ザ・シングルズ -55th Anniv. All Time Best- / ブレッド&バター
今は東京・新宿のRock Cafe LOFTを本拠に毎月お届けしているCRTですが。かつては新宿・百人町にお店を構えていたNaked Loftってとこが本拠地で。長い間、ずいぶんとお世話になったものです。
そんなNaked Loft、現在は横浜に移転してお店を再開し、ばりばり営業中。百人町で開店してからめでたく20周年、移転してから3周年だそうです。いえーっ! お世話になったわれわれCRTもお祝いしたいぞという気持ちを込めて横浜に出張。今月の21日、出張版CRTを開催させていただきます。
ライヴハウス“ロフト”ってこととか、神奈川県ってこととか、いろいろ考え合わせたうえで、テーマは超ど真ん中、ストレートにサザン、いきます! CRT初のサザンオールスターズまつり。題して『勝手に祝うぞ!Naked Loft 20周年〜ハマのサザン Night!』です。
サザンの場合、いろいろな切り口があるモンスター・アーティストなもんで。どういう方向で楽しもうか、現在鋭意熟考ちゅう。なにやら国民的バンドとか言われて、今やすっかり日本のポップ・シーンのど真ん中に位置するサザンではありますが、46年前、彼らが新宿ロフトからの中継でTBS『ザ・ベストテン』のスポットライト・コーナーに登場した時点で、彼らはとんでもない“異端”でした。ムチャクチャおかしなやつらでした。
でも、彼らの圧倒的な魅力によって、いつしかサザンがいる日本のポップ・シーンというものが当たり前のようになってしまって。でも、よーく考えてみれば、あんな“異端”が全世代が認めるメイン・ストリームになるなんてこと、1978年の時点で誰も予想だにしなかったはず。ぼくは本当に幸運なことにサザンがデビューする数年前に桑田佳祐というとてつもない才能に出会うことができて、一般のファンの方よりもほんのちょっとだけ早く、そのすごさと可能性に胸ときめかせたわけですが。それでも、彼らがこれほどまでの大成功を収めることになるとは想像だにせず。
ということで、サザンが、桑田佳祐が、半世紀近く前、どれほど斬新で、どれほどイカれていて、どれほどやばくて、どれほど刺激的な存在だったか。それを横浜の地で改めてみんなで思い出す、そんな夜になったらいいな、と。今のところそんなことを考えています。いつもとは違うロケーションではありますが、もしお時間あるようでしたら、ぜひ一緒に盛り上がりましょう。
という長いお知らせの後、今日のピックアップ・アルバムですが。桑田佳祐との茅ヶ崎つながりで、ブレバタ、いきます。ブレッド&バター。茅ヶ崎のアーティストといえば、1980年代以降は桑田がその代表として君臨していて。でも1960年代にはもちろん忘れちゃならない永遠の若大将、加山雄三がいて。でも、その間、1970年代にはブレバタがいて…という感じ。ブレバタの存在感というのは、あの時期、ほんとずば抜けてました。
これは10年くらい前、『70年代シティ・ポップ・クロニクル』という本を出したときにも書いたことなのだけれど。ブレバタ最大の魅力は、とんでもないさりげなさというか、欲のなさというか、力の抜け具合というか。本に書いたことをちょこっとだけ引用すると、“彼らの歌声には、次も絶対聞いてくれよ、他の曲も聞いてくれよ、と強く熱く懇願するような必死さがまるで感じられないのだ。ぼくたちはこの曲みたいなサウンドが大好きなんだ、君はどう? 気に入ってくれたらうれしいな、もちろん嫌いなら嫌いで全然いいです…くらいな感じ。この押し付けがましくなさこそがブレバタ最大の魅力であり、もしかしたら最大の弱みだったのかもしれない”と。
そんな欲のなさゆえだったのか、その辺はなんとも言えないけれど、フィリップス、ポリドール、日本コロムビア、アルファ、TDK、ファンハウスなど、ひとつところに落ち着くことなくブレバタは様々なレーベルを渡り歩くことになってしまったわけですが。それでも、1969年のデビューから今年で55年。力抜けたまま55年。妙な商売っ気を出すこともなく55年。でも、今なお現役。着実にマイペースで活動を続けていて。なんだかすごい。
そうした半世紀を超える歩みの中、ブレバタは当然たくさんのシングル、アルバムをリリースしてきてくれていて。この9月、デビュー55周年企画としてそのシングルのほうのA面曲をすべて、レーベルを超えてコンパイルした2枚組ベストが出ました。それが『ザ・シングルズ -55th Anniv. All Time Best-』。
フィリップス時代の初自作シングル「マリエ」も、岸部シローと組んだポリドール時代の「野生の馬」も、当時初めて聞いたときまじぶっとんだコロムビア時代の「ピンク・シャドウ」も、スティーヴィー・ワンダーがプレゼントしてくれたファンハウス時代の「特別な気持ちで」もぜーんぶ入ってて。楽しい楽しい。
今夜、夜中の0時からFMヨコハマで放送される『otonanoラジオ』にも岩沢幸矢さん、二弓さん、兄弟揃ってゲストにいらして下さって、 懐かしい話も含め、このベスト盤のこととかいろいろ聞かせてくれました。つーか、ファンならばご想像できるでありましょうが、幸矢さんも二弓さんも特に昔の音とか聞き直したりしないので、今回もスタッフにまかせっきりだったみたい(笑)。さすがはブレバタ。こうでなくっちゃね。
ちなみに11月には彼らの“海三部作”と呼ばれる名盤群、1979年の『LATE LATE SUMMER』、1980年の『MONDAY MORNING』、1981年の『PACIFIC』もカラー・ヴァイナルLPで復刻されました。来週の『otonanoラジオ』ではそちらのお話もしていただく予定。今夜だけでなく、来週もぜひ。でもって、21日には横浜Naked Loftでサザンまつり。
もろもろ楽しく湘南を満喫しましょう!