Disc Review

Cosmic Partners: The McCabe’s Tapes / Michael Nesmith with Red Rhodes (7a Records)

コズミック・パートナー〜ザ・マッケイブズ・テープス/マイケル・ネスミス

確か1971年、TBSラジオの音楽番組でのことだ。ぼくがまだ高校生だった時代。DJをつとめていたのは尊敬する音楽評論家の大先輩、今は亡き中村とうようさんだったのだけれど。

とうようさんが、「次は誰の曲か言いません。先入観なしに聞いて下さい」というような語りとともにある曲をかけた。軽快な推進力に貫かれた躍動的なカントリー・ロック・ナンバー。曲が終わったところで、とうようさんがようやく曲紹介をしてくれた。マイケル・ネスミスが自らのグループ、ファースト・ナショナル・バンドを率いて当時リリースしたばかりの新曲「ネヴァダ・ファイター」だった。

まだネスミスが元モンキーズのメンバーであることを誰もが知っていた時代。“どうせアイドルあがりの曲だろ…”的な偏見抜きにこのごきげんなカントリー・ロックを聞いて、彼本来の力を思い知れという、とうようさんからの強烈なメッセージだった。

と、そんなふうに、単にモンキーズ人気に便乗しただけの存在ではない、すぐれたソングライターであり、ミュージシャンだったマイケル・ネスミス。彼はまだモンキーズに在籍していた1969年、単身ナッシュヴィルへと出向き、ウェイン・モス、ノーバート・パトナム、デイヴィッド・ブリッグス、ケニー・バットリー、バディ・スパイカー、ロイド・グリーンら、のちにプログレッシヴなカントリー・バンド“エリア・コード615”へと発展するそうそうたる気鋭メンバーを集めてシングル「リッスン・トゥ・ザ・バンド(すてきなミュージック)」を録音したことがある。

この意欲的なナッシュヴィル・セッションを行なった功績によって、ネスミスはボブ・ディランやグラム・パーソンズらと並ぶカントリー・ロックの先駆者のひとりと見なされてもいるわけだが。そんな彼が、1973年8月18日、米カリフォルニア州サンタモニカのギター・ショップ“マッケイブズ”で行なったライヴの未発表音源を収めた1枚が本作『コズミック・パートナーズ〜ザ・マッケイブズ・テープス』。モンキーズ脱退後通算6作目として同年9月にリリース予定だったアルバム『プリティ・マッチ・ユア・スタンダード・ランチ・スタッシュ』のプロモーションのために行なわれたミニ・ツアーの模様だ。

もともとは記録用として、オープン・リール・テープに簡易的に録音された音源だったようだが、マイケル・ネスミスの息子、クリスチャン・ネスミスが丁寧なリマスター作業をほどこし、このほど45年以上の歳月を経てめでたく初お目見えすることとなった。モンキーズの超熱心なマニアが創設し、ミッキー・ドレンツ、デイヴィ・ジョーンズ、ボビー・ハートなどモンキーズ関連のアーティストの様々なレコードを世に出し続けている7aレコードからのリリースだ。ネスミス関連では、1975年のロンドン公演の模様や、2018年の再結成ファースト・ナショナル・バンドのトゥルバドールでのライヴ音源なども7aから出ている。

ネスミスがギターとヴォーカル、コリン・キャメロンがベース、ダニー・レインがドラム、そしてモンキーズ脱退後の最重要パートナー(まさに“コズミック・パートナー”)でもあったオーヴィル“レッド”ローズがペダル・スティールという編成。集まった観客に対してジョークを飛ばし、モンキーズ時代のコンサートで起こった事件を振り返り、演奏を始めたかと思うといきなり途中で止めてまたジョークを言って笑い合い…。

そんなリラックスした雰囲気のもと、間もなく出る予定の新作から「シェリーのブルース(Some of Shelly's Blues)」を披露したり、それ以前のソロ・アルバムからの曲を歌ったり、新作でも取り上げたジミー・ロジャースの、しかし新作収録曲とは別曲をカヴァーしてみたり、レッド・ローズの絶妙なスティール・プレイをフィーチャーしたインスト曲で盛り上がったり。楽しい、楽しい。ギター・ショップでインストア・イヴェントを楽しんでいる気分満点だ。

で、ラストはもうこれしかない、「ジョアンヌ」と「シルヴァー・ムーン」。でも、気持ちよく聞いていると、いきなり曲の途中でグニョッとテープが止められて終わる、みたいな。マジカルなタイムスリップから一気に現実に引き戻されるみたいな荒技が、それはそれで貴重さを強調しているようで、ぐっときました。

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