
ファインド・エル・ドラド/ポール・ウェラー
ポール・ウェラーの新作は、2004年の『スタジオ150』に続く全曲カヴァー・アルバム。でも、どの曲もまさにポール・ウェラーというか。ああ、この人はこういう曲が好きで、今のような音楽性を育んだんだろうなと思わせてくれる、とても貴重な1枚です。
ただ、『スタジオ150』のときはほとんどの曲のオリジナル・ヴァージョンを知っていたのだけれど、今回はもっとマニアックというか、知らない曲もいっぱい。
ぼくが個人的に知ってた曲のほうをリストアップしておくと、リッチー・ヘイヴンスのわりと近年の作品「ハンドアウツ・イン・ザ・レイン」、ボビー・チャールズの「スモール・タウン・トーク」、フライング・ブリトー・ブラザーズの「ホワイト・ライン・フィーヴァー」、ホワイト・プレインズ「ホエン・ユー・アー・ア・キング」(びっくり!)、ビージーズの「ジョーク(I Started a Joke)」(これもちょっとびっくり。ちなみにぼくのフェイバリット・ビージーズ・ナンバー。うれしい!)、ダンカン・ブラウンの「ジャーニー」あたりが曲名を見てぱっとわかるものかな。
ブライアン・プロズローの「ピンボール」とか、今回のウェラーさんのカヴァー聞いて久々に思い出した。懐かしい。1974年のアルバムだったっけ。
「ノーバディーズ・フール」って曲は、アダム・フェイス主演のテレビ・ドラマ『バッジー』の主題歌としてキンクスのレイ・デイヴィスが作ったもの。キンクスの何かのCDのボーナス・トラックでデモを聞いたことがあった曲だけど。オリジナルはコールド・ターキーってバンド名義で出ていたもの。レコード会社の移籍問題があったのでキンクスという名義が使えなかったんじゃないかとか、あれこれ推測されているやつです。いずれにせよ、レアだ…。
マウンテンの「ワン・ラスト・コールド・キス」とかもやっているけれど、これはクリスティ・ムーアのヴァージョンを下敷きにしているらしい。ぼくはそっちは聞いたことがないので、探してみようっと。
ウォーターソンズの「ネヴァー・ザ・セイム」、ゲリラズの「ローディ・ローラ」、ヘイミッシュ・イムラックの「クライヴズ・ソング」、ウィリー・グリフィン&カンパニーの「ホエア・ゼアズ・スモーク、ゼアズ・ファイア」あたりは1970年代とか80年代の曲みたいだけれど、ぼくは勉強不足でどれも知りませんでした。ゲリラズなんてフランスのバンドらしく、オリジナル・ヴァージョンにはマヌ・ディバンゴが参加しているとかで。すんごいとこ持ってくるなー。
以前からポール・ウェラーが大好きな曲だと発言していたグラモトーンズの「ダルトリー・ストリート」とか、アルバム・タイトルにもなっているイーモン・フリエルの「エル・ドラド」とかはリッチー・ヘイヴンスのもの同様、比較的新しめのナンバーか。
という感じで、自分のルーツ的な曲だけでなく、近年好きになったらしき曲とかも交えながらのセレクション。それらの曲をオーシャン・カラー・シーンのスティーヴ・クラドックのプロデュース/アレンジの下、ポール・ウェラーがていねいにカヴァーしている。デクラン・オルーク、ノエル・ギャラガー、アメリア・コバーン、ロバート・プラントら豪華な顔ぶれが曲によって客演。
シンガーとしてのポール・ウェラーの魅力を堪能できる1枚であると同時に、ある種のキュレーターとしても機能しているポール・ウェラーのセンスの良さを思いきり浴びることができる1枚かな。今年の3月に英ACEから出たコンピ『ポール・ウェラー・プレゼンツ・ザット・スウィート・スウィート・ミュージック』あたりと併せて楽しみたいです。
前回もお知らせした近々のイベントの予定など、ここにも再掲しておきます。お時間合うところ、ご興味あるところ、ありましたらぜひお運びください。よろしくお願いします。
■7月29日が朝日カルチャーセンターでノージくんとともにボブ・ディラン講座
■8月4日はRITTOR BASEでサラウンド試聴イベント
■8月21日には池袋・新文芸坐で映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』上映後のトーク・イベント
■8月22日がCRTスティーリー・ダンまつり
■9月6日は湯浅学を迎えて早稲田大学エクステンションセンターで洋邦ノヴェルティ・ソング大特集…。