Disc Review

Let’s Talk / Ray Alexander Technique (Now Again Records)

レッツ・トーク/レイ・アレクサンダー・テクニーク

なんかすごい再発。インディペンデント系のハーレム・サウンドというローカル・レーベルから1974年に出ていた1枚で。はっきり言ってB級ソウルというか、B級ポップR&Bというか、B級ファンクというか…(笑)。

でも、そのB級感が、もうむちゃくちゃ魅力的で。まったくセールス的に当時のシーンに爪痕すら残せていないアルバムなのだけれど。なにやらレア・グルーヴ愛好家の間では人気が高いらしく。ときどきいかがわしいブートみたいな盤が中古屋さん周りに出回ったりしていて。

ぼくもそういういかがわしい盤で、いつごろだったかな、たぶん21世紀になったばかりのころだった気がするけれど、出くわしたんだっけ。そんな超レア・アイテムがこのほど、ナウ・アゲイン・レコードから再発されることになった。どうやらアナログLPでの復刻がメインらしく。CDも7月半ばに出るらしいけど、なんだかオマケが付くとか、なんとか。アマゾンとかだとえらく高値がついていたりして。これはこれでちょっといかがわしい(笑)。

なので、ぼくは今のところストリーミングで楽しんでます。アナログLPを買うと非圧縮音源ファイルのダウンロード権も付いているらしい。もちろん、詳細なライナーも。いいなぁ。収録曲の別ミックスとかをたんまり収めたボーナスLPも付いてくるという。ただ、ストリーミングでもそちらのボーナス・トラック集に関しては別途配信中。ありがたい。サブスク万歳! 興味ある方はそちらもチェックしてみてください。

で、肝心のバンドの素性ですが。さっき書いた通り、フィジカルを手に入れていないだけに、これがいまだによくわからない。やっぱりなんとか入手しなくちゃ(笑)。とりあえず、ぼくがかつて入手したいかがわしいアナログLPのジャケットだけを頼りに、そこから読み取れる限られた情報を整理してみると——。

中心的存在はギタリストでありソングライターでもあるレイモンド・アレクサンダー・ジェンキンス。レイ・アレクサンダー・テクニークという妙なバンド名は彼の名前から付けられたものだ。レイ・アレクサンダー(ギター)、ダグラス・ウィルカーソン(ベース)、ロン・マック(ドラム)、ホリー“バズ”ジョーンズ(パーカッション)というのが基本的なバンド・メンバーで。聞くところによると、この顔ぶれでアポロ・シアターのハウス・バンドを務めたりもしていたのだとか。ニューヨークのアップタウンのクラブ・サーキットではそれなりの人気を博していたらしい。

そこに新加入メンバーとしてクリス・バートリー(ヴォーカル)の名前がクレジットされている。この人はこのバンドに加入するちょっと前にヴァン・マッコイのプロデュースの下、シングル数枚とアルバム1枚をリリースしたりしていたシンガー。さらに曲によってセッション・ミュージシャンによるキーボードやホーン・セクションが加わっている。

アルバムの冒頭を飾る表題曲は、ファンキーなワウ・ギターとキャッチーでメロウなメロディが心地よく交わるグルーヴィな1曲。この曲が気に入れば本アルバム全体も気に入るはず。タイトなビートとメロウでポップなメロディ、みたいな。そういう佳曲ぞろい。けっこう汗臭いファンクものも入っていたりするけれど、そういうのもけっしてギトギトに暑苦しくはならない。

レコーディング環境が今イチだったようで、音質がどうにも薄く細いのが残念。1970年代の録音とは思えない。けど、それは仕方ない。そういうものだと思って楽しむしかない。今回の再発にあたって、ボーナスとして未発表曲が2曲追加されていて。どうやらアナログ仕様にこだわったらしく、オリジナルLPのA面に収められていた4曲が終わったところに1曲、次にオリジナルLPのB面4曲が続いて、そのあとにさらにボーナス1曲という形。ストリーミングで聞いていると変な感じになるのだけれど。

ただ、これもまあ、オリジナルLPの流れを知らない人にとっては関係ないというか。どちらのボーナス曲もクリス・バートリーのヴォーカルをフィーチャーした曲なので不自然さはない。そういうものだと思って、ね。

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