Disc Review

So Swell / Jon Cleary (Single Lock Records)

ソー・スウェル/ジョン・クリアリー

このデジタル時代にあえてアナログ・レコードの良さをマニアックに追求し続けるニューヴェル・レコードが2020年に企画した“ザ・ニューオーリンズ・コレクション”ってシリーズがあって。

アーマ・トーマス、リトル・フレディ・キング、エリス・マルサリス・ジュニア、そしてジョン・クリアリーという4アーティストが、ルイジアナ州ニューオーリンズの教会を改築したエスプラネード・スタジオで録音した各々の音源をアルバムひとつずつにまとめ、ヴァイナル限定でリリースしたもの。それぞれバラ売りもあったし、4枚をまとめたボックスセットもあったのだけれど。

そのうちの1枚、ジョン・クリアリーのアルバム『ソー・スウェル』がこのほど、ジャケットを変更してシングル・ロック・レコードからCD化されることになった。ショップによって5月アタマの発売と書いてあったり、6月発売と書いてあったりするけれど。それに先駆けてストリーミングなどデジタル・リリースが4月25日にスタートしたので、ご紹介しておきますね。

英国生まれながら、もはやニューオーリンズR&B/ファンクの正統的継承者としてシーンを支えるごきげんなピアニスト&シンガー、ジョン・クリアリー。この『ソー・スウェル』はそんな彼が多くの先達に対する敬愛をストレートに表明した感動的な1枚だった。

収録曲は、まずアルバート・アモンズの名演で知られるグルーヴィーなピアノ・インスト「スワニー・リヴァー・ブギー」でスタート。自作の「トゥー・ロングズ」を挟んで、スティーヴィー・ワンダーがまだ“リトル・スティーヴィー・ワンダー”と名乗っていた超初期にリリースしたデビュー・シングル「アイ・コール・イット・プリティ・ミュージック」、ロイド・プライスの「ジャスト・ビコーズ」、ファッツ・ドミノやアレサ・フランクリンでおなじみのジェイムス・ブッカー作品「ソー・スウェル・ホエン・ユーアー・ウェル」、チャック・カーボの「セカンド・ライン・オン・マンデー」へ。

アナログ盤だとここでA面が終わって、B面はジョニー“ギター”ワトソンの「ウィーアー・ノー・エクセプション」をピアノ・インストで切なくドラマチックにカヴァーしたヴァージョンでリスタート。そこからビッグ・ビル・ブルーンジーやインク・スポッツ、ペギー・リーなどでおなじみ「アイ・ゲット・ザ・ブルース・ホエン・イット・レインズ」、リー・ドーシーの「ロッティー・モー」、オールマン・ブラザーズ・バンドの「ポニー・ボーイ」、ヒューイ“ピアノ”スミスの「トゥバークルーカス・アンド・ザ・サイナス・ブルース」を経て、ラストのスカイライナーズによる必殺のホワイト・ドゥーワップ「シンス・アイ・ドント・ハヴ・ユー」まで。

ニューオーリンズR&Bに限らず、そこそこ幅広いレパートリーを取り上げつつ、しかしそれらを見事にニューオーリンズ・スタイルで聞かせてくれる超ごきげんな1枚です。聞きやすくなってうれしいけれど。でも、ジャケットは元のニューヴェル盤のほうが渋くてよかったかなぁ…。

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