Disc Review

The Last Record Album (Deluxe Edition) / Little Feat (Rhino/Warner)

ラスト・レコード・アルバム(デラックス・エディション)/リトル・フィート

これまでもしょっちゅう本ブログで取り上げてきたリトル・フィート。

彼らのアルバムで何が好きか、というむずかしい設問についても、これまで何度も取り上げてきたのだけれど。日本では特に、このアルバムの人気が高い気がする。1975年にリリースされた5作目『ラスト・レコード・アルバム』。

以前、ピーター・バラカンさんが「なんで日本ではこのアルバムの人気が特に高いのか不思議」と疑問を呈していらっしゃったけれど。なにせこのアルバムが新作としてリリースされたとき、ニューミュージック・マガジン誌で矢吹申彦さんが100満点を付けてわれわれ読者に衝撃をもたらしたもんだから。それが日本独自の高評価につながっているのかも。矢吹さんの熱意に後押しされ、このアルバムでフィート初体験を果たしたなんてファンも多そう。

と、そんな人気作のデラックス・エディション、出ました。フィートのデラックス・エディションはこれまでいろいろ出ていて。

それらに続く1作。ライノ・レコードのWeb限定の5CD版(1976年春のロンドン公演から8曲を追加収録。もうソールドアウトかな?)、2LP版など、複数フォーマットでのリリースだけれど、基本型は4CD版。CD1がオリジナル・アルバムの最新リマスター。CD2がスタジオ・レア音源集。で、CD3と4がブートレッグなどでおなじみだった1975年10月のボストン公演のライヴ音源。初のオフィシャル・リリースです。

やっぱり気になるのは“ホットケイクス、アウトテイクス、レアリティーズ”と題されたCD2で。全12トラック中、4曲が2000年のボックスセット『ホットケイクス&アウトテイクス』で既出のもの。1曲がアルバム未収録のシングル・ヴァージョン。残りが今回初お目見えのでも音源や別ヴァージョン、ラフ・ミックスなど。

中盤の「オール・ザット・ユー・ドリーム」「マーシナリィ・テリトリィ」「ロング・ディスタンス・ラヴ」「ロマンス・ダンス」と、別ヴァージョンが連続するあたり、興奮の極致ですよ。

古くからのファンならば誰もがご存じの通り、“ザ・ラスト・レコード・アルバム”と題されているとはいえ、これ、別にフィートのラスト・アルバムではなく。映画の『ザ・ラスト・ピクチャー・ショー(邦題:ラスト・ショー)』にひっかけたタイトルで。ネオン・パークによるアルバム・ジャケットも映画のパロディみたいになっているわけですが。

でも、本作がフィートにとって大きな分岐点になったのは確かで。ロウエル・ジョージ中心の初期フィートがラストを迎えて、ポール・バレアとビル・ペインのバンド内存在感がぐっと増し始めた瞬間の記録、みたいな? その変化に伴ってウェザー・リポートあたりにも通じるジャズ/フュージョン色も顕著になり、初期の南部/スワンプ色が少し後退した時期。

でも、とにかくロウエル、ビル、ポールの緊迫感みなぎる三頭体制が存分に楽しめる『ラスト・レコード・アルバム』の魅力をぐっと拡張して楽しめるボックスなわけで。これは見逃せません。来月には国内盤も出るみたいで、ついでに去年出た『アメイジング!(Feats Don’t Fail Me Now)』のデラックス・エディションも一緒に国内発売が実現するそうです。うれしいっすね!

既発レア・テイクも含めてすべて2025年最新リマスターがほどこされているようなので、以前のボックス持ってる方も改めてゲットしておいたほうがよいかも。もちろんボストンでのライヴもかっこいい。ロウエルさんも好調だけれど、ビル・ペインがとてつもない。『ラスト・レコード・アルバム』からの曲はもちろん、以前のレパートリーもたっぷり演奏していて。「コールド・コールド・コールド」から「ディキシー・チキン」に雪崩れ込んで、「バッグ・オヴ・レッズ」(「デューク・オヴ・アール」の替え歌)を挟んで「トライプ・フェイス・ブギー」へと連なる20分超メドレーとか、やばやばです。

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