Disc Review

As It Ever Was, So It Will Be Again / The Decemberists (YABB Records)

アズ・イット・エヴァー・ワズ、ソー・イット・ウィル・ビー・アゲイン/ザ・ディセンバリスツ

インディー・レーベルからデビューを果たした後、大手のキャピトルに移籍して。それ以降、なんだかんだアルバム・リリースのインターバルが、2年、3年、4年…と長くなりがちなディセンバリスツではありますが。

本ブログで取り上げるのは2015年の『ホワット・ア・テリブル・ワールド、ホワット・ア・ビューティフル・ワールド』以来。とはいえ、その間に出たスタジオものは別名義によるオリヴィア・チェイニーとのコラボ・アルバムと2018年の『アイル・ビー・ユア・ガール』だけ。ということで、今回も長ーいインターバル。6年という最長のブランクを経ての新作リリースとなりました。今回はキャピトルではなく、自身のレーベル“YABB”からのリリース。

前作ではこの人たちらしからぬシンセサイザーによるリフをフィーチャーした曲とかも披露して、ぼくたちをちょっと戸惑わせたディセンバリスツではありましたが。今回はまた初期に立ち返ったような、インディ・ロック系というか、チェンバー・ポップ系というか、そういったテイストに貫かれたジャングリーなフォーク・ロック・アプローチを展開している感じ。いくつかの曲ではマリアッチというかラテンというか、そういうエキゾチックなアプローチも聞かれたりして。なんだか、楽しい。

なんでも中心メンバーのコリン・メロイは一時、ある種の燃え尽き症候群みたいな感じに陥ったらしく。バンド活動を続けるべきかどうかずいぶんと悩んだ時期もあったという。けど、パンデミック期を含む6年の休止期間の中、自分と対峙し、表現すべきテーマのようなものを再確認することができたのだろう、なかなかに充実した楽曲群を取り揃えてシーン最前線へと戻ってきてくれた。

どの曲にも相変わらず寓話的というか、バロック的というか、どこかスプーキーというか、コリン・メロイらしい歌詞をともなった独自の世界観が流れている。ジョニー・キャッシュやザ・バンドもレパートリーに採り入れているカントリーの名曲「ロング・ブラック・ヴェイル」への眼差しを確実に感じる「ロング・ホワイト・ヴェイル」とか、ペダル・スティールのあしらい方やジェニー・コンリーによるバック・コーラスに真摯なアメリカーナ愛が感じられて。やっぱこの人たちあなどれないな、と改めて。

その「ロング・ホワイト・ヴェイル」には“死”のイメージがじんわり漂っているのだけれど、もっと直截に死を見据えた「ザ・ブラック・マリア」という曲などもあるし。だいたいオープニングを飾る「ベリアル・グラウンド」からしていきなり“降りてこいよ、墓地で会おう”とか歌ってるし。この人たちも年齢を重ねて、シニカルな視点にさらなる磨きがかかってきたのかな、とも。“かつてそうだったように、これからもまたそうなる”というアルバム・タイトルも渋い。

ラストを飾る20分弱の大作「ジョーン・イン・ザ・ガーデン」はまさにディセンバリスツ流の叙事詩というか、アンビエント・プログレッシヴ・カントリー・ロックみたいな? プログレもアンビエントもよくわかっていないぼくが言っても説得力皆無ですが(笑)。中盤のどよ〜んとした展開とかには少々たじろぐものの、それでもこの人たちの集中力のようなものはしっかり伝わってきて。

6年ぶり。うれしい復活です。胸が躍ります。今月末には国内盤(Amazon / Tower)も出ます。

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