Disc Review

Atom Heart Mother: Hakone Aphrodite 50th Anniversary Edition / Pink Floyd (Sony Music Labels)

原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)/ピンク・フロイド

今日はフラゲもの。日本独自企画のピンク・フロイド『原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)』! 正式には明日発売です。

個人的趣味の話で恐縮だけれど。あちこちで書いたり発言したりしている通り、ぼくはいわゆるプログレが苦手で。素養がないというか。楽しむコツを理解できていないというか。難波弘之さんにご指南受けたりもしたものの、結局、勘所を会得できないまま。なので、基本的にはプログレと呼ばれる音楽にはできるだけ触れないようにしながらここまで日々を過ごしてきたわけですが。

でも、中には好きなバンドもいて。ひとつがピンク・フロイド。あと、エマーソン・レイク&パーマー。みんながフツーに大好きなツー・トップ。なので、1970年代の洋楽ファンとして、ぼくも好きで当たり前というか。この2組のアルバムはけっこうよく聞いたものだ。あと、個人的理由としていちばん大きいのが、たぶんどちらの初来日公演も見ているから、みたいな。実に単純な…(笑)。イエスとかキング・クリムゾンとかムーディ・ブルースとかも友達からレコード借りて当時それなりによく聞いたけれど、ライヴ見てないもんで思い入れも今いちという、むちゃくちゃ自分勝手な話です。

そんなピンク・フロイドの初来日公演といえば、1971年8月6〜7日、箱根芦ノ湖畔で開催された野外フェス“箱根アフロディーテ”。日本のフォーク勢、歌謡ポップス勢、GS残党勢、ジャズ勢などとともに、海外からバフィ・セント・メリーと1910フルーツガム・カンパニーとピンク・フロイドが参加。当時高校生になりたてだったバカポップ・ファンのぼくは、6日、1910フルーツガム・カンパニーをお目当てに出向いた。

今年の2月、本ブログでも書いた通り、1971年には本当にたくさんの大物海外アーティストが来日してくれた日本のロック元年。アフロディーテに至るまで、1月にジョン・メイオールを見て、2月にブラッド・スウェット&ティアーズを見て、6月にシカゴを見て、7月にグランド・ファンク・レイルロードを見て…。そこから8月のアフロディーテ。てことで、それはそれは期待が高まっていたものだ。

当日は台風直後という悪コンディション。そのせいもあって、ぼくは開演にだいぶ遅れて会場入り。しかもメインの“山ステージ”とサブの“谷ステージ”、ふたつのステージを行き来する間にけっこう大事な出演者を見逃した気がする。お目当ての1910は、まあ、今にして思えば当たり前なのだけれど、ツアー用のバンドで。お前ら誰だよ? って感じだったし。で、いろいろトラブって演奏スタートが遅れたピンク・フロイドに関しては、実はまだ高校生になりたてだった子供だったもんで、帰りの電車の時間の関係もあり、仕方なく途中までしか見られなかったり。なんだか散々な思い出ではありますが。

それでも、途中までとはいえ、とにかくピンク・フロイドを見て。「原子心母」や「ユージン、斧に気をつけろ」「太陽讃歌」など、なんとも深く神秘的で、でも、思わせぶりな展開の果て、ここぞのところでぐっとメロウに、ブルージーに切り込んでくる彼ら独特の世界観をガキなりに堪能して…。

そんな記憶を鮮明に蘇らせてくれる貴重な発掘映像と1970年発表のオリジナル・アルバムを組み合わせた7インチ紙ジャケ仕様豪華2枚組が『原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)』なわけだ。ディスク1がオリジナル『原子心母』のCD。ディスク2がアフロディーテでのライヴ音源にステージでの演奏風景、リハーサル風景、空港での様子など貴重な映像を組み合わせた16分ほどの「原子心母」と、バンド・クルーの奮闘ぶりを追った3分ほどの短編映像「スコット&ワッツ」を収めたブルーレイ。

そこに未発表写真満載のフォト・ブック、アフロディーテのパンフレットや会場案内チラシ、チケットなどの復刻をオマケとして同梱。もう何枚目の『原子心母』なんだろう…って感じではありますが、今回は仕方ない。日本のロック・ファンにとっては必殺のパッケージだ。まあ、オリジナル・アルバムの音のほうはみなさんすでにお持ちかと思うので、今さらではありますが。オリジナル16㎜フィルムから一コマずつデジタル化してリストアしてリマスターした映像のほうは超貴重。50年前の日本って、こういう感じだったなぁ…。

ちなみに、当時の関係者の証言など貴重なコメントを集めたけっこう豪華な冊子『追憶の“箱根アフロディーテ1971”』というのが当初は同梱される予定だったようなのだけれど、そういうものを入れるなという海外からの厳しいお達しがあったとかで、それは商品封入のアドレスからアクセスできるデジタル・ブックレットとしてWebでの公開のみってことになったみたい。

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