Disc Review

Night Network / The Cribs (Sonic Blew)

ナイト・ネットワーク/ザ・クリブズ

毎年のようにフジロックにやってきてくれたりして。日本でも高い人気を誇るクリブズ。双子+弟のジャーマン三兄弟によるごきげんなUKインディー・ロック〜ポスト・パンク〜パワー・ポップ・バンドだ。

エドウィン・コリンズやリック・オケイセックがプロデュースを引き受けてみたり、突如ジョニー・マーが正式メンバーになってみたり、ぼくのような旧世代のロック・ファンにとっても、なんだかんだ気になる存在であり続けてくれている連中ですが。そんな彼らの新作、8作目のスタジオ・アルバムが出た。

スティーヴ・アルビニがプロデュースした前作『24-7 ロック・スター・シット』が2017年夏のリリースだったから、3年ちょいのブランクを置いての1枚。今回は初の単独セルフ・プロデュース作とクレジットされているものの、どうやら仕掛け人はフー・ファイターズのデイヴ・グロールらしい。

というのも、アルバム・リリースが滞ったことからも推測できる通り、いろいろとビジネスまわりのことでもめ事があったようで。実はクリブズ、前作リリース後に、長年マネージメントをまかせていた会社と袂を分かった。初期楽曲の著作権が勝手に他人へ譲渡されたことなどが判明したのがきっかけだった。で、そこからあれこれと法廷闘争がスタート。そのせいで一時期レコーディングもツアーもできなくなってしまったのだとか。

そんな状態が1年半ほど続いたころ、クリブズはたまたま旧知のフー・ファイターズのコンサートをサポート。そこでデイヴ・グロールにバンドの窮状を伝えたところ、グロールはロサンゼルスに持っている自分たちのレコーディング・スタジオ“スタジオ606”を好きなように使っていいよ、と、なんともありがたい提案をしてくれた。いやー、持つべきものは頼れる先輩だ。

クリブズは去年の4月にスタジオ606入り。レコーディング作業に突入した。で、周囲に何ひとつ気を遣うことなく短期集中でのびのび制作してみたところ、なんとも不思議なことに、前作あたりで特に目立った凶暴さやラフさがぐっと影を潜めた、実に周到に編み上げられた傑作パワー・ポップ・アルバムが完成してしまった、と。そういう感じだ。面白い。

思えば2004年のデビュー・アルバムを聞いたとき、アレンジやアンサンブルは思いきりラフなものの、それに乗せて披露されるこの人たちのメロディやコード感に時代を超えた永遠のポップ・センスが感じられて、ぼくも大いに興奮させられものだ。セカンド・アルバムの「マーテル」とかも大好きだったっけ。ただ、そのあたりのエヴァーグリーンなセンスよりもラフで腕白な音像のほうがキャッチーに目立っていた、というか、そちらを意図的に目立たせていた感、なきにしもあらず。

今回はその辺のバランスがずいぶんとよくなった気がする。もちろん、彼らならではのヘヴィでラフな音の手触りはそのまま。でも、そのまとめ上げられ方が、んー、言い方がむずかしいのだけれど、すごくちゃんとしてるというか(笑)、エコー感なども含めてかっちり構築されているというか。精巧に組み上げられた乱暴さ/乱雑さ。フィル・スペクターがプロデュースしたラモーンズのアルバムみたいな?

アルバムのオープニングを飾る「グッドバイ」なんて、いきなりビーチ・ボーイズっぽいふくよかなコーラス・ハーモニーをフィーチャーしたミディアム・スロウ・ナンバーで。歌詞的にも周囲の無理解や自分たちの過去みたいなものへの訣別が、静かに、しかし強い決意とともに綴られていたりして。驚かされた。

以降、次々と繰り出されるアップテンポ曲にも相変わらずヴィンテージ・ポップのノウハウがあれこれ横溢。どの曲もキャッチーでゴージャスで。もちろん、ポップスの黄金律的コード進行やリズム・パターンも満載。まじ、盛り上がる。ビッグ・スター、バッドフィンガー、ラズベリーズ、初期ウィーザーとか、そのあたりが好きな人にはたまらない1枚じゃないだろうか。

デビュー・アルバムが出たのは前述の通り2004年。でも、結成は2001年だ。てことはもう20年選手。十分にキャリアも積んで。そんな状況下、逆境を乗り越えのびのび放った自信作。2007年のアルバム『メンズ・ニーズ、ウィメンズ・ニーズ、ホワットエヴァー』の収録曲「ビー・セイフ」でゲスト・ヴォーカルというか、歌詞のリーディングで共演していたソニック・ユースのリー・ラナルドがここでも1曲、「アイ・ドント・ノウ・フー・アイ・アム」にリモートでコーラス参加しているのもうれしいところだ。

そういえば、「スクリーミング・イン・サバービア」って曲では、“まだ同じキッズなのさ/郊外で大騒ぎしているんだ/変わってしまったものもいくつかあるけれど/でも心の中では/今も声がする/この赤ん坊はけっして黙らないんだ…”とか歌っている。ジャーマン兄弟も、双子のライアンとゲイリーは40歳、弟のロスも36歳を迎えて。でも、まだまだ身も心もいい意味で腕白なままってことっすね。

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