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Disc Review

The Who Sell Out: Super Deluxe Edition / The Who (Polydor/UMC)

ザ・フー・セル・アウト〜スーパー・デラックス・エディション/ザ・フー

『ジョンの魂』のアルティメイト・コレクション(Amazon / Tower)もついに出ちゃいましたよ。まだブツが届いていないので、どんな感じかよくわかっていませんが、聞くのに思いきり時間とられること確実。なのに、その前にもうひとつ、どでかいのが来ちゃいました。なので、今朝はこっちから。

『ザ・フー・セル・アウト』のスーパー・デラックス・エディション! こっちもやばい!

ザ・フーに対して、ライヴ・バンドとしての痛快さ、豪快さのようなものを求めるか、あるいは主にピート・タウンゼンドによるねじれまくったポップ・センスが炸裂するレコーディング・バンドとしてのマジカルさ、カラフルさを求めるか。ザ・フーのファンというのは各自、それぞれの配分で両者のバランスをうまいこととりながら楽しんでいるのだろうけれど。

8:2くらいの割合で後者方面に寄りがちなぼくのようなファンにとっては、やはり1967年のサード・アルバム『ザ・フー・セル・アウト』が最高のお気に入り作だったりする。もちろん、リアルタイムで聞いたわけじゃなく。1970年代、発売から5〜6年遅れでアルバムを買って。確か前オリジナル・アルバム『ア・クイック・ワン』と抱き合わせになったLP2枚組だった。“デラックス・セット”とかジャケットにどーんと書かれているやつで(笑)。

1970年代にはそういうのが多かったなぁ。ビーチ・ボーイズも、ベアフット・ジェリーも、オールマン・ブラザーズ・バンドも、ぼくはそういう廉価な2枚組再発盤でそれぞれの初期作品をあれこれ聞いていたものです。懐かしい。

で、そういうお気楽な抱き合わせ2枚組でザ・フーのセカンドとサードに接してみて。最初のうちは、イカれ気味のポップ・センスをよりキャッチーかつストレートなアプローチで編み上げた感じのセカンド『ア・クイック・ワン』のほうを気に入って聞きまくっていたのだけれど。しばらくすると、こっち、思いきりサイケに、時折アヴァンギャルドにザ・フーならではのねじれまくりのポップ感覚を追求したサード『…セル・アウト』のほうがじわじわくるようになって。いつしかフェイヴァリット・アルバムになってしまった、と。

アルバム冒頭からいきなり海賊ラジオ局の代表的存在であるラジオ・ロンドンのジングルが飛び出してきたり、曲間にCMが入ったり…。架空のラジオ番組というフォーマットにのっとったある種のコンセプト・アルバムだ。これはこれであの時代の空気感を反映した、あの時代にしか生まれ得なかった、ひたすらドラッギーな1作ということになるのだろうけれど。

スピーディ・キーン作の「アルメニアの空(Armenia City in the Sky)」も含めていい曲だらけ。「マリー・アンヌ(Mary Anne With the Shaky Hand)」とか「過ぎし二人の恋(Our Love Was)」とか「夜明け(Sunrise)」とか好きだった。ピート・タウンゼンドのポップ・センスが存分に味わえる。もちろん、ジョン・エントウィッスル独特のありえないベース・ラインにも耳を奪われるし、キース・ムーンのやっかましいドラムの暴れん坊ぶりも…。

基本的にはビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の影響下にある1枚とされるわけだけれど。のちの『トミー』への布石とも言われている「ラエル」とかにはビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』あたりの影響も聞き取れる気がして。そういうところもぼくの耳を大いに惹きつけたのでありました。

そんな名盤の実に豪勢な再発ボックスセットが出た。CD5枚+7インチ・シングル2枚+ピート・タウンゼントによる新ライナーノーツや貴重な写真などを満載した80ページのハードカバー・ブックレット+ポスター、パンフ、ステッカー、ニュースレター、ファンクラブ会員証などのレプリカ群…と、あれやこれやを一気に詰め込んだ夢の“スーパー・デラックス・エディション”だ。『マイ・ジェネレイション』『トミー』『四重人格』に続く豪華再発です。

CD5枚のうち、“オリジナル・モノ・アルバム”と題されたディスク1は文字通り、オリジナル・アルバムのモノ盤全収録曲およびモノ版ボーナス・トラック、未発表モノ・ミックスなど。オリジナル・アルバム部分を聞くには、このモノ・ヴァージョンが最高だ。ボーナスはシングル用の別ミックス、別ヴァージョン、別編集もの、別ジングルなど。もともと本物の企業CMを入れようという目論みもあったらしく、いったん録音されながら最終的にはボツになった“コマソン”も聞ける。楽しい。

“オリジナル・ステレオ・アルバム”と題されたディスク2はオリジナル・ステレオ・アルバムにステレオ・ボーナス・トラック。ボートラに関しては今回の再発にあたってリミックスされたヴァージョンも多い。

“スタジオ・セッションズ1967/68”と題されたディスク3はその名の通り、スタジオ・アウトテイク、アルバム・セッションの初期テイクなどを、スタジオでの雑談を交えつつ再構成したもの。中にはリリース・ヴァージョンと同じテイクも含まれているが、今回のボックスのためにリミックスがほどこされている。

ディスク4は“ロード・トゥ『トミー』”。未発表ものも含む1968年録音スタジオ・トラックおよび1968年のシングルAB面のリミックスなどを並べて次作『トミー』へと至る道のりを再検証する1枚だ。この時期のザ・フーは、方向性にいろいろ悩んでいたようで、ものすごく頻繁にスタジオ・レコーディングを繰り返しつつ、多くの音源をお蔵入りさせてきた。そのあたりのボツ音源と、シングルのみで出た音源などをまとめたディスクだ。

で、ディスク5が“ピート・タウンゼント・デモ”。個人的にはこのデモがいちばん興味深かったかも。当時のピート・タウンゼンドの意図がいきいきと聞き取れるようで、とても新鮮に楽しめる。ノッケから「キッズ! ドゥ・ユー・ウォント・キッズ」のデモ! しびれます。

7インチ・シングルは、ひとつが「恋のマジック・アイ(I Can See For Miles)」と「サムワンズ・カミング」がカップリングになっているUKシングル。もうひとつが、「マジック・バス」と「ジキルとハイド(Dr. Jekyll And Mr. Hyde)」がカップリングになったUSシングル・モノ・ミックス。それぞれの復刻だ。ストリーミングではディスク1の後に、2009年のデラックス・エディションでお目見えした「過ぎし二人の恋」のテイク12とか「ラエル」のアーリー・モノ・ミックスと一緒に並べられている。

まだ全音源を存分に聞き込めてはいないし、今日にも届くのであろうジョンの箱のほうにも時間を割かなければいけないのだけれど。いずれにしても、しばらくの間、思いきり楽しめそうな箱ではあります。もっとも豪勢なスーパー・デラックス・エディションの他に、2CDデラックス・エディション、2LP(モノラル)、2LP(ステレオ)、デジタル・ストリーミングなど各フォーマットでリリースされました。

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