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Disc Review

1981-07-09 East Rutherford, NJ / Bruce Springsteen (Live.Springsteen.Net)

ニュージャージー州イースト・ラザフォード1981年7月9日/ブルース・スプリングスティーン

本ブログ、基本的には平日の更新ってのを自らに課しつつ続けていることもあって。大型連休の間、たっぷりお休みしました。久々の更新。その間、いろいろなことがあったけれど。印象に残ったもののひとつが、ジャニーズ3.3億…ってやつ。さすが、本気出すとすげえな、と。

まあ、額の高低はともあれ、意識の高い表現者たちが自分にできる範囲の寄付なり思いの表明なりを、医療関係はじめ、この非常時の終息を目指して社会を支えてくれている方々へ贈っていて。泣ける。頭が下がる。それに比べてお上はよぉ…とか、大雑把なこと言い出すとまた話がややこしくなるので(笑)、その辺は機会を改めますが。

もちろん日本だけでなく、各国で意識的な動きがたくさん見受けられる。アメリカの表現者たちの動向は特に活発で。たとえば、本日の主役、われらがボス、ブルース・スプリングスティーンもいろいろな機会にいろいろな動きで対応。現地時間4月22日にネット上で行なわれた“JERSEY 4 JERSEY”なるベネフィット・ショーにも奥さんのパティとともに自宅から登場していたっけ。

これはブルースの地元であるニュージャージーで新型コロナウイルスと闘う人々、医療、経済を援助する基金“ニュージャージー・パンデミック・リリーフ・ファンド”をサポートするため、ジョン・ボン・ジョヴィ、ダニー・デヴィート、ウーピー・ゴールドバーグ、チャーリー・プース、トニー・ベネットらジャージー出身の表現者たちが集まって行なったヴァーチャルなライヴ・イベントで。ブルース&パティは「ランド・オヴ・ホープ・アンド・ドリームズ」とトム・ウェイツのカヴァー「ジャージー・ガール」をアコースティック・ギターの弾き語りで披露していた。かっこよかった。

さらに、毎月のように過去の未発表ライヴのアーカイヴ音源を様々なフォーマットでリリースし続けている live.brucespringsteen.net でも強力な動きを展開。このサイトのことは本ブログでもよく取り上げていて、先月も2012年7月のスウェーデン・ライヴ音源をご紹介したばかりだけれど。今回は1981年7月9日、盟友Eストリート・バンドを引き連れニュージャージー州イースト・ラザフォードのブレンダン・バーン・アリーナで行なったコンサートのフル・セット音源を公開。いつものようにmp3、あるいはロスレス、ハイレゾなどのデジタル音源およびCDでネット販売して、その売り上げをすべて前出、ニュージャージー・パンデミック・リリーフ・ファンドに寄付する、と。

地元愛だなぁ。

ぼくはニュージャージーと何の縁もないファー・イースト・マンではありますが。さっそくFLACで購入。ささやかながら現地の医療を支えましたよ。ロスレスだと12ドルちょい。mp3なら10ドル弱かな。それで、「サンダー・ロード」でスタートするファースト・セット14曲、15分に及ぶ「ロザリータ」を含むセカンド・セット10曲、これまた長尺の「ジャングル・ランド」と「デトロイト・メドレー」を含むアンコール4曲をたっぷり追体験できるのだから。安いものだ。

伝説的な“ザ・リヴァー・ツアー”の一環。当時、ブレンダン・バーン・アリーナは新たにオープンしたばかりの大会場で。その後、IZODセンターとか、メドウランズ・アリーナとか、いろいろ名前が変わったところなのだけれど。ブルース・スプリングスティーン&ジ・Eストリート・バンドはそこで6夜連続公演。それらはすべてオフィシャルにライヴ録音されて、7月6日のパフォーマンスが3曲、8日のものが2曲、のちに『Live 1975–85』に収められて世に出た。けど、連続公演最終日にあたる9日の音源からは当夜アンコールで披露された必殺の「ジャージー・ガール」1曲のみ。他はすべて未発表のままだった。

それらがすべて、こうしてオフィシャル・リリースされたのだから。たまらない。既出の「ジャージー・ガール」にしても、『Live 1975–85』でのヴァージョンは他の会場の音との整合性をとったのか、けっこうエコー感強めのミックスになっていたけれど、今回はぐっとデッド/ドライな仕上がりで。これはこれで新鮮だ。聞き逃せない。もちろん、どんなミックスになっていようが、ラスト30秒のクラレンス・クレモンズのサックスの咆哮が放つカタルシスは変わらない。胸が熱くしめつけられる。

ファースト・セットからいきなりマックスまで振り切ったパフォーマンスを展開しているのだけれど。それに煽られたか、「ザ・プロミスト・ランド」が終わったところでバカな客が客席で花火かなんかを飛ばす。それに対し、「そいつの周りのみんな、そいつをここから蹴り出せ。自分をリスペクトしないのは勝手だが、少なくとも自分の周りの人たちのことだけはリスペクトしろ」と毅然と言い放ち、静かにアコースティック・ギターの弾き語りでウディ・ガスリーの「ジス・ランド・イズ・ユア・ランド」を歌い出すところもしびれる。

「ユー・キャン・ルック」「キャディラック・ランチ」「シェリー・ダーリン」「ハングリー・ハート」という『ザ・リヴァー』からの4曲を、お得意のカウントつなぎ、息もつかせぬ連投で聞かせながら始まるセカンド・セットの途中には、当時ブルースとリトル・スティーヴンがプロデュースを手がけていたゲイリー・US・ボンズも登場。「ジョリー・ブロン」と「ジス・リトル・ガール」をホットにぶちかましている。

その後、のちにテンポアップしてシングルB面に収められることになる「ジョニー・バイ・バイ」の初期ヴァージョンが演奏されるのだけれど、これがまたしみる。エルヴィス・プレスリーへの思いを、チャック・ベリーの歌詞などを交えつつ、『闇に吠える街』期のアウトテイク曲「カム・オン(レッツ・ゴー・トゥナイト)」を流用したメロディに乗せて淡々と綴った作品で。このオリジナル・アレンジは泣けます。

本編ラストの「ロザリータ」の前、クラレンス・クレモンズがちらっと「スタッガリー」のヴァースを披露するのも楽しい演出だ。

アンコールのオーラスを飾る「デトロイト・メドレー」は、通常、ミッチ・ライダーの「デヴィル・ウィズ・ザ・ブルー・ドレス」と「グッド・ゴリー・ミス・モリー」と「C.C.ライダー」と「ジェニ・ジェニ」をメドレーにして聞かせるのが基本形なのだけれど、“ザ・リヴァー・ツアー”では何でもあり。この夜は「アイ・ヒア・ア・トレイン」「サック・イット・トゥ・ミー、ベイビー」「スウィート・ソウル・ミュージック」「シェイク」とかも交えての15分弱に及ぶおかわり自由、大盛り無料の満腹パフォーマンスだ。

以前、1978年9月のニュージャージー公演の模様を収めた盤を紹介したときにも書いたことの繰り返しになるのだけれど。ぼくたち大方の日本のファンが代々木体育館でブルース&Eストリート・バンドを初めて生で体験するのはこの4年後で。あのときもすごかったけれど、できうることならこの時期に見たかった気も…。最強すぎる。

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