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Disc Review

Various Reviews: 8/11/1996 / Alice In Chains, A Tribe Called Quest, Jay-Z, Tracy Bonham, Marshall Crenshaw and The Doobie Brothers

Unplugged /Alice In Chains (Columbia)

今年の4月にMTVで収録されたというアンプラグド・アルバム。新曲がひとつ。MTVで放映されたビデオよりも3曲多く収録された完全版だとか。アンプラグドにつきもののカヴァー曲とかがないので、ちょっと残念かな。

で、この盤、好むと好まざるとにかかわらず、絶対にニルヴァーナのアンプラグド盤と比べられるわけじゃないですか。そういう面では、あらかじめかなり分が悪いような気もしないではないけれど。それにしても、けっこう聞かせます。かなりいい。レインの震え声も全開。ジェリーのどこかおセンチなギターも、アコースティックなもんだからいつも以上に目立つ。アリス・イン・チェインズの本質を味わうためのごきげんな副読本となりそうだ。

ただ、やっぱりニルヴァーナのこと持ち出しちゃうんだけどさ。ニルヴァーナのアンプラグド盤が、通常のエレクトリック系スタジオ盤とはまったく別の次元で、それ自体が名盤に昇華していたのとは違って、アリス・イン・チェインズのほうは、そこまで行っていない、あくまでも副読本/参考書的な手触りがあるような気がする。企画もの、ね。

いや、まあ、アンプラグドなんてもともと企画ものでいいんだろうけど。そんな企画ものを超えて名盤にまで昇華したニルヴァーナ盤とかがあったもんだから。この人たち、ちょっと損しちゃったかも。

なんて言いつつも、よく聞いてます。余計な装飾を取り払った、曲そのもの、声そのものの魅力がダイレクトに伝わってくる一枚。しかし、アメリカのミュージシャンは、若い世代でもちゃんとブルースとかフォークをベースにした生ギター・プレイを聞かせるよね。ジェリーもかなりやるもんだ。もちろんカート・コバーンに比べたら見劣りするけど……って、また比べちまったよ。すまん。

Beats, Rhymes And Life / A Tribe Called Quest (Jive)

サンプルの渋い選び抜き方といい、それを構成するうえでの緻密さといい、センスよく配されたローズをはじめとするキーボードの音といい、ドラムマシンのグルーヴといい、見事なまでに成熟したヒップホップを聞かせてくれる久々の新作だ。ずいぶん長いこと待たされたよ。でも、フツーのヒップホップ・アーティストには致命的とも思えるこの長いブランクをものともしないんだから。全米チャート初登場ナンバーワンだとかで。やっぱりすごいね。みんなトライブが次何をするか、固唾を飲み込んで待ってたってわけだ。もちろんぼくも待ってたひとり。

ファットでクールでジャジー。このテーマを見事に全うした仕上がりだ。歌詞についてはまだてんでわかってないので(笑)、でかいことは言えないけど。声高にメッセージを連射するのではなく、より抽象的に内的なソウル・スピリットを表現しているような。なんかそんな手触りです。Qティップがすごい。やっぱり。

ヒップホップもすっかり時代のメインストリームに位置してしまって。けっこうぬくぬくとその位置どりに甘えているアーティストも出てきた。けど、こいつらとかデ・ラとか、ヒップホップ大攻勢の基礎を作った連中がむしろ状況に甘えず、新鮮な活躍を見せてくれているのはうれしいやね。

Reasonable Doubt / Jay-Z (Roc-a-Fela/Priority)

タイミングのがして、書きそびれていた盤なんだけど。遅れ馳せながらの紹介です。 インディ系ヒットを東海岸ローカルで放っていたジェイ・Zですが。「デッド・プレジテンツ」って曲が大当たり。勢いづいてDJプレミア、クラーク・ケント、スキーらをプロデュース陣に迎えて制作されたのが、このアルバムだ。

かなりわかりやすいポップなトラックに乗って、クールなラップを聞かせてくれる。メアリー・J・ブライジを迎えた「キャント・ノック・ザ・ハッスル」と、ノトリアスBIGを迎えた「ブルックリンズ・ファイネスト」が好き。いきなりマシンガンの音を轟かせたり、今のヒップホップ・シーンの状況をポップに凝縮した一枚ってとこでしょうかね。気楽に聞けます。

The Burdens Of Being Upright / Tracy Bonham (Island)

この人のこと、あまり知らないんですが。こないだMTVでビデオクリップ見て、かっこよかったので購入。P・J・ハーヴェイとかヴェルカ・ソルトとか好きな人なら、ぴくっときそうな音です。歌詞にも共通する手触りがある。ちょっと知的なジョーン・ジェット……なんて言ったら、両方のファンからどつかれそうだけど。ぼくのアタマの中ではそんな感じです。

バイオリンを自分で弾いたりしてて。それも面白い。クールな内省とパンキッシュな衝動とが交錯する、まあ、いわばパティ・スミス以降の女性シンガー・ソングライターの新星ってとこかな。地力はある人だと思います。

Miracle Of Science / Marshall Crenshaw (Razor & Tie)

ニューヨークとナッシュヴィルで録音された新作。まだやっててくれたんだね。うれしいね。相変わらず、古今のポップ・イディオムの中からおいしいところをうまいことピックアップしつつ、でも、肝心なところでひょいと引く……みたいな、イキそでイかない独自の屈折ポップ・ワールドを作り上げている。また売れないとは思うけどさ。文句はないです。素敵です。

カントリー曲をぐいぐいドライヴするファンキーなスワンプ・ロックンロール調でぶちかましたりしている数曲がナッシュヴィル録音かな。こちらはバックにミュージシャンを配してのもの。その他はほとんどすべての楽器をマーシャル・クレンショー自らが演奏。こちらがニューヨーク録音だろう。そうだとすると、ぱっと聞いて新鮮なのはナッシュヴィルもの。独自のポップ・センスにほっと安心するのはニューヨークもの。

いい曲多し。変形ジャケットも楽し。しぶとく応援しましょうぜ。

Rockin' Down The Highway: The Wildlife Concert / The Doobie Brothers (Legacy/Sony)

環境保護チャリティの目的で行なわれたドゥービー・ブラザーズのコンサートを収録した2枚組。パット・シモンズ、トム・ジョンストン、マイケル・マクドナルド……と、仲の悪そうな3人がちゃんと顔を揃えてます。どきどき。

メンバーのほうは、あとマイク・ホサックと、キース・ヌードセンが古株。中途加入組からはジョン・マクフィー、コーネリアス・バンプスが参加してる。残りのメンバーはよくわかりません(笑)。

とはいえ、演奏のほうはそうとうがっちりしていて。メンバーチェンジとともにころころ変わってきたドゥービーズ・サウンドを、それほど違和感なくひとつところに凝縮して聞かせている。オリジナル期の曲を中心に、再結成後の代表曲も交えつつ、さらにまっさらな新曲も2曲披露。わりと手ごろな最新ベスト・ヒット曲集と思って楽しむのが正解かな。何ひとつ新しい発見はないけれど、そんなもの期待して買うアルバムじゃないものね。

高校時代、ドゥービーズばっかり聞いてたころを思い出しましたよ。懐メロだね、鉄壁の。

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