Disc Review

Easy To Buy, Hard To Sell / Joe Bonamassa & the Sleep Eazys (J&R Adventures)

イージー・トゥ・バイ、ハード・トゥ・セル/ジョー・ボナマッサ&ザ・スリープ・イージーズ

ブルース・ロックを基調に多彩な音楽性へと積極的なアプローチを仕掛けまくるごきげんなギタリスト、ジョー・ボナマッサが結成した新バンド、ザ・スリープ・イージーズ。ボナマッサのメンターでもある今は亡きダニー・ガットンの心意気を継ぐプロジェクトだそうで。痛快で、豪快で、躍動的なインストゥルメンタル・アルバムが完成した。

メンバーはボナマッサ(ギター)の他、1年ほど前、彼がファースト・アルバムのプロデュースを手がけた名手リース・ワイナンズ(キーボード)、アントン・フィグ(ドラム)、マイケル・ローズ(ベース)、リー・ソーンバーグ(トランペット)、ポーリー・セラ(サックス)。現在、ツアーでボナマッサをがっちりサポートしている頼れる面々だ。曲によってジミー・ホール(ハーモニカ)、ジョン・ヨルゲンソン(ギター)もゲスト参加している。

ダニー・ガットン作の「ファン・ハウス」でスタート。ガットンのアルバム『クルージン・デューシズ』に入っていたマイナー・キーのファンキーな同名曲とは別の、スウィンギーなジャンプ・ブルースだ。ボナマッサはまさにガットンばりのアタッキーでトリッキーでグルーヴィーなギター・ソロをぶちかましている。リース・ワイナンズのハモンド・オルガンも最高。

で、そのあと、2曲目はデンジル・ベスト作、マイルス・デイヴィスでもおなじみの「ムーヴ」。ボナマッサは、ハンク・ガーランドが1961年にリリースしたアルバム『ジャズ・ウィンズ・フロム・ア・ニュー・ディレクション』のヴァージョンを下敷きにカヴァーしているようだ。次の「エイス・オヴ・スペード」は凶悪ギタリスト、リンク・レイが1965年にシングルでリリースしたスピーディなロックンロール・インスト。「ハ・ソー(HA-SO)」は“あ、そう?”ってことで、スティール・ギターのスピーディ・ウェストとのコンビでもおなじみ、元祖早引きテレキャス使い、ジミー・ブライアントによるいんちきオリエンタル系ギター・インストだ。やばいとこ、きた(笑)。

そのあと、2曲、サントラ系。「ハワイアン・アイ」はコニー・スティーヴンスがクリケット役で出演していたことでもおなじみ、同名テレビ・ドラマの主題歌だ。続く「女王陛下の007(Bond - On Her Majesty's Secret Service)」は1969年の同名映画の主題歌。もちろん名匠ジョン・バリー作だ。

で、次が「ポーク・サラダ・アニー」。ご存じ、トニー・ジョー・ホワイト作の強力スワンプ・ロックンロールだけれど、ここでは女性コーラスやホーン・セクション、ジミー・ホールのハーモニカなどもフィーチャーしつつ、エルヴィス・プレスリーが1970年代のライヴでカヴァーしていたヴァージョンの雰囲気を継承しているようだ。てことは、つまりエルヴィス・ヴァージョンで凄腕ギターを披露していたジェイムス・バートンへの敬意がこめられている、と。そういうことになる。最後、あっさりフェイドアウトしていってしまうのが残念。かっこいい出来だ。

で、次はキング・カーティスが「メンフィス・ソウル・シチュー」のシングルB面に収めて世に出した「ブルー・ノクターン」。これも渋い選曲だ。サックス・プレイヤーであるキング・カーティスが作って自身の名義でリリースした作品ながら、実際はギタリスト、R.F.テイラーをフィーチャーしたギター・インスト。ボナマッサは、キング・カーティスのバック・バンドでも活躍していたコーネル・デュプリーが1974年のソロ・アルバム『ティージン』でカヴァーしたヴァージョンを下敷きに演奏している。

そして、ラスト。驚いたことに、フランク・シナトラのレパートリーとして知られる超名曲「イット・ワズ・ア・ヴェリー・グッド・イヤー」で締め。こういう曲をカヴァーすることに関しては賛否ありそうだけれど。ダニー・ガットン師匠も意外なバラードをギター・インスト化したりしていたし。他にも、たとえばジェフ・ベックとかもよくこういうことするし。ギタリストってこういう曲を弾いてみたくなるものなのかも。なかなかリリカルな表現を聞かせてくれます。

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