サイコ・キラー’77(スーパー・デラックス・エディション)/トーキング・ヘッズ
トーキング・ヘッズ。この人たちがデビューしてきたとき、情けないことに、ぼくはどこが面白いのか今ひとつつかみきれなくて。アートスクールの仲間たちが結成したバンドかぁ…的な?(笑) どうせ刺激に飢えた知識人の玩具だろとか、インテリのお遊びじゃないのとか、当初そんな偏見を抱きつつしばらくぼんやりと接するばかりだった。アホな大学生時代の思い出です。
でも、当然ながらその魔力がぼくの脳内をだんだん浸食してきて。逆に、聞かずにはいられなくなるような、妙な中毒現象というか。今度はそういうのにハマっていって。DEVOとかもそうだったっけ。誤解されそうな言い方かもしれないけれど、いわゆるノヴェルティものと紙一重の地点で炸裂する爆発的なかっこよさ、というか。そこにはチャック・ベリーやリトル・リチャードの伝統が確実に息づいているな、と気づいて。
あとはもうお調子者なもんで。“ファファファファ…”とか“ケスクセ”とか口走りながらその後の活動を追いかけて。パンク、ビート・ロック、ファンク、エスノ、カントリーなど様々なスタイルを貪欲に取り込みつつ意欲的な活動を続ける彼らを現代ロックのひとつの指標と見据え、遅ればせながら圧倒されるに至ったのでありました。1980年代に入って、仕事で訪れたニューヨークで、たまたまにではあったものの、例の『ストップ・メイキング・センス』のプレミア上映パーティに出席できたことも大きかった。懐かしい。
そんな彼らのデビュー・アルバム『サイコ・キラー’77(Talking Heads: 77)』のエクスパンデッド・ボックスセット、出ました。4CD+1Blu-rayという4枚組ボックス『サイコ・キラー77(スーパー・デラックス・エディション)』。
CD1がオリジナル・アルバムの2024年最新リマスター。CD2がアルバム未収録のシングル音源や、別ヴァージョン、デモなどを集めたレア音源集。まあ、シングルものも含めて過去何らかの形でCD化ずみのものがほとんどだけれど、こうしてまとまるのはうれしい。「プルド・アップ」の“オルタネイト・ポップ・ヴァージョン”ってのと、「サイコ・キラー」のオルタネイト・ヴァージョンが初お目見えかな。で、CD3が1977年、ニューヨークCBGB’sでのヘッズ最後のパフォーマンスの記録したライヴ音源集。こちらは全曲未発表。
Blu-rayにはジェリー・ハリソン監修によるオリジナル・アルバムのアトモス・ミックス、5.1chミックス、ハイレゾ版などを格納。ただ、5.1ミックスは以前CD+DVD仕様で再発されたときに入っていた「サイコ・キラー」のシングルB面アコースティック・ヴァージョンとか「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン」とかが今回は入っていなくて、ちょっと残念かも。
ジャケット自体がハードカヴァー・ブック仕様になっていて。貴重な未発表写真満載。デヴィッド・バーンら4人のメンバーもそれぞれけっこうたっぷりと文章を寄せている。デヴィッド・バーンのだけものすごくあっさり短かったような…(笑)。さらにエンジニアを務めたエド・スタシアムによる詳細なレコーディング・レポートみたいなやつもあって。トラックシートとかも興味深い。
4LP+4シングル盤仕様ってのもあります。ちょっと魅力的。