オン&オン~トリビュート・トゥ・エリカ・バドゥ/ホセ・ジェイムス
ビリー・ホリデイへのトリビュート盤だった2015年の『イエスタデイ・アイ・ハッド・ザ・ブルース』、ビル・ウィザースへのトリビュート盤だった2018年の『リーン・オン・ミー』に続くホセ・ジェイムスのトリビュート・シリーズ第3弾。今回トリビュートされているのは邦題からもわかる通り、エリカ・バドゥだ。
ホセさんもパンデミック中はオンラインでずいぶんと多彩なレパートリーのカヴァーを披露していたのだけれど、そのときにエリカ・バドゥの作品も取り上げていた。直接的にはその体験で得た手応えを膨らます形で制作された1枚ということになるのかも。もともとブルーノートからのファーストを初めて聞いたときから、この人エリカ・バドゥ好きなんだろうなという感触もあったし。そういう意味では生まれるべくして生まれたトリビュート盤か。
ジャケットの色味とか構図とか、さらにアルバム冒頭の導入部の感触とかがもろアリス・コルトレーンなもんで。ホセ・ジェイムスがエリカ・バドゥの在り方をどう位置づけているかというのがそこからくっきり伝わってくる。
ウッドストックにある教会を改造したドリームランド・レコーディング・スタジオで、日本人キーボード奏者のBIGYUKIをはじめ、ベン・ウィリアムス(ベース)、ジャリス・ヨークリー(ドラム)、エバン・ドーシー(アルト・サックス)、ダイアナ・シャバール(アルト・サックス、フルート)という顔ぶれで、なんとベーシック・トラックをたった1日で完成させてしまったらしい。ぼくにとっては初体験だったプレイヤーもいるけれど、みんななかなかの腕利きだ。かっこいい。
曲によってはサンプリングされたベースラインが効果的に使われていたり、かと思えばスピリチュアルなサックス・ソロがなんとも懐かしい気分にさせてくれたり。エリカ・バドゥという絶好の、きわめて現代的な素材を手に、ソウル、ロック、ブルース、ヒップホップなどの要素も有機的に絡み合わせつつ、21世紀ならではのジャズ・ヴォーカル・アルバムを完成させた、と。そんな感じかな。
エリカ・バドゥの魅力再訪にも絶好のアイテムです。