Disc Review

The Healing Game (Deluxe Edition) / Van Morrison (Exile/Legacy)

2019.03.22

HealingG

ヒーリング・ゲーム(デラックス・エディション)/ヴァン・モリソン

このブログ、最近は基本的に平日更新というか。月〜金のみ、土日・祝日はお休み、みたいな感じでテキトーにやっているわけですが。昨日は祝日だったので更新せず。でも、“321”ということもあり、大滝さんの新作というか、発掘ライヴというか、あれを取り上げないのか…というメッセージをちょこちょこいただいた。ありがとうございます。いろいろ興味深いポイントも多く、確かに書くべきことも少なくない盤だなとは思いますが、通常盤の収録楽曲解説を『レコード・コレクターズ』4月号に寄せているので、基本的にはぜひそちらを読んでいただければ、と。

というわけで、今日はヴァン・モリソンが1997年にリリースした傑作アルバムのエクスパンデッド・エディションをご紹介。ぼくが自分のホームページで好き勝手、気に入ったアルバムを紹介し始めたころに出た1枚だ。あの時期、ヴァン・モリソンのことをけっこう立て続けにホームページで取り上げていた覚えがある。

というのも、あのころモリソンはジョージィ・フェイムやベン・シドランと組んでモーズ・アリソンへのトリビュート盤をリリースしたり、自らのR&Bレビューにも参加していたジェームス・ハンターのソロ・アルバムにゲスト参加したり。いろいろサイド・プロジェクト的な動きを活発に続けていて。そんな中でリリースされたのが本作『ヒーリング・ゲーム』だった。

実のところ、本格的なオリジナル・アルバムとしてはこれがおよそ2年ぶりで。しかも、久々に全曲がモリソンの自作曲。ジョージィ・フェイム、ロニー・ジョンソン、ピー・ウィー・エリス、ブライアン・ケネディ、ハジ・アクバーら常連に加え、フィル・コウルター、パディ・マロニーらケルティック勢も参加。80〜90年代のモリソン作品の粋を集めた顔ぶれが勢揃いしていた。サイド・プロジェクトもいいけど、やっぱりそろそろオリジナル・アルバムをがっつり聞きたいなぁ…と思っていたこともあり、やけにうれしいリリースだった。

冒頭の「ラフ・ゴッド・ゴーズ・ライディング」からいきなりごつい。イエーツが珍しく政治的メッセージに足を踏み入れた1919年作品『再生』に描かれた黙示録のイメージを借りた曲で。初めて聞いた瞬間、あ、この気難しい展開、モリソンっぽいな、と妙にうれしくなったものだ。エデンの園でイヴを誘惑した蛇に自らを重ね合わせつつ信仰と背徳の間を揺れ動く「ウェイティング・ゲーム」にもしびれた。かつてベルファストのストリートでは伝統的に歌やお芝居が披露されていたらしいが、そうした伝統が絶えて久しい今のベルファストの街角に立ち、癒やしを求める表題曲「ヒーリング・ゲーム」も泣けた。

もともとはアメリカのR&Bが大好きで、一所懸命、少しでも本場のソウル・シンガーに近づきたいと情熱をたぎらせていた若き日々を経て、やがて誰のものでもない、アイリッシュの、ヴァン・モリソンだけの“魂の音楽”へとたどりついた彼のとてつもない深さが味わえる傑作だった。 それを豪華3枚組に拡張して再発したのが今回のデラックス・エディションだ。

ディスク1にはオリジナル・アルバム収録の10曲に、同時期に出たCDシングルの収録曲4曲と、ブズーキ奏者のドーナル・ラニーが多彩なアイリッシュ・アーティストたちを迎えて制作したアルバムへの参加音源1曲。ディスク2にはレコーディング・セッションからの別テイクや未発表曲、当時モリソンがプロデュースしたジョン・リー・フッカーのアルバムからの音源、サン・レコードへのトリビュー・アルバムに参加した際の音源など。そして、ディスク3は97年7月、モントルーで収録された未発表ライヴ14トラック。

スタジオ音源群の聞き応えはもちろんばっちりだが、自らの新旧代表曲に加えてレイ・チャールズ、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、トニー・ベネットらの持ち歌のカヴァーも含むライヴ音源の充実度がたまらない。

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