Disc Review

A Dos / Lau Noah (self released)

ア・ドス/ラウ・ノア

この人、ノージくんに教えてもらったのだけれど。スペイン東部カタルーニャ州出身のシンガー・ソングライター/ギタリスト、ラウ・ノア。彼女の初フル・アルバムです。

ぼくはこの人のことまったく知らなくて。今回新作が出るのを機会に遅ればせながらいろいろ調べてみましたー。生まれは1994年、バルセロナからちょっと離れたスペインの小さな町、レウスというところで。子供のころはピアノを弾きながら音楽に親しんでいたらしい。

19歳のときに米ニューヨークへ。その数年後、カナダのモントリオールを訪れた際、友人たちとコンサートに行こうと思ったものの、チケットがソールドアウトで彼女だけチケットを買うことができなかった、と。それで友人たちがコンサートに行っている間、友人のアパートにひとり残されたラウさん、やることがなかったのでアパートに転がされていたギターをいじりながら初めての自作曲「Pequitas」を書いちゃったのだとか。すごい。

それが2016年のことで。以降、めきめき才能を伸ばして、2019年にはカタルーニャのアーティストとしては初めてNPRのタイニー・デスク・コンサートに出演。その様子も先日あわてて見たのだけれど、ナイロン弦ギターを柔らかなタッチで弾きこなしながら詩情豊かな世界観を淡々と歌い綴る姿に、不思議なオーラが漂っていて…。まあ、スペイン語で歌われているので画面に出る英訳詞を眺めながらの鑑賞ではありましたが。その独特の存在感にじわじわやられた。

その後もニューヨークのブルーノートでジェイコブ・コリアーとデュオ・ライヴを披露したり。徐々に注目度を高めて2021年、いよいよソロ・デビュー・アルバム『3』をリリースした…のだとか。まあ、ぼくは完全にスルーしちゃってたわけですが(笑)。で、今回、続く新作『ア・ドス』が届けられた。『3』は8曲入りでミニ・アルバム扱いらしく、今回がファースト・フル・レングス・アルバムということになる。

スペイン語の“a dos”は英語にすると“for two”あるいは“among two”、“between two”みたいな意味。ふたつの楽器でひとつの音列をユニゾるパートのことを譜面で“a2”と表記したりするけど。イタリア語だと“ア・ドゥエ”。“ア・ドス”はそのスペイン語読みらしい。そんなアルバム・タイトル通り、今回は多彩なジャンルのトップ・ミュージシャンたちをゲストに迎え、曲ごとに豊かな共演を聞かせるデュエット・アルバムになっている。

参加しているのは、グァテマラ出身のシンガー・ソングライターであるギャビー・モレノをはじめ、われらがクリス・シーリー、同郷カタルーニャのシンガーであるシルヴィア・ペレス・クルス、前出ジェイコブ・コリアー、スペインのフラメンコ・シーンからアンヘレス・トレダーノ、イスラエルのジャズ・ピアニストであるシャイ・マエストロ、現在はスペインを本拠にしているウルグアイ人シンガーのホルヘ・ドレクスレル、ポルトガル出身の歌手サルヴァドール・ソブラル、そして先日の素晴らしい来日公演も忘れられないジャズ・ヴォーカリストのセシル・マクロリン・サルヴァント。

ゲストの顔ぶれを見ても、これ、間違いなくノージくんの守備範囲というか、ノンサッチ自警団の案件って感じ(笑)。さらにラストの1曲だけ、コンサートのオーディエンスによるイノセントなコーラスとの共演という形になっているのも憎い。

ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドン、マドリード、バルセロナなど各地でレコーディング。簡素なホーム・スタジオや、普通のおうちのリヴィング・ルーム、バーの店内など、いろいろなシチュエーションを転々としながら2年近い歳月をかけてセッションが行なわれた。その間、ラウさんはニューヨークでギターを教えたり、ベビーシッターをしたり…。

どの曲でも奏でられているのは、ナイロン弦ギター、フラット・マンドリン、ピアノ、ストリングス、そして声。とことんアナログな、アコースティックな音たちが、やさしく、穏やかに、しかし一定の緊張感を保ちながら美しく絡み合い、スペイン語や英語がイマジネイティヴに入り交じり、繊細に織りなされていく深く豊かな世界です。

いいアーティストのいい作品、教えてもらえました。去年の秋にはベン・フォールズのUK〜ヨーロッパ・ツアーのオープニング・アクトもつとめたというラウル・ノア。まじ、異文化交流のキー・パーソンとなりそうな個性です。後追いでようやく知ったぼくが今さら言うことじゃないのかもしれないけれど(笑)、彼女の動向、見逃せません。

今のところフィジカル売ってるところ見つけられていないので、たぶんダウンロードあるいはストリーミングのみのデジタル・リリースなのかなと思いますが。これ、絶対アナログLPで聞きたい音楽だなぁ…。フィジカル、待ってます。

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