Disc Review

Living in a Burning House / Selwyn Birchwood (Alligator Records)

リヴィング・イン・ア・バーニング・ハウス/セルウィン・バーチウッド

ぼくが初めてセルウィン・バーチウッドにハマったのは、5〜6年くらい前。ラップ・スティールを弾きながらオリジナルのブルース・チューンをファンキーに歌いまくるこの曲のビデオを見たときだ。バンドにバリトン・サックスまで入っているし。ラップ・スティール+バリサク+ベース+ドラムというけっこう珍しいバンド編成。もう、かっこよくて、ぶっとんだ。このビデオでは、靴、はいてるけど、けっこう他の映像を見ると裸足だったりして。それもまた印象的で。

この人が本格的なセンセーションを巻き起こしたのはそれよりちょい前、2013年だったらしい。メンフィスで毎年行われている“インターナショナル・ブルース・チャレンジ”のバンド部門で優勝。さらに、アルバート・キング・ギタリスト・オヴ・ザ・イヤー賞も獲得。それまで自主制作で2枚のCDをリリースしていたようだけれど、この優勝をきっかけにブルースの名門アリゲーター・レコードと契約して、アルバム『ドント・コール・ノー・アンビュランス』でめでたくメジャー・デビューを飾った、と。そういう感じ。

で、その3年後の2017年にアルバム『ピック・ユア・ポイズン』を出して、そこからさらに3年ちょいを経て、待望の新作となる本盤『リヴィング・イン・ア・バーニング・ハウス』が出た。今回もかっこいいです。

バディ・ガイやクリストーン“キングフィッシュ”イングラムらのアルバムも手がけるトム・ハムブリッジのプロデュースの下、6弦とラップ・スティールのダブル・トラックでリフをぶちかましたり、そこにキレッキレ、ばっきばきのバリサクを絡ませたり…。従来の4人編成に、曲によってキーボードも加わって、ぐっとスリリングにグレードアップ。あの手この手でソリッドに、ファットにキメてみせる。痛快!

ごうごうと燃えさかる家の中にいるのに、身体が言うことをきかない、逃げ出すことができない…と歌う表題曲とか、何かの暗示なのか。何にも暗示してないのか。パワフルなグルーヴに乗せて聖書っぽい歌詞を炸裂させる「レヴェレイション」(啓示? 黙示?)って曲もあるし。「サーチング・フォー・マイ・トライブ」って曲では、“やつらはお前を箱に詰め込もうとする/そして、お前はやつらと同じようにスクエアになっていくのさ…”とか。

でも、基本的には意味はないのかな。意味なさそうな曲のほうが思いきりがよくて盛り上がる。いきなり冒頭の「アイド・クライム・マウンテンズ」も、“お前に会うためにどんな山にだって登る/峡谷を飛び越える/何も俺を止められない/俺は心臓発作くらいまじだぜ”とか、威勢良くかましていて、それがかっこいいわけだし。「ユー・キャント・スティール・マイ・シャイン」って曲では、車でも、金でも、ギターでも、ワイフでも、俺から何を盗んでもいいけれど、俺の輝きだけは盗めないぜ…とか(笑)。

「ママ・ノウズ・ベスト」って曲には、ごきげんなビッグ・ファット・ママ、ダイアナ・グリーンリーフがゲスト・シンガーとして参加。“ママの言うことをよく聞きな/あの娘はやばいよ…”とかタフなアドバイスをシャウトして盛り上げている。ゴスペルっぽいシャッフル・グルーヴで、彼女サイコー、彼女は俺のものだぜ…と自慢しまくるばかりの「シーズ・ア・ダイム」もいい。

ソニー・ローズの伝統を受け継ぎつつ、ぐっとラウドに、ハードにブギーするラップ・スティール・ブルースあり、普通の6弦エレクトリック・ギターでちゃきちゃきファンキーにぶちかますブルース・ロックあり、泣きのスロー・ブルースあり、ダーティなスワンプ・ブギーあり。

ソングライターとしての成長も実感。今、35歳か。ここからますますノってきそうな…。

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