28日と。2回にわたってエリック・クラプトン、『エリック・クラプトン アクロス24ナイツ』が2回ほど上映されるのですが。そのうち5月25日(土)14時20分の回の上映後、セイゲンさんとぼくとでトークショーやります。新文芸坐のサイトに詳細載っていますので、ご興味ある方、ぜひいらしてください。

『アクロス24ナイツ』は1990年と1991年、クラプトンが英ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行なった合計24回のコンサートの中から選び抜いたパフォーマンスを集大成した1本で。

クラプトン(ギター)、グレッグ・フィリンゲインズ(キーボード)、ネイザン・イースト(ベース)、スティーヴ・フェローニ(ドラムス)という4ピース・バンド編成でのセットをはじめ、そこにフィル・パーマー(ギター)、レイ・クーパー(パーカッション)、ケイティ・キッスーン(コーラス)、テッサ・ナイルズ(コーラス)、そして90年はアラン・クラーク(キーボード)、91年はチャック・リーヴェル(キーボード)が加わった9ピース・バンド編成によるセット、ロバート・クレイ、バディ・ガイ、アルバート・コリンズらブルース界の偉人たちを迎えたブルース・セット、さらに9ピース・バンドにマイケル・ケイメン指揮のナショナル・フィルハーモニック管弦楽団が加わったオーケストラ・セット…という4形態のコンサートの様子が楽しめる。

これをセイゲンさんのリマスタリングによる極上音響で堪能できるのだから、トークショーがあるほうの25日でなくてもいいですから、ぜひ体験してみてください。

以前、この映画と連動するボックスセット『ザ・ディフィニティヴ・24ナイツ』を紹介したとき本ブログに書いた文章を引用しておきますね。

この時期のクラプトンというと、いかにも当時のフェンダー・ストラトキャスターっぽいレース・センサー・ピックアップやミッドブースト機能を駆使しながらの派手なプレイが印象的で。往年のレイドバック系の渋いレンジ感を愛好する古くからのファンにはあまりウケが良くなかった覚えがある。でも、そんなことも含めてすべてがもはや愛おしく懐かしい。映像を見ているとクラプトンが随所で喫煙してたり、ギターのヘッドにタバコを差したり。まだそういう時代だったなぁ…。

ロック編の「アイ・ショット・ザ・シェリフ」と「天国への扉(Knockin' on Heaven's Door)」にはフィル・コリンズが客演。後者ではハイハットを携えてステージ前方へ。コーラスにも参加する。フィリンゲインズもショルキー抱えて参戦。基本的にはエレクトリック楽器による演奏だけれど、このラフでゆるめのアプローチ、数年後に特大ヒットを記録することになる『アンプラグド』の前哨戦という感じもなくはない。大御所たちがギター抱えて勢揃いするブルース編などは1999年にスタートするザ・クロスローズ・ギター・フェスティヴァルの先駆け的な試みだったとも言えそうだし。

1991年のレジデンシー公演直後、愛息コナーくんが悲劇の転落事故で他界。悲しみを乗り越えたクラプトンは1992年、「ティアーズ・イン・ヘヴン」とアルバム『アンプラグド』を大ヒットさせ、新たなディケイドへと踏み入ることになるわけだけれど。そこへと至る前、コンテンポラリーなギター・サウンドをひっさげてイケイケで爆走していた時期を総括すると同時に、その後の新たな動きを予見させる橋渡し的なボックスとして味わいましょう。

明日はまさにそんな時期のクラプトンを大きなスクリーンで、しかも高音質で、堪能しましょう。

と、思いきり長い前置きをしたところで、クラプトンと並ぶ1960年代英国ブルース〜R&Bシーンの立役者、クリス・ファーロウのニュー・リリースをご紹介します。もともとはリトル・ジョー・クック名義でTボーン・ウォーカーの「ストーミー・マンデー・ブルース」を歌って話題になるなど、ブルース・シンガーとして活動開始したファーロウさんながら、1966年にミック・ジャガー&キース・リチャーズ作/プロデュースによる「アウト・オヴ・タイム」を全英ポップ・チャート1位に送り込んだりしたことでちょっとそっち方面に寄り道していた時期があって。で、その後、また渋いブルース〜R&B路線へと復帰することになったわけですが。その時期、セカンド・チャンス期以降の音源を集めた3枚組ボックス。

タイトル通り、1985年から2008年までの音源で構成されていて。まずディスク1にはマイク・ヴァーノンのプロデュースの下、ザ・サンダーバーズを率いて1985年にリリースされた『アウト・オヴ・ザ・ブルー』全10曲と、1986年の『ボーン・アゲイン』全11曲中9曲、そして2004年のアンソロジー『ロックンロール・ソルジャー』に収められて世に出た未発表音源、ピーター・グリーン作「マン・オヴ・ザ・ワールド」のクリス・ファーロウ・ヴァージョンが詰め込まれている。

ディスク2はファーロウのソロ・アルバム群、『ウェイティング・イン・ザ・ウィングス』(1992年)、『ザ・ヴォイス』(1998年)、『グローリー・バウンド』(2000年)、『ファーロウ・ザット!』(2003年)、『ホテル・アインガング』(2008年)からのセレクションだ。曲によってマンフレッド・マンのポール・ジョーンズとか、コロシアム〜ハンブル・パイのクレム・クレムソンも客演。エルキー・ブルックスとのデュエットでカヴァーしたスタックスR&B「プライヴェイト・ナンバー」とか、ヴァン・モリソンを迎えた「シッティング・オン・ザ・トップ・オヴ・ザ・ワールド」あたりもごきげんです。

で、ディスク3はライヴ集。ノーマン・ビーカー率いるバンドを従えて2000年と2004年に収録された『ハンガリー・フォー・ザ・ブルース』からの音源を中心に、1991年、“クリス・ファーロウ、ロイ・ヘリントン・フィーチャリング・ザ・リズム・ン・ブルース・トレイン”名義で出た『ライヴ・イン・ベルリン』と、“クリス・ファーロウ&ザ・サンダーバーズ”名義による1986年のEP『ライヴ・イン・ハンブルク』からの音源を加えた選曲になっている。「アウト・オヴ・タイム」とか「ハンドバッグズ・アンド・グラッドラグズ」とか、必殺の「ストーミー・マンデー・ブルース」とかはこちらのライヴ・ヴァージョンで。

いい声だよね、この人。ほんと。

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