ザ・ローリング・ストーンズ・ロックンロール・サーカス/ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ザ・フー、ジェスロ・タル、タジ・マハール、マリアンヌ・フェイスフルほか
1968年暮れ、ローリング・ストーンズが当時の彼らの最新アルバム『ベガーズ・バンケット』のプロモーションの一環として発案し、ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ザ・フー、ジェスロ・タル、タジ・マハール、マリアンヌ・フェイスフル、オノ・ヨーコらが集って撮影されながら、96年にVHSやレーザーディスクで発売されるまで28年間お蔵入りしていた幻のテレビ特番『ロックンロール・サーカス』。その豪華拡張エディションが限定リリースされた。
なにやら、フーの演奏がすごすぎてストーンズ側がビビって公開を中止したんだとか、アラン・クレインとの契約のごたごたで差し止められたんだとか、ブライアン・ジョーンズの脱退〜謎の急死という事件がもたらした動揺のせいだとか、お蔵入りの理由はさまざま噂されているけれど。フェリーニの映画を彷彿させるサーカスのテント小屋ふうのセットのもとで展開するいかにも60年代末っぽいムードが魅力的な本作の、たぶんこれが最終完全版ということになるのだろうか。
2CD版やら3LP版やらいろいろなフォーマットがあるのだけれど、ブルーレイ+DVD+2CDによる音と映像全部入りヴァージョン『ザ・ローリング・ストーンズ ロックンロール・サーカス〈リミテッド・デラックス・エディション〉』がやっぱり狙い目。というか、音だけの単品版だと後から物足りなくなりそうで…。まあ、足下見られてる感じで悔しくはありますが、今回が初ブルーレイ化だし、実際、映像はぐっと美しく4Kリストアされ、サイズ的にもオリジナルのスタンダードとワイドスクリーン両方で本編を楽しめるわけだし、全部入り狙いしか選択肢がない感じかも。
音のほうも新たに192khz/24bitでリミックス/リマスター。今回は04年の初DVD化の際に蔵出しされたボーナス映像の音だけを抜き出した7トラック(ジョン・レノン、エリック・クラプトン、キース・リチャーズ、ミッチ・ミッチェルが組んだスーパー・グループ、ザ・ダーティ・マックによる「ヤー・ブルース」のテイク2、タジ・マハールの3曲、米国のクラシック・ピアニスト、ジュリアス・カッチェンの生前ラストに近い貴重なソロ演奏2曲など)に加え、ダーティ・マックによるこれまでまったく世に出ていなかった音源2トラックも新たにボーナス追加されている。
ひとつは「レヴォルーション」のリハーサル・テイク。間奏の途中で演奏をやめちゃうのが残念だけれど、ラフながら推進力のあるなかなかのパフォーマンスだ。もうひとつは撮影に向けての肩慣らしとして、えんえんワン・コードでギター・インプロヴィゼーションを繰り広げるスピーディな「ウォームアップ・ジャム」。これに「ヤー・ブルース」のOKテイクと別テイクを加えた計4トラック、このスーパー・グループの演奏が楽しめることになったわけだ。
そういえば、このダーティ・マックの一員として歌っているジョンの姿がその昔、『ミュージック・ライフ』の表紙を飾っていたことがあって。マイク・スタンドに何か紙が貼り付けてあるなとよく見てみたら、“ホワイト・アルバム”のでっかい歌詞カードというかポスターというか、あそこから「ヤー・ブルース」の部分を破り取ったものだったことが判明。ジョンも自分の歌詞、よく覚えていないんだな、と思ったものだ。中学時代の思い出です。懐かしい。
もちろん、そうしたレアものだけでなく、当夜の主役ストーンズによる「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「パラシュート・ウーマン」「ノー・エクスペクテーションズ」「無情の世界」「悪魔を憐れむ歌」「地の塩」という6曲の、当時のスタジオ・ライヴというのはもうそれだけで貴重だし、彼らの司会ぶりとかもかわいいし、ジョンとミックが仲良くじゃれてるとことか見ていて楽しいし。
ブックレットは44ページ。完全生産限定盤。すでに出た米国版に加え、来月には国内盤も出ます。しかし、毎度みんな思うことだろうけど、前に買った96年版と04年版、どうしたらいいんでしょうねぇ…。