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Disc Review

Toolin' Around Woodstock / Arlen Roth (Aquinnah Records)

トゥーリン・アラウンド・ウッドストック/アーレン・ロス

近ごろないくらいに奇跡の短期間更新ですが。

実は今日、元ボーダーラインのジョン・ガーシェンからごきげんなアルバムが送られてきたもんで。いや、ごきげんといっても、かなり渋いというか。地味だけど。でも、ごきげん。ルーツ・ロック系ウルテク・ギタリスト、アーレン・ロスの新作アルバム『トゥーリン・アラウンド・ウッドストック』だ。ほっとくと認識もされずに終わっちゃうかもしれない1枚なもんで。これはぜひ紹介しておきたいな、と。更新しちゃいます。ブログとか、今どうなんすかね…みたいなエントリーを書いた直後のくせして、何か盛り上がったものに出くわすと気分が一気に変わっちゃう私です(笑)。お調子者です。すんません。これを機会にマメな更新ペースに戻れたらいいんだけど。まあ、その辺は成り行きで、ね。

05年の暮れに出た前作『ランドスケイプ』同様、アーレン・ロスとジョン・ガーシェンが共同プロデュース。オリジナルは2曲のみで他はすべてカヴァーだが、ロックンロールあり、R&Bあり、カントリーあり、フォーク・ブルースあり、ポピュラー・スタンダードあり…と、なかなか楽しい選曲になっている。今回の目玉はなんといってもレヴォン・ヘルムの参加だろう。大半の曲でレヴォンがドラムを担当。チャック・ベリーの「スウィート・リトル・シックスティーン」とバック・オーウェンスの「クライン・タイム」ではリード・ヴォーカルもとっている。だいぶ枯れちゃったけれど、独特の粘っこい節回しは健在。今回のグラミーにもノミネートされたソロ・アルバム『ダート・ファーマー』に引き続き、ファンにとっては本当にうれしいプレゼントだ。ウッドストックにあるレヴォンのスタジオでのレコーディングです。

さらに、テレキャスター・ファンにはたまらない、かつニック・ロウ・ファンにもたまらない、ご存じビル・カーチェンも参加して、ギターはもちろん、ヴォーカルも披露していたり。アーレン、レヴォンそれぞれの娘さんがコーラスしていたり。アーレン本人が歌っていたり…。

アーレン・ロスはその昔、ラウンダー・レコードから出ていた『ホット・ピックアップス』と『ギタリスト』ってアルバムが素晴らしくて。ずいぶんと聞きまくったものだ。まあ、この人の場合、ミュージシャンズ・ミュージシャン的な側面が強くて。ギタリストの間で異常に注目を集めていた人。教則本も出していて。ストリング・ベンダーなど装置に頼ることなく、指のテクニックだけでペダル・スティール・ギターのような演奏をしてしまう独自の奏法が当時日本でも大いに話題になった。1本の弦の音をそのまま伸ばしている間に他の2本をいっぺんにチョーキング・ダウンするとか、2本の弦で和音を出したままもう1本をチョーキング・アップするとか、そういうのをものすごいスピードでやってのけるワザで。ジミ・ヘン以上の衝撃というか。ぼくが彼のアルバムを聞きまくっていたのも、半ば練習のためだったりしたのだが。

そんなわけで、ついついテクニック面ばかりに耳が行ってしまいがちなところもあるのだけれど。アーレン・ロスのすごいところは、テクニックだけでなく、ギターを見事に歌わせる“歌心”もきっちり伴っている点。本人の実際のヴォーカルは確かにちょっと弱いものの、問題なし。そのぶんギターが歌うから。今回のアルバムで言えばボブ・ディランの「バラッド・オヴ・ア・シン・マン」とか。インストながら、もう歌ってます。歌詞が聞こえる。親友、故ダニー・ガットンに捧げられた「アンチェインド・メロディ」も泣ける。ここでも凄まじい歌心を発揮。もともとインストの「スリープウォーク」ですら歌詞が聞こえてくるような…(笑)。この「スリープウォーク」は、ご存じの通り、サント&ジョニーというスティール・ギター&ギターのデュオの古いヒット曲だけど。スティール以上にスティールらしいアーレンのギターが素晴らしい。

サニー・テリー&ブラウニー・マギーの「バーント・チャイルド」とか、アコースティック・ギター系の楽曲もぐっと来る。年齢を重ねて、ぐっと抑えた表現にも味わいが出てきた感じ。アーレンとレヴォンの娘さんたちがリード・ヴォーカルをとっているドリス・トロイのヒットR&B「ジャスト・ワン・ルック」のカヴァーでは、ぐっとアーシーなアレンジがほどこされていて、これまた楽しい。さらに2曲ほど、ソニー・ランドレスとの爆裂スライド・ギター・バトルも展開していて。燃えます。

ちなみに、このニュー・アルバム、なんとDVD付きで。この豪華メンバーのレコーディング風景をたっぷり楽しめるのだ。すごい。アーレンとソニーのスライド・バトルの様子も映像で存分に味わえる。ストラトじゃなく、テレキャスターで軽々とボリューム奏法ぶちかますアーレンのお姿とか、かっこいい。ビル・カーチェンも渋い。テレキャスターのブリッジのほんとに端っこのほうをピッキングする例のスタイルが、いやー、男だね。レヴォンのドラム演奏ぶりもたっぷり。炎の演奏指導もあるし(笑)。先日、映画『ザ・シューター』に出演していたレヴォンを見て、おいおい、こんなんなっちゃったの? とぶっとんだものだけれど、いやいや、まだ元気っすね。うれしい。

そろそろ輸入盤屋さんには並んでいるのかも。国内配給盤も今月下旬にMSIから出るみたいです。

で、前回のエントリーから告知部分だけこっちに移動させてもらいますね。以下、移動した分です。

CRTは2月20日、鈴木慶一ナイトです。慶一さんは『ベースメント・テープス』を取り上げた回とか、エルヴィス・プレスリー・ナイトとか、『SMiLE』ナイトとかにゲストとして出てくださったCRT仲間ですが。今回は、ご本人が主役。左の告知欄を参照して、ぜひロフトプロスワンに足をお運びください。楽しみ楽しみ。

あと、CRTのちょっと前に、こういうイベントにも出演します。『<音楽CD検定>ロック&ポップス~萩原健太の模擬試験』ってタイトルだそうです(笑)。検定ブームの昨今、そういうのってどうなのよ…と、いぶかる方も多いと思いますが。洋楽に対する基礎学力を確認したり、それにまつわる話をしたりってのは、案外楽しいっすよね。こちらもこぞって、ひとつ!

それと、これがいちばん近いんですが。明日、2月11日、グラミー賞の生中継ってWOWOWでおなじみだけど。なんとmusicbirdでもやるんすね。もちろん、音だけだけど。その生中継番組の進行も担当します。聞ける環境がある方は、ぜひ。

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