ザ・キング・オヴ・スライド/ジョニー・ウィンター
去年4月のレコード・ストア・デイに1000セット限定のアナログLPとして発掘リリースされたジョニー・ウィンターの未発表ライヴ音源。LP発売から1年弱の期間を経て、めでたくストリーミング/ダウンロード配信されることとあいなった。盤を手に入れそこなっていた方、アナログはちょっと…という方など、みなさん、おまちどおさまでした。
ジョニー・ウィンターが生前、自ら録りためていた未発表ライヴ音源を遺族とともに管理しながら“ライヴ・ブートレッグ・シリーズ”として次々オフィシャル・リリースしているフライデイ・ミュージックが編纂したものだけに、内容は悪くない。68年のデビュー・アルバムに収められていた自作ブルース「ミーン・タウン・ブルース」や「ブラック・キャット・ボーン」というコンサート定番曲に加えて、J.B.レノアの「モジョ・ブギー」、ウィリー・ブラウンの「ミシシッピ・ブルース」、そして絶対に欠かせないマディ・ウォーターズの「ローリン・アンド・タンブリン」という5曲の白熱ライヴ。
個人的な思い出話だが、ぼくの場合、初めてジョニー・ウィンターを体験したのは1971年、高校1年生のときにアルバム『ライヴ(Live Johnny Winter And)』を買った時だった。そこからシングル・カットされ、当時、日本のラジオでもそこそこオンエアされていた「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」が目当てで購入したのだけれど。アルバムを何度も繰り返し楽しむうちに、約12分という長尺の「イッツ・マイ・オウン・フォールト」にやられた。ぶっとんだ。鉄壁のスロウ・ブルース・グルーヴに圧倒された。
というか、まあ、まだブルースの何たるか、その基本すら理解できていないガキではあったけれど。ガキなりに、その凄まじいまでの“熱”にやられたのだった。そして、ジョニー・ウィンターというとてつもない男の持ち味のとりこになった。
なので、やっぱりこの人の場合、ライヴがいい。本作での演奏も、むちゃくちゃ粗いっちゃ粗いし。録音のバランスも、メンバー間の力関係ゆえか、それとも単にセッティングの失敗ゆえか、ギターばかりバカでかくて、ベースとかものすごく小さいし。でも、その感じがやけにかっこいいのだ。ジョニー・ウィンターがギターで大暴れする様子が生々しくて、なんだか痛快だ。
デジタル配信だとアナログLPに添えられていたマーク・ノップラーやエドガー・ウィンターからのコメントも読めないし、真っ赤なレッド・ヴァイナルの感触とかも楽しめないわけだけれど。それは仕方ない。デジタル上等! この人の勢いはデジタルのチープさを粉砕して突き抜ける。ストリーミング配信だろうが、ダウンロード販売だろうが、かまわないから、ジョニー・ウィンターの鉄壁のテキサス・ブルース魂をがんがんに浴びましょう。