Disc Review

Dreamer’s Motel / Joachim Cooder (Temple Of Leaves)

ドリーマーズ・モーテル/ホアキム・クーダー

ライ・クーダーの息子…という形容がずっとなされ続けているもんで。いつまでも若いイメージがつきまとっているけれど。1978年生まれだから、ホアキムももう40代半ば過ぎ。日本でも高田漣くんとか、いつまでも“息子キャラ”で語られがちではあるものの、彼ももう立派に一本立ちしたベテランだし。それと同じかな。

ホアキムがレコーディング・シーンにおけるプロ・ミュージシャンとしてデビューしたのは彼がまだ十代だった1993年。ほどなくお父さんが仕切ったブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでも重要な活躍ぶりを見せて。以降、お父さんだけでなく、ジョニー・キャッシュ、リッキー・スキャッグス、アリ・ファルカ・トゥーレ、ドクター・ジョン、メイヴィス・ステイプルズなどと共演を重ねてきたマルチ・インストゥルメンタリスト。

2012年の『ラヴ・オン・ア・リアル・トレイン』、2018年の『フクシア・マチュ・ピチュ』、2020年の『オーヴァー・ザット・ロード・アイム・バウンド』に続く4作目のソロ・アルバム、出ました。

今回もアレイ・ムビラ(改良版カリンバ)の吸引力みなぎる音色をちりばめながらの全7曲。前作ではアンクル・デイヴ・メイコンの伝統を21世紀へとよみがえらせてみせたホアキムだったけど、そのレコーディング中、ちょっとアンクル・デイヴの音楽からはみ出してしまうものがあれこれ生まれてきたそうで。それら刺激的な音楽の断片をもとに編み上げられたのがこの新作だとのこと。曲作りに関しては、ホアキムがライ・クーダーと共に来日を果たした際、ベーシストとして一緒にやってきたニック・ロウに触発されたところが大きいらしい。

プロデュースはホアキムとマーティン・プラドラー。参加ミュージシャンは、ホアキム(ヴォーカル、アレイ・ムビラ、ドラム)、マーティン(ベース、ギター、キーボード)、ライ(ギター、バンジョー、マンドリン)、キーラン・ケイン(バンジョー)、ベン・ピーラー(ペダル・スティール)、ジュリエット・コマジア(コーラス)、ザ・ダーウィン・コミュニティ・ブラス・アンサンブル(ホーン・セクション)など。

単なるルーツ音楽というか、いわゆるアメリカーナというか、そういう枠を超えた、より幅広い魅力をたたえたメロディと歌詞が交錯していて。どこかスピリチュアルな感触すらある「ゴッドスピード・リトル・チルドレン・オヴ・フォート・スミス、アーカンソー」とか、ゴスペルっぽい「レット・ミー・シー・マイ・ブラザー・ウォーク」とか、なんだか沁みます。ぐっとメランコリックなメロディが印象的な「クール・リトル・ライオン」も9月ごろ先行リリースされたときから超お気に入り。同じく先行リリースされていた何曲かのうち、サイケで、かつブルージーな「ダウン・トゥ・ザ・ブラッド」とか、アレンジ次第ではトム・ペティみたいになりそうな「サイト・アンド・サウンド」とか、どれもがじわじわとごきげん。

フィジカル、今のとこ見つけられてません。デジタル・リリースのみの模様。でも、これまた間違いなくアナログLPが似合う音楽なので、ぜひ、フィジカルお願いします。

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