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Disc Review

Speak Low / Boz Scaggs (Decca U.S.)

スピーク・ロウ/ボズ・スキャッグス

ボズの17作目。03年の『バット・ビューティフル』に続く“シングス・スタンダード”ものです。9月末にアナログが出て。10月末にCDが出た。

ギル・ゴールドスタインが共同プロデュース/ピアノ、アレックス・アクーニャがドラム、ボブ・シェパードがサックス、スコット・コーリーがベース。彼らを核とするバンドの的確なバッキングを得て、ブロニスロウ・ケイパー、リチャード・ロジャース&ロレンツ・ハート、ジョニー・マーサー、ハロルド・アーレン、デューク・エリントン、ホーギー・カーマイケル、アントニオ・カルロス・ジョビンら偉大なソングライターたちの名曲群をボズが独特のノド声でていねいに、妙なフェイクをかますこともなく、曲そのものを活かすように歌っている。ミュージカル、ジャズ、ボサノヴァ…と、それなりに幅広い選曲も悪くない。

ロッド・スチュワートがやはりスタンダード路線に転向して成功したことと比べられがちだけれど。一般リスナーとの間で最大公約数的な表現を目指したかのようなロッドに対して、ボズは楽曲そのものの世界観へとより深く分け入って、個的な表現を目指している感じ。

ジャズ・シンガーに限らず、近ごろの自称ディーヴァさんたちも含めたシンガーたちがよくやるように、あざといくらいフェイクをかます必要なんてあるのか? と。ボズは静かに、穏やかに、しかし確信を持って主張しているような気がする。いい歌詞といいメロディを淡々と綴りながら、それでいて、その歌唱を現代に呼吸するものにできるかどうか。その深さと難しさ。改めて思い知る。いいアルバムです。ディック・ヘイムズでおなじみの「アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー」がすっげえいいです。

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© 2020 Kenta Hagiwara