Disc Review

The Willie Nelson Family / Willie Nelson (Legacy Recordings)

家族/ウィリー・ネルソン

だいぶ押し迫ってきて。年末年始のラジオ特番とか、そういう時期になりました。ぼくはまず12月27日(月)、InterFMをはじめJFN各局で放送される『年末特別番組 Music Journey 2021~おんがくをふたたび~』ってやつの進行役をつとめさせてもらいます。

局ごとに放送時間などが微妙に違うみたいなので、詳しくはお聞きの局のWEBサイトなどでご確認いただきたいのですが。基本的には13時30分~15時55分の約2時間半。アンソロジスト・音楽ライターの濱田高志さんと俳優・ミュージシャンの半田健人さんをそれぞれゲストにお迎えするコーナーなども交えつつ、2021年の洋邦音楽シーンをいろいろな角度から振り返ります。お聞きになれる環境にある方は、ぜひチェックしてみてください。

あと、本ブログのインフォメーション欄でも告知中ですが。12月30日(木)はCRT。年末恒例の“レコード大将”(誤字ではありませんw)をロックカフェLOFTから無観客配信でお届けします。MC3人の年間ベストなどもストリーミングのプレイリストを駆使しつつ公開。年明けにフラッシュ金子を迎えてお届けする有観客CRTに関する詳細も発表する予定です。チケットはキャスマーケットにて販売中。こちらも楽しいオンライン忘年会にできればな、と。盛り上がりましょう!


というわけで。本日のアルバム・ピックアップ。海外では11月に出て、ストリーミングもすでに始まっていた盤だけれど。フィジカル国内盤が昨日、12月22日に出ました。御年88歳のウィリー・ネルソン翁が放つ、なんと71作目(!)の新作オリジナル・アルバム。最近にしちゃ珍しく国内盤リリースまでひと月ほど時間がかかったものの。結果オーライ。なんだか、この新作、聖なるクリスマス時期に聞くのがぴったりというか。そんな、沁みる1枚です。

アウトロー・ミーツ・ジーザス、的な? 

そういう、ある種スピリチュアルなアルバム。『家族』なる堂々たる邦題通り、ウィリー翁をはじめ、息子のルーカスとマイカー、娘のポーラとエイミー、間もなく91歳を迎える実姉のボビーに加え、まさに家族同然にウィリーを支え続けてきたミッキー・ラファエルやポール・イングリッシュら古くからの音楽仲間たちが勢揃い。確かな意志に貫かれた強く深い絆を聞かせてくれる。

「天国と地獄(Heaven and Hell)」「主の足もとに(Kneel at the Feet of Jesus)」「我の重荷よ(Laying My Burdens Down)」「ファミリー・バイブル」「イン・ゴッズ・アイズ」「アイ・ソウト・アバウト・ユー、ロード」「トゥー・シック・トゥ・プレイ」の7曲が、かつてウィリーが書き、レコーディングしたことがあるスピリチュアルな曲の再演ヴァージョン。

聖歌「イン・ザ・ガーデン」や、ハンク・ウィリアムスの「アイ・ソー・ザ・ライト」もすでに過去カヴァーしたことがある名曲たち。そして、ルーカスがリード・ヴォーカルをとる「キープ・オン・ザ・サニー・サイド」と「オール・シングス・マスト・パス」、前者はカーター・ファミリー、後者はご存じジョージ・ハリスンのそれぞれカヴァー。で、ラストに収められたクリス・クリストオファソンの「ホワイ・ミー」。これも以前、ウィリーがカヴァーしていた名曲だ。Wikipedia見るとマイカーのリード・ヴォーカルって書いてあるけど、ルーカスにも聞こえるなぁ…。曲ごとのパーソネル・クレジットが付いてないのでよくわからない。それにしても、親子揃って、声、似すぎ。

実はこのアルバムの国内盤のライナーノーツを能地祐子が書いていて。

1曲1曲ごとに誰が書いて、誰に提供されて、それをウィリーがどのアルバムで初演したかなど、その辺が詳しく解説されている。身内が言うのもナンですが、えらい(笑)。細かい情報についてご興味ある方はぜひそちらを参照してください。

そして、それらの初演ヴァージョンと今回のヴァージョンとを比べると、もうそれだけでウィリー・ネルソンという人が、なんだかんだとややこしい米国のカントリー・シーンにあって、どんな位置取りのもと、どんなふうに歩みを続けてきたのか、どんなふうに自身の思いを紡ぎ続けてきたのか、どんなふうに変わったのか、あるいはどんなふうに変わらなかったのか——。そのすべてを、言葉でなく、歌で、音楽で思い知らされてしまうのだった。

ちなみに、ライナー読んで知ったのだけれど、1955年以来の付き合いだった盟友、ドラマーのポール・イングリッシュが昨年、87歳で亡くなったのだとか。彼の最後のプレイも4曲、本作に収められた。残る曲における後任は、息子のビリー・イングリッシュがつとめている。ここにもまた親子の絆が…。

父と息子。父と娘。姉と弟。そして、かけがえのない友だち。深いところで心を通い合わせた者たちどうしがマイクを挟んでハーモニーを奏で、ギターで、ピアノで、そしてハーモニカで、それぞれの思いを重ね合い、受け止め合い、受け継いでいく。家族、ね。なんだか、ほんとに素敵なアルバムです。

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