Disc Review

Play On / Scott McCarl (Liberation Hall)

プレイ・オン/スコット・マッカール

久々にこの人の名前を目にしたなー。スコット・マッカール。パワー・ポップの祖としておなじみ、ラズベリーズの後期メンバーとして活動していた男として、その筋の熱心なファンにはおなじみに違いない。

ラズベリーズは1972年、エリック・カルメン、ウォーリー・ブライソン、デイヴ・スモーリー、ジム・ボンファンティというラインアップでデビューして「ゴー・オール・ザ・ウェイ」とか「アイ・ウォナ・ビー・ウィズ・ユー」とか痛快でポップなヒットを連発。けど、1973年、サード・アルバムを制作後にスモーリーとボンファンティが脱退して。その穴を埋めるために、マイク・マクブライドとともに途中加入したのがこの人、スコット・マッカールだった。

この新たな顔ぶれでレコーディングされたのが4作目の(そして、結果的にラスト・アルバムとなってしまった)『スターティング・オーヴァー』。新メンバーだったとはいえ、マッカールはこのアルバムにソングライターとしても単独で1曲(「ローズ・カラード・グラシズ」)、カルメンとの共作で3曲(「プレイ・オン」「アイ・キャン・ハードリー・ビリーヴ・ユーアー・マイン」「クライ」)、そしてブライソンとの共作で1曲(「ハンズ・オン・ユー」)と、計5曲を提供したりして。曲によってはリード・ヴォーカルも担当。けっこう大きく貢献していた。

が、ラズベリーズは1975年に解散。マッカールさんはその後、あまり活発に音楽活動をしなくなってしまった。ちょいちょいレコーディングもしてはいたようで、たまにパワー・ポップ系のコンピレーションで名前を見かけたりもしたけれど、そこそこ本格的にレコーディング音源をリリースしてくれたのはラズベリーズ解散から20年以上を経た1997年になってからのことだった。

それがその昔、ぼくもブログで紹介したことがある『プレイ・オン…』というアルバム。曲によってはルビヌーズのメンバーも参加。ラズベリーズ同様クリーヴランドを本拠にするジ・アクションのメンバーだったブレント・ウォーレンやマイケル・パークハイザーもがっつり協力していて。新録10曲に過去音源7曲をボーナス追加した全17曲。なかなか充実した仕上がりだった。

とはいえ、これ、ラズベリーズ以前にマッカールが在籍していたバンド、イエロー・ヘアのドラマーだったトム・ソレルズが1970年代から80年代にかけて運営していた小さなレーベル、タイタン・レコードをむりやり復活させてのリリース。完璧なインディーズ盤だった。なもんで、すでに入手困難。ということで、そのアルバムからセレクトされた9曲を中心に新たなコンピレーションが、さらに20年以上のブランクを経て編まれた。それが今回出た『プレイ・オン』だ。タイトルが1997年版とほぼ同じ(“…”だけ、なしw)なので、ややこしい。

実は1997年版『プレイ・オン…』にはラズベリーズの「ノーバディ・ノウズ」とかビートルズの「イエス・イット・イズ』とかトミー・ダンバー&カイル・ヴィンセント作の「セイム・オール・ハーテイク」とか、他ソングライターの楽曲も入っていて。それらも興味深かい仕上がりだったものの、今回はその辺を全部外したうえで、さらに過去音源や新録音源などが新たに追加されている。

「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」「ウェイト・ア・ミニット・ガール」「イン・ラヴ・ウィズアウト・ア・ガール」「フォーリン・イン・ラヴィン」「ゴー・ダウン・スウィンギン」「ラン・フォー・ザ・サン」の6曲が1997年版『プレイ・オン…』の正規収録曲。1970年に宅録された「アイ・ホープ」、1981年録音の「アイ・シンク・アバウト・ユー」と「ドント・ウォナ・ゴー」の3曲が同作のボーナス・トラックとして既出の音源。

で、アルバム後半に収められている4曲、ルビヌーズをバックにジェリー&ザ・ペースメイカーズをカヴァーした1997年版『プレイ・オン…』セッションからのアウトテイク「ドント・レット・ザ・サン・キャッチ・ユー・クライング」と、1984年録音の「サスピシャス」と、そして去年、2021年にマイケル・パークハイザーの自宅スタジオで録音された「ドゥーイン・イット・ライト」と「ライク・ノーバディ・キャン」が、今回初お目見えした音源だ。

近々、ヴァイナルでのリリースも予定されているとか。楽しみです。

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