Disc Review

Oh Snap / Cécile McLorin Salvant (Nonesuch Records)

オー・スナップ/セシル・マクロリン・サルヴァント

月曜日、新宿ロフトプラスワンに本秀康くんを迎えて行った「CRT & レココレ present vol.295〜帰ってきた!ジョージまつり」。たくさんのご来場、ありがとうございました。久々にたっぷりジョージの歌声とギターをみんなで浴びて、楽しかったですねー。

来月、10月20日のCRTは改めて本拠地、ロック・カフェ・ロフトへと舞台を戻して開催します。テーマはノンサッチ・レコード! 題して「CRT & レココレ present vol.296〜ノンサッチ捕物帳」

ご存じの通り、ノンサッチというのは安易に商業主義に流されることなく、でも堅苦しくもなく、常に柔軟でユニークな視点から素晴らしい音楽をぼくたちに届けてくれる、まさに今の音楽界の良心とも言うべきレコード・レーベルで。

そんなノンサッチの活動を、長年、独自の視点で追い続けてきた音楽評論家、能地祐子がじっくり迫ります。まあ、ノージはぼくの妻でもあって。身内を持ち上げるのはなんとも照れくさいわけですが。でも、現在のノンサッチを語るならば最適任。

ノンサッチからのリリースについて、なんとなく断片的な知識だけでふわっと曖昧なこと語る人も少なくない中、ノージの場合はマニアックというかテッテー的というか。彼女が長い間、“ノンサッチ自警団”と称して発信し続けてきたSNSのポストは、本家ノンサッチ・レコードからもフォロー&リポストされるくらいの、なんというか、アンオフィシャルなオフィシャル? いや、オフィシャルなアンオフィシャルか(笑)。

ノージが2017年に出版した著書『アメクラ! アメリカン・クラシックのススメ』では、クラシック音楽界も視野に入れた“アメリカーナ”の未来像があれこれ綴られていて。面白いことに今、ノンサッチはまさにそのビジョンを次々と実現しているようにも見えたり…。そのシンクロ具合に感服したりもしているわけですが。

そんな彼女がメインを張って、ノンサッチからの新旧リリースを総まくりするCRT。のびのび楽しみながら綴る“夏休みの研究発表” みたいなイベントになるといいなと思ってます。ノンサッチ好きはもちろん、その存在がちょっと気になっているなんて方も、ぜひ一緒に楽しみましょう。10月20日、東京・新宿ロック・カフェ・ロフトです。

と、告知が終わったところで、そのノンサッチ・レコードからのニュー・リリースをひとつ、ここでもご紹介しておきましょう。現代最高峰のジャズ・ヴォーカリストなどとも呼ばれるセシル・マクロリン・サルヴァントの新作『オー・スナップ』。

つい先日、また来日してくれていて。今回は見に行けなかったのだけれど、2年前、東京コットンクラブでの公演を見て、卓抜した歌唱力と超豊かな歌心に圧倒されまくったものです。その際、最新アルバムだったノンサッチ移籍第3弾『メリュジーヌ』に続く新作が出ました。それが本作『オー・スナップ』。

この人の場合、自作曲に加え、ジャズ、ミュージカル、ゴスペル、ポップなど多彩な分野からのカヴァー曲も柔軟に取り上げながら自分のものにしてしまうことでおなじみだけれど。今回はノンサッチ移籍以前の諸作も含めていちばん自作曲が多い仕上がり。全13曲中、カヴァーはコモドアーズ(!)の1977年作品「ブリック・ハウス」のみ。さらにラストを締める「ア・フロング・ジャンプス・イン」はタイトルからもわかる通り、日本語でコーラスされる“古池や蛙飛び込む水の音”という松尾芭蕉の句から発展させたコーラス+インストゥルメンタル・ナンバーで。残る11曲がすべてセシルさんのオリジナルだ。

そうした楽曲群をデジタル・ツールやエフェクトも駆使しながら、自宅でシンセを操り打ち込んだり、ヴォイス・メモに歌声を記録したり、日々のジャーナリングをするような形で録音を進めた1枚なのだとか。もちろん長年のコラボレーター、サリヴァン・フォートナー(キーボード)、ヤスシ・ナカムラ(ベース)、カイル・プール(ドラム)らも参加していて。生バンドならではのジャジーなグルーヴで聞かせてくれる曲での柔軟な表現力も発揮されているのだけれど。音楽的にはこれまで以上にジャズを飛び越え、フォーク、ポップ、R&B、グランジ、サンバ、クラシック、エレクトロニックまで触手を広げつつ、思いきりパーソナルな感触の下で刺激的に融合した感じ。彼女の歌声にデジタル・エフェクトがかけられてドラム・ループの上で舞っている様子など、これはなかなかに新鮮です。

ソングライターとして、あるいはサウンド・メイカーとしての才能も並みじゃないことを教えてくれる1枚です。CRTでもノージがかけてくれるかな。

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