Rhythm & Business / Tower Of Power (Epic)
ドクとエミリオとロッコと……えーと、あとオリジナル・メンバー、誰が残ってるんだっけかなぁ。そんな具合にメンバーチェンジの激しいタワー・オヴ・パワー、またまたリード・ヴォーカリストを変えて新作を発表した。今回は黒人さんですわ。
でもね。この人たちの音はとにかく不変。メンバーの違いとか乗り越え、ソリッドなホーン・セクションとうねるぶくぶくベースとを武器に見事なオークランド・ファンクを聞かせてくれる。たとえばアメリカン・フットボールのチームとか、プロ野球のチームとか、世代が変わり、プレイヤーが変わっても、なんとなく伝統的なチーム・カラーだけは変わらない、みたいな。そういう感じなのかな。
まあ、確かに往年の切れ味とか、食いつきの鋭さとか、そういうのに比べると現在のタワー・オヴ・パワーの力はどうしたって落ちているわけだし、全曲、かつての持ち曲のどれかに似ている気がするし(笑)。でも、やっぱりこのソリッドな感触ってこの人たちにしか出せないものなんだなぁ。ジャミロクワイがいくら真似したところでかないっこないのだ。
一代横綱のうれしい現状報告って感じです。ありがたく聞かせていただいてます。やっぱ、かっこいーっ。
One Day It'll All Make Sense / Common (Relativity/Epic)
コモン・センス改めコモン。大傑作『リザレクション』に続く3枚目だ。ずいぶんと成長しました。フージーズのローリンちゃん、デ・ラ・ソウル、エリカ・バドゥ、グッディ・モブ、ザ・ルーツ、Qティップなど、豪華なゲストを迎えつつ、独特のスムーズでイマジネイティヴなラップを聞かせてくれる。前回とりあげたバスタ・ライムズあたりと共通するゲストも多いけれど、結果生み出された世界はまったく別の手触りになっているところが面白い。
ローリン・ヒルをフィーチャーした曲は、中絶してしまった子供への悲しい思いを綴ったもの。「リアル・ニガーズ・クオーツ」とか「ハングリー」とか、ディープな曲も当然ある。何を題材にラップすべきなのか、様々な局面で悩みながらアルバムを作り上げたのかなという感じだ。成長の成果だろうけど。でも、前作を超える存在にまでは至らなかったかな。
ジャズ演奏をバックに、かつてのポエトリー・リーディング・スタイルを彷彿させるパフォーマンスを聞かせる「マイ・シティ」って曲もすごくいいです。
…Somewhere More Familiar / Sister Hazel (Universal)
シングル「オール・フォー・ユー」がヒット中のシスター・ヘイゼルのセカンド・アルバム。よく言われるように、ブルース・トラヴェラーとコレクティヴ・ソウルを足したような持ち味のバンドだけれど、底辺に何とも言えない楽観的なテイストが漂っているのが面白い。もともとシスター・ヘイゼルというバンド名は、70年代から80年代にかけて人種や貧富の差を超えた救済活動を続けた黒人女性、シスター・ヘイゼル・ウィリアムスから付けたそうで、今回のアルバムのブックレットを見ても、彼ら自身ずいぶんと様々なチャリティ団体と関わりを持ちながら活動しているようだ。
良くも悪くも、そうした真摯なライフスタイルが反映した仕上がり。カントリー・ロック、スワンプ/サザン・ロック、ブルース、フォークなどを下敷きに、切れのいい、コンパクトなアメリカン・ロックを聞かせてくれる。遊び心には欠けるけれど、しっかりした足腰の強さが印象的。曲も粒ぞろいです。
El Corazon / Steve Earle (E-Squared/Warner)
去年、アコースティックな『トレイン・ア・カミン』と、ごきげんなロックを聞かせた『アイ・フィール・オールライト』で見事シーンにカムバックしたスティーヴ・アールですが。ちょっと前にピック・オブ・ザ・ウィークでも取り上げたスーパーサッカーズとの共演ミニ・アルバムを経て、またまた充実した新作フル・アルバムが登場した。
ぐっとしみる淡々とした生ギター弾き語りものから、こてこてのカントリーから、テックス・メックス・ロックンロールふうのものから、タフなロックものまで、独特の振り幅は健在。どれも水準以上の仕上がりで、うれしくなってくる。エミルー・ハリス、スーパーサッカーズ、フェアフィールド・フォー、デル・マッコーリー・バンドなどがゲスト参加。
人種問題に言及した曲とか、故タウンズ・ヴァン・ザントに捧げられた曲とか、意欲的な作品もあるが、やっぱりこの人は自分の熱い思いをストレートに歌い込むとき、最高に輝くみたい。そういう表現が随所に聞かれ、ぐっとくるね。
Nimrod / Green Day (Reprise)
すでに話題になりまくり、グリーン・デイの最新作だ。ドガガガガッとした轟音スピーディ・ロケンロールに、なんだかどこかで聞いたことがあるような、特に日本人としては妙に懐かしささえ覚えるメロディを乗せて、ツバ吐き散らしながら突っ走りまくる持ち味そのままに、よりスケールアップをはかったような仕上がりです。
皮肉っぽいまなざしで、乱暴に、しかし、けっこう人生の深遠を射抜いていたりする歌詞も悪くない。
Yellow Pills vol.4 / Various Artists (Big Deal)
パワー・ポップ・ファンにはおなじみのコンピレーション・シリーズ最新作。95年のVOL3で完結したかと思っていたので、ちょっとうれしい。
今回もプリムソウルズ、ジョー・マークス・ブラザー、ジェイソン・フォークナー、アンドリュー・ゴールド、ザ・ナインズ、ザ・ポップ・ファイルズなど、新旧入れ乱れてのポップ三昧。グラス・ルーツの曲をカヴァーしたマテリアル・イシューやジョン・マクマランなど、本シリーズ再登場組もまたいい曲でラインアップされている。『ビートルマニア』ポール・マッカートニー役を演じたというデヴィッド・グラハムの「アイ・ラヴ・ユー・ベター」って曲にハマりました。アンドリュー・ゴールドも“スマイル”期のビーチ・ボーイズ路線で、なかなか聞かせる。