ストーム・クイーン/グレイス・カミングス
1年ちょい前、本ブログでファースト・アルバムを紹介した豪メルボルン本拠のシンガー・ソングライター、グレイス・カミングス。ぐっとスケール感を増して、貫禄すら漂わせたセカンド・アルバムが出ました。
オープニングを飾る「ヘヴン」や、アルバム・タイトル・トラック「ストーム・クイーン」のように、この人にしては珍しくいろいろな楽器が広がりをもって鳴り渡る、ちょい重めの曲もある。後半、感動的に盛り上がってゆく「ジス・デイ・イン・メイ」のような曲もある。この人、演劇の世界でも活躍しているそうで、それらの曲では、女優経験も活かされた、かなり“入り込んだ”感じの、まあ、ちょっとおっかなめ(笑)のパフォーマンスが展開されているのだけれど。
とはいえ、基本的なバック・トラックは相変わらず思いきり簡素。ミニマム。
まあ、ターンテーブルで回り続ける『追憶のハイウェイ61』のレコードを眺めながら、たぶんパートナーであろう他者との関係性につらつら思いを巡らせる「ラグラン」とか、フィドル、バンジョー、ドラムなども動員しつつ往年のニール・ヤング的な世界観を構築していて。この人にしては派手めなバッキングを伴った曲に仕上がっているものの、あくまで主役はグレイスさんの歌声で。そのあたりが、本人によるプロデュースの方向性なのだろう。
スモーキーな歌声。圧倒的な表現力。感情をむき出しにした歌詞。シンプルなメロディ。それがすべて。
個人的には、本人が爪弾くギターのアルペジオに乗せて訥々と内省的に歌われる「オールウェイズ・ニュー・デイズ・オールウェイズ」とか「ツー・リトル・バーズ」とかに特にしびれた。激しめの歌声でたたみかけてくる「アップ・イン・フレイムズ」とかも、初期ボブ・ディランに通じる、激しさとクールさが共存するギター・カッティングが印象的だった。歌詞にロバート・フロストの名前も登場して、この人のルーツがほのかに見え隠れするところも興味深かった。さりげなくフィドルが彩りを添える「ヒア・イズ・ザ・ローズ」も淡々と孤独を綴っていて、泣けた。
ラストを締める「フライ・ア・カイト」も、かなりダイナミックに歌い上げられてはいるものの、基本的なバッキングは本人によるものであろうアコースティック・ギターのカッティングのみ。あとはたぶんノコギリを使って奏でていると思しき裏メロが絡む程度。こういうほうがこの人の歌声の威力がさらにヴィヴィッドに伝わる気がする。
地元オーストラリア以外でもそろそろ本格的に注目度を上げてきそうな気も…。