Disc Review

Mind Games (The Ultimate Collection) / John Lennon (Capitol)

マインド・ゲームス(ヌートピア宣言) アルティメイト・コレクション/ジョン・レノン

先月のポール・マッカートニー&ウイングスの『ワン・ハンド・クラッピング』が出て大いに盛り上がったわけですが。今月はこちら。ジョン・レノン。1973年のソロ4作目を拡張した『マインド・ゲームス(ヌートピア宣言)アルティメイト・コレクション』。出ましたー。

いつもながら、いろいろなフォーマットで出ていて。いちばん豪勢なやつが6CD+2ブルーレイ+9LP+ホログラム処理されたピクチャーEP+オノ・ヨーコによる1966年のアート作品『デンジャー・ボックス』とジョンによる1968年のキャンヴァス・アート『ユー・アー・ヒア』の証明書付きレプリカ+インタビューやメモラビリア満載のブックレット+豪華ハードカヴァー・ブック+ポスターや宣伝用ポストカードのレプリカ+繊細にデザインされたリヴァプールと東京の地図+ヌートピア国民セット+コイン+ワードパズル…などをこれでもかと詰め込んだ、全世界1100セット限定、およそ25万円! というとてつもない立方体型ボックス。

これは無理です(笑)。夢のヌートピア国も年貢の取り立て、厳しすぎます。普通に入手するなら6CD+2ブルーレイという8枚組かな。

『ヌートピア宣言』のレコーディング・セッションは1973年夏、ニューヨークのレコード・プラントで行なわれたわけですが。そのセッションを多角的な視点で再評価しようというのが今回のボックスの狙いらしく。息子ショーンくんが、これまで『ジョンの魂(John Lennon/Plastic Ono Band)』や『イマジン』の拡張再発を手がけてきたポール・ヒックス、サム・ギャノン、ロブ・スティーヴンス、サイモン・ヒルトンらエンジニアリング/ミキシング・チームと共同プロデュース。ジョンのソロ作としてはわりと賛否渦巻くこの1枚に新たな角度から光を当てようと奮闘している。

とか書いてますが。すみません。ぼくがゲットした8枚組箱、ブツはまだ手元になく。今日このあと届くのかなー。なもんで、現状ストリーミングで音を聞いただけの段階。でも、連休に入っちゃうと平日更新を基本に続けている本ブログもお休みしちゃうので、取り急ぎ音と資料だけを頼りに6CD+2ブルーレイ版の内訳ご紹介しておくと。

CD1が近年のジョン再発でおなじみ“アルティメイト・ミックス”。オリジナル・ミックスの感触を尊重しつつ、タイトル・チューンとか曲によって定位がちょっと曖昧だったジョンのヴォーカルをきっちりセンターに据え、演奏のほうも太く深く整えた新規ミックスだ。聞き手各々の好みによると思うけれど、とても今の時代の耳に聞きやすく仕上がった反面、個人的にはこの時期のジョンならではのチープで猥雑で混沌とした音像みたいなムードがすっかり失われた感じが微妙に残念だったりも…。いや、でも、とてもいいリミックスだと思います。「ワン・デイ」とか「インテューイション」とか、断然こっちのほうが魅力的。

ひとつ飛ばしてCD3が“エレメンツ・ミックス”。“要素”というだけあって、つまりマルチトラック・テープから特定の楽器の音をピックアップして分離したミニマルな切り口だ。曲ごとにギター2本だけとか、オルガンとギターだけとか、ドラムとベースだけとか…。タイトル・チューンなんかオルガンだけだし、「ユー・アー・ヒア」はスニーキー・ピート・クレイノウのペダル・スティール・ギターだけ。ものすごく興味深く、けど、ものすごくマニアック。どうしろって言うんだ…って感じではありますが。これはこれでアンビエントな感触を楽しめる素材集かも。

ひとつ戻ってCD2はアルティメイトとエレメンツの中間くらいの“エレメンタル・ミックス”。ジョンの歌声を中心に、この時期のジョンが好んでいた猥雑なわさわさ感満点の音像ではなく、ぐっと穏やかかつアコースティカルなミックスに仕立てている。軽いパーカッションのみ残して、ドラムはなし。このあたり、ヨーコさんのストリップト・ダウン・ミックスと意図が近いかも。レノン家の奥さまも息子さんも、パパの歌声だけに意識を集中させて生々しく世に伝えたい…みたいな思いがひときわ強いのかなぁ。

さて、CD4は“エヴォルーション・ドキュメンタリー”。各曲のリハ音源、没テイク、スタジオ・トークなどをつなげて、曲が完成へと至る経過たどるオーディオ・モンタージュ集だ。個人的にはこのディスクがいちばん興味深かった。

CD5が“ロウ・スタジオ・ミックス”。要するにラフ・ミックス集で、余計なエフェクトやオーヴァーダブなし。ちなみに、例の無音4秒の「ヌートピア国際賛歌(Nutopian International Anthem)」もここまで5枚の各ディスクに入っていて、それぞれ別ミックスのクレジットが付いてはいるけど、全部、ただの無音トラックでした(笑)。

で、CD6が“アウトテイク”。といっても未発表曲があるわけではなく別テイク集。「ユー・アー・ヒア」の11分弱に及ぶヴァージョンとか、聞きものだ。先述の通り無音の「ヌートピア国際賛歌」は入っておらず、代わりにジョンとヨーコによる演説「ヌートピア宣言(Declaration of Nutopia)」が入っている。ブルーレイ2枚にはCD6枚の内容をすべて24/192のハイレゾ、5.1chサラウンド、およびドルビー・アトモスで収録。さらにミュージック・ビデオ2本も。

まあ、含まれている楽曲は基本オリジナル・アルバム収録の12曲だけで。それをあの手この手、6つの切り口でえんえん聞かせるという、うれしいようなめんどくさいような構成。レコード・ストア・デイに限定リリースされた『Mind Games EP』に入っていた「アイム・ザ・グレイテスト」のアルティメイト・ミックスは結局こちらの箱には入らなかったみたい。(下の“追伸”をご参照ください)

あ、でも、よくわかりません。実際のブツには隠しオーディオ・トラックや隠しビデオ・トラック、秘密のメッセージやその他のイースター・エッグがセット全体に数多く散りばめられているとの話もあるし。入っているのかも。とにかく、いろいろ楽しみ。早くボックス、届かないかな。これまたブツが手元にないので実際にはまだ見ていないものの、128ページの大型豪華ブックレット付き。貴重なインタビュー、写真などが満載だとか。1973年のアルバム発売時に宣伝用に作られたオリジナルのボスターとかポストカードとかのレプリカや、ナンバリング入りのヌートピア市民IDカードなどオマケもいっぱいみたい。

もちろん他にも2CD、2LPヴァージョンもあり。こちらはアルティメイト・ミックスとアウトテイクの組み合わせだとか。さらに超豪華25万円ボックスに同梱されている288ページのハードカヴァー・ブックの別売りもあるみたいです。これは55ドルくらい? ちょっとほしいかも。

(追伸:2024/07/12 16:48)
Xで野良さんに教えていただきました。隠しトラック、6つあるみたい。さっきブツが届いたので、さっそくチェックしてみようと思ってますが、UVライトを当てないとどこに何が入っているかわからないみたいで(笑)。

いずれにしても、上で書いた「アイム・ザ・グレイテスト」とか、いろいろ入っているみたいです。見つけるぞ! 楽しみ 。

(追伸2:2024/07/13 14:42)
隠しトラック、7つでした。UVライト、まだ持ってないので隠しメッセージとかは読めていませんが、音は聞けました。うれしい。

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