Disc Review

Eiichi Ohtaki's Juke Box: Warner Music Edition / Various Artists (Warner Music Japan)

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大瀧詠一のジュークボックス〜ワーナーミュージック編

かつていろいろなところに書かせていただいたことの繰り返しになるけれど。自分にとってのロックンロール・ヒーローは誰だろう、と考えてみたとき、エルヴィス、バディ・ホリー、ブライアン・ウィルソン…様々な名前が脳裏に浮かんでは消えていくものの。いや。でも、違うのだ。ぼくのように、この日本という国で、ロックンロールという外来の文化に魅せられ、ずぶずぶ魅惑の泥沼へと身を沈めていった者にとってのロックンロール・ヒーローってやつはそうしたアーティスト個人個人じゃなく。DJ。ディスクジョッキー。ラジオという、マスなようでいて実はとことん個人的なメディアを駆使して数々の名作ロックンロールを届けてくれた彼らこそが、正真正銘、ぼくにとってのロックンロール・ヒーローなのだ。

60年代末、ぼくが中学生当時、ニッポン放送で大活躍していた亀渕昭信。70年代初頭、高校生だったぼくの耳をFENに釘付けにしたジム・ピューター。そして70年代半ばの大学時代、まともな受信状態を保つのだけでも一苦労だったラジオ関東を舞台にひたすら身勝手な特集を繰り広げ続けてくれた大滝詠一。この3人だ。彼らこそが、ぼくをここまでロックンロールのトリコにした張本人たちだ。

そんな憧れのヒーローのひとり、亀渕昭信さんが今度の日曜日、1月25日、ついにCRTに出演してくださいます! どんなお話が飛び出すか、楽しみで楽しみで。きっとテーマはどんどん脱線しながら行方知れずって感じになるに違いないのだけれど。とりあえずとっかかりは、亀渕さんと不肖ワタクシ萩原が関わった最新のお仕事として、先月、つまり去年の12月にワーナー、ユニバーサル、ソニー3社から同時リリースされた洋楽オールディーズ・コンピ『大瀧詠一のジュークボックス』の話題からスタートしようかと思ってます。

ファンの方ならばご存じの通り、大滝さんのご自宅にはジュークボックスがあって。全部でアナログ7インチ・シングル、いわゆるドーナツ盤60枚(AB面で計120曲)を収めることができる老舗AMI社製。もちろん中身のドーナツ盤は70年代以来、時代とともに入れ替えられながら大滝家を賑わしてきたわけだけれど。その選曲リストの、ある種の最終形を下敷きに編まれたコンピレーション群だ。

その発案者であり、全体の監修を手がけられたのが亀渕さん。去年3月の“お別れの会”の際、会場に展示されていたこのジュークボックスの選曲をご覧になって、「ここには大滝詠一の原点が凝縮されている。大滝さんをより深く知ってもらうために、このジュークボックスを多くの人に聞いてもらいたい」という思いから企画なさったものだとか。そのあたりのお話も詳しく日曜日のCRTでうかがいたいな、と。左のインフォメーション欄を参照のうえ、こぞってのご来場お待ちしてます。詳細、こちらにもあります。

てことで、今回紹介するのはそのコンピの中からワーナー編。実は3枚ともぼくがライナーを書かせてもらっていて、そこにも記したことの繰り返しになるのだけれど。最後にゲイル・ガーネット64年のヒット「太陽に歌って」が収められている。この曲の主人公の女性はほんのひととき、ある人のもとへとふらりと現れ、毎朝歌いかけてくれて、毎晩キスしてくれて、一緒に太陽のもとで歌って、毎日笑って。でも、ある日、ふと自分の旅を続けるために静かに去って行ってしまう。そして残された者はいつまでも彼女の思い出を語り、太陽のもとで歌い続ける…。まるで『風の又三郎』の女の子版ですが。同郷の宮沢賢治が大好きで、短い人生を、深く、真摯に、けれども飄々と生きた大滝さんの姿がそこに二重映しになって。ライナー書きながら、なんだか泣けてきたものです。

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