Disc Review

Planet Pearl / Pearl & The Oysters (Stones Throw Records)

プラネット・パール/パール&ジ・オイスターズ

先週土曜日のCRT“初秋のAORまつり”、めちゃくちゃ楽しかったです。お集まりくださったみなさん、ありがとうございます。1977、78、79年ごろのアダルト・コンテンポラリー〜M.O.R.ものって、なんかそこそこセンスもよくて、適度にチャラくて、やばいくらい盛り上がりますねー(笑)。

次回は久々の新作リリースに合わせて、ニック・ロウまつりです。また本ページ上のCRTインフォをチェックして、こぞってのご来場お待ちしております。

というところで今朝のニュー・リリース紹介ですが。先日のAORまつりでかけてもよかったかも…的な? そういう魅力のある1枚です。去年、来日もしたフランス出身ロサンゼルス本拠のインディ・ポップ・デュオ、パール&ジ・オイスターズの最新アルバム。

今年の春、デント・メイの新作を紹介したとき、そのアルバムに客演していたこの人たちのことにもちらっと触れたっけ。そんな彼ら自身の新作だ。フル・アルバムとしては何作目になるんだろう。5作目かな。

パリのハイスクールで出会って以来ずっと、クリエイティヴな面でもロマンチックな面でもパートナーであり続けている“ジュジュ”ことジュリエット・パール・デイヴィスと、マイルド・ハイ・クラブのサポートなどもつとめる“ジョジョ”ことジョアキム・ポラックによるポップ・デュオ。

ジャズ・スクールやソルボンヌ大学で音楽理論などをともに学んだ後、2015年に渡米。いったんフロリダを挟んで、やがてロサンゼルスに移住して活動し続けているふたりですが。今回の新作も、もう、なんというか、1970年代半ば以降、英米のシンガー・ソングライターたちが腕ききスタジオ・セッション・マンたちをバックに従えて、ちょっとブルー・アイド・ソウル寄りだったりジャズ寄りだったりボサノヴァ寄りだったりする作品を披露するようになったころの、あの感触をたたえた美メロの雨アラレ。

それをレトロ感覚満載のアナログ・シンセやらふくよかなストリングス〜木管アンサンブルやらが交錯するポップ・サウンドに乗せて聞かせてくれていて。たまりません。日本の渋谷系とかシティ・ポップとかからの影響も公言して、間もなく出る『Hosono House』トリビュート・アルバムにも参加したりしている彼らだけに、日本に暮らすポップス・ファンとしてはなんだか聞いていて頬が緩みっぱなし。

けっこう長い期間かけて完成に至った1枚らしく、2022年にロサンゼルスにあるデント・メイのスタジオ“ハネムーン・スイート”でベーシックを録音した曲とかもあるのだとか。ジョジョの従兄弟でもあるプロデューサーのテオ・ハルムや、オーストラリアのレトロ・ディスコ・ポップ・バンド、パーセルズのジュールズ・クロメリンとかの手を借りつつレコーディングが続けられた、と。

さらに、ロサンゼルスのストーンズ・スロウ・レコードのスタジオでパーカッション録りをしたり、パリのホーム・スタジオでコーラス録りをしたり、やはりロサンゼルスのヴィンテージ・シンセサイザー博物館でレアなシンセを使ったり…。ちょっとずつちょっとずつ仕上げられていったらしい。

この人たち、アルバムごとに歌詞に綴られるテーマというか、シチュエーションみたいなものを設定して楽しんでいるようなのだけれど。今回は宇宙で遭難して地球に置き去りにされた宇宙飛行士の視点で書かれているとかなんとか…(笑)。んー、どゆこと?

これまで歌詞的には、あまり真っ向からのラヴ・ソングを書かなかったパール&ジ・オイスターズだけれど。今回は愛する人にまっすぐ思いを告げるような曲も入っていて。年齢を重ねる中で、何か思うところがあったのかなぁ…とか。

いずれにしてもいい曲を的確かつ精緻なアレンジで聞かせてくれる素敵なポップ・デュオの新作。ようやく涼しくなってきた秋の日のお散歩を思いきり楽しくしてくれそう。フィジカルはアナログのみかな。

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