Disc Review

Not Your Muse / Celeste (Polydor UK)

ノット・ユア・ミューズ/セレステ

2018年ごろから、その独特の歌声と深い歌心で注目を集めてきた英国のシンガー・ソングライター、セレステ。

一昨年だったか、シングル「ストレンジ」を初めて聞いて、ソッコー、やべぇ…と思ったときの感触が忘れられない。声と歌い回し。まじ、やばかった。もちろんぼくばかりでなく、世界中の誰もがそう思ったようで、翌年にかけて、BBCが選ぶ期待の新人賞“BBCサウンド・オヴ・2020”と、ブリット・アワード2020のライジング・スター賞をダブル受賞。「ア・リトル・ラヴ」「ストップ・ジス・フレイム」「ラヴ・イズ・バック」といった後続シングルもヒットして。

あとはフル・アルバムの登場を待つばかり、みたいな状態だったものの。やはり新型コロナのパンデミックのせいで、リリースが延期され、再延期され…。そうそう。もしパンデミックがなければ去年、フジロックにもやってきていたはずだったのに。

と、そんなセレステ、待望の初フル・アルバム。ようやく出ました。前出4曲にさらなる8曲を加えた全12曲入り。まあ、2019年の暮れに『コンピレーション1.1』という全7曲入りの1枚も出ていて。あれもアルバムっぽいたたずまいではあったけれど、表題通り、それまでのシングルとかEPとかを集めたコンピだったから。オリジナル・アルバムはあくまでも今回の『ノット・ユア・ミューズ』が初だ、と。そういう位置づけらしい。

ほぼ全曲、セレステとプロデュースを手がけたジェイミー・ハートマンの共作。ソウル、ジャズ、ブルース、フォーク、ラテン、ロックなど、様々な音楽性がうねうね、じんわり、魅惑的に交錯する中、この人ならではの、ビリー・ホリデイのような、コリーヌ・ベイリー・レイのような、メイシー・グレイのような、エイミー・ワインハウスのような、なんとも得がたい歌声が凛と存在感を発揮している。時にスピリチュアルに、時にリアルに、時に妖艶に届く歌詞の世界観にも引きつけられる。

「ストップ・ジス・フレイム」とか「ラヴ・イズ・バック」みたいな、キャッチーなグルーヴをともなった若々しい路線も、まあ、いいのだけれど、おぢさんリスナーとしてはですね、それよりかは「ストレンジ」に代表される、静謐なような、妖しいような路線のほうに惹かれるもんで。そういう意味では、オープニングを飾る「アイディアル・ウーマン」とか、去年のジョン・ルイス&パートナーズのクリスマスCM曲にも採用された「ア・リトル・ラヴ」とか、アルバム表題曲とか、ジャジーな感触とラテンっぽいテイストが魅力的に交錯する個人的には最高のお気に入り曲「ビー・ラヴド」とか、ラストを締める「サム・グッバイズ・カム・ウィズ・ハローズ」とか、そのあたりが特にたまらんです。

『コンピレーション1.1』をはじめ、映画のサントラ曲、共演曲、今回未収録の既発シングル曲など9曲のボーナスを追加した“デラックス・エディション”(Amazon / Tower)もあり。2月26日に発売される国内盤(Amazon / Tower)もそのデラックス・エディションです。アナログ(Amazon / Tower)はシングル曲とかを省いた8曲入りみたい。

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