ガヴIV/ヤング・ガヴ
今年の3月に『GUV III』ってアルバムを本ブログでも紹介したヤング・ガヴ。トロント出身のポップ・マスター、ベン・クック率いるバンドというか、プロジェクトというか。
その、3月のエントリーでも触れた通り、2020年、世界を巻き込んでのコロナ騒ぎのせいでガヴのアメリカ南西部ツアーが突然中止になってしまい、ベン・クックはバンドのメンバーとともにニューメキシコの砂漠地帯にけっこう長い期間足止めされることになって。でも、だからと言ってぼーっと時を過ごしても仕方ないと、他のメンバーが寝ている間もひとりがんばってアルバム2枚分くらいの新曲を書き上げたのだとか。
ニューメキシコという新たな環境で書かれた新曲たち。それらをロサンゼルスへと持ち帰り、バンドでスタジオ入りしてレコーディング。そうやって生まれたのが前作『GUV III』と、そして3カ月遅れでこのほどリリースされた本作『GUV IV』だった、と。
『GUV III』がとても手応えを感じさせてくれる仕上がりだったので、同じシチュエーションで制作された残り半分、今回の『GUV IV』もたぶんいいに違いないと楽しみにしていたのだけれど。
正直、個人的に期待していた方向性とはちょっと違ってはいたものの、いい感じの仕上がり。今回もベン・クックらしいメランコリックでキュートなメロディ感覚が満載だ。まあ、よりストレートにラズベリーズ、ビッグ・スター、マシュー・スウィート、ティーンエイジ・ファンクラブあたりからの影響を強くたたえたジャングリーなギター・ポップ味を前面に押し立てていた前作と比べると、もうちょい、こう、ザ・バーズあたりのフォーク・ロック感とか、サイケなスペース・ロック感とか、グラム・パーソンズ的なコズミック・カントリー風味とか、1980年代MTV的なシンセ・ポップ感とか、1990年代オルタナ・カントリー味とか、エレクトリック・ポップ感とか、そういった感触が曲ごとに強く打ち出されているかな。
やはり王道パワー・ポップっぽかった2019年の『GUV I』と、いわゆるソフィスティ・ポップ的な色合いというか、ニュー・ウェイヴっぽいシンセ・ポップ感も濃かった『GUV II』が1組になっていたように、今回もパワー・ポップ色全開だった『GUV III』に対して、この『GUV IV』が対となって、ベン・クック/ヤング・ガヴのポップな“幅”のようなものをぼくたち聞き手に伝えてくれる、と。そういうことっすね。
今のところストリーミングおよびダウンロードのデジタル・リリースのみながら、間もなく7月半ばになると前作『GUV III』と組み合わさったアナログ盤が出るみたいです。これ、楽しみ。