
幻想の摩天楼(2025年リマスターLP)/スティーリー・ダン
2022年11月以来、ドナルド・フェイゲン監修の下、バーニー・グランドマンがリマスタリングを担当しつつ続いてきたスティーリー・ダンの最新リマスター・シリーズ。
以前も書いた通り、1972年のファースト『キャント・バイ・ア・スリル』を皮切りに、1973年の『エクスタシー(Countdown To Ecstasy)』、1974年の『プレッツェル・ロジック』とリリース順にリマスター発売が続いて。大いに盛り上がっていたら。
次、突然、2作飛ばしで1977年の『彩(エイジャ)』が出ちゃって。さらにその後、1980年の『ガウチョ』も出て。なんとなく完結感が漂って…。げっ、1975年の『うそつきケイティ(Katy Lied)』と1976年の『幻想の摩天楼(The Royal Scam)』はスキップかよ! と、悲しんでいたのだけれど。
今年の1月になってようやく『ケイティ』のリマスターが出て。そして本日、めでたく『摩天楼』も出ました。やった! よかった!
その昔、6人編成のバンド形態でデビューを飾ったスティーリー・ダンながら。アルバムを重ねるごとにひとり、またひとりとメンバーを削ぎ落とし。ドナルド・フェイゲンとウェルター・ベッカーという“核”二人だけを残して、『ケイティ』から『摩天楼』へと至るころには、豪華なセッション・ミュージシャン陣を総動員しつつ理想の音像を構築する完全無欠のスタジオ・プロジェクト・ユニットとしての自我を高らかに表明するようになっていたわけで。
その結果、生まれた超傑作が『エイジャ』だったのだけれど。やはり重要だったのは『ケイティ』から『摩天楼』の時期で。やはりこの2作なくしてスティーリー・ダンは語れないのでした。ぼくも個人的に、リアルタイムでいちばん彼らのアルバムを聞き込んだのがこの時期。特に『摩天楼』。まじ、よく聞いた。
フェイゲン&ベッカーによる楽曲が素晴らしいのはもちろん、バーナード・パーディやらポール・グリフィンやらドン・グロルニックやらチャック・レイニーやらヴィクター・フェルドマンやらチャック・フィンリーやらジム・ホーンやら名手がふんだんに参加したアレンジもすごい。
当時ぼくもギターを練習しまくっていたこともあって、各ギター・ソロに燃えたものです。オープニングを飾る「滅びゆく英雄(キッド・シャールメイン)」や「最後の無法者(Don't Take Me Alive)」でのラリー・カールトンとか、「緑のイヤリング(Green Earrings)」でのエリオット・ランドールとか。かっこよかったなぁ。
今回もゲフィン/UMeから180gヴァイナルLPが出て。マスタリングおよびカッティングはジョー・ニノ・ヘルネスがスターリング・サウンドで。これがメイン商品かな。で、アナログ・プロダクションズからはオーディオファイル向けUHQR45回転200gヴァイナル2枚組(Amazon, TOWER)と、ハイブリッド・ステレオSACDも出る。うれしい。