Disc Review

The Johnny Winter Story (The GRT/Janus Recordings) / Johnny Winter (Omnivore Recordings)

ザ・ジョニー・ウィンター・ストーリー(ザ・GRT/Janusレコーディングズ)/ジョニー・ウィンター

ジョニー・ウィンターというと、やはり米コロムビア〜ブルー・スカイ在籍期のイメージが強い。ハードにドライヴする最強のブルース・ロック・サウンドで一世を風靡していた時期。

一世を風靡するきっかけを作ったのはマイケル・ブルームフィールドだ。1968年、アル・クーパーと組んだジャム・セッション・アルバム『スーパー・セッション』を大ヒットさせていたブルームフィールドは、誰よりも早くジョニー・ウィンターの個性に注目していて。同年12月、ニューヨークのフィルモア・イーストで行なわれた“スーパー・セッション・ジャム・コンサート”に彼をゲスト出演させた。

ウィンターがステージに登場したのはすでに深夜1時を回ったころだったらしいけれど、その切れ味鋭いギターと強烈なヴォーカルに、帰りかけていた観客も足を止め、熱狂的な歓声を送ったという。観客は総立ち。そのまま早朝4時ごろまでアンコールを求める歓声が絶えなかったのだとか。まさに伝説が生まれた瞬間。

会場には『スーパー・セッション』の発売元だった米コロムビア・レコードのエグゼクティヴも居合わせていて。この騒ぎから数日のうちにウィンターに契約話を持ちかけた。噂を聞きつけたRCAレコードとの激しい争奪戦ののち、当時としては破格の60万ドルという契約金で米コロムビアはジョニーを獲得。この金額が少々オーバーに伝えられ、ジョニーは一躍“100万ドルのギタリスト”として全米の注目を集める存在となったわけだけれど。

実はその前から、ウィンターはローカル・シーンでばりばり活動していた。1944年2月、テキサス州ボーモント生まれのウィンターさん。幼いころからクラリネットを習うなど、音楽に親しみながら育ったものの、クラリネットの練習のせいで歯の噛み合わせがひどい状態になってしまったため、父が愛用していたウクレレへと楽器をチェンジ。地元の子供向けテレビ番組に出演してウクレレを弾きながら歌ったりしたこともあったという。

やがてウクレレからギターに持ち替え、弟のエドガー・ウィンターとともに、エヴァリー・ブラザーズを真似た“ウィンター・ブラザーズ”として様々な音楽コンテストに出場するなど、演奏の場を求めて積極的な活動を続けた。1959年、15歳のときには自らのバンド“ジョニー&ザ・ジャマーズ”を組み、ヒューストンのインディ・レーベル“Dart”からシングル「スクール・デイ・ブルース」をリリース。これがジョニー・ウィンターのレコード・デビューだった。

白人ながら、この時期からすでにウィンターはマディ・ウォーターズ、B.B.キング、ボビー・ブランドといった黒人ブルース・アーティストのステージにも接し、独自のブルース・フィーリングを育み始めていた。以降、KRCo、Frolic、Diamond Jim、Cascadeなど多くのレーベルを渡り歩きつつ、ジョニー・ウィンター&ザ・クリスタリアーズ、テキサス・ギター・スリム、ジ・インサイトなど様々な名義で、さらにはロイ・ヘッドのバック・バンド“ザ・トレイツ”の一員として、何枚ものシングルをリリースし続けたのでした。

で、そのレーベル渡り歩き時代の音源を未発表ものも含めて総まくりしたのが本作『ザ・ジョニー・ウィンター・ストーリー(ザ・GRT/Janusレコーディングズ)』だ。いくつものレーベルにまたがった音源集にもかかわらず、“GRT/Janus”とざっくり括られてている理由は——。米コロムビアから鳴り物入りでデビューした勢いに乗じて、それ以前の音源を1969年にまずGRTレコードが『ザ・ジョニー・ウィンター・ストーリー』として、続いてGRT傘下のJanusレコードが『アバウト・ブルース』として編纂〜リリースしていて。さらにJanusは1970年にも『アーリー・タイムズ』というのを出していて。この3作の初期音源コンピを合体させたのが本作だから、というわけ。

収録されているのは、ごきげんなオリジナル曲を中心に、ボ・ディドリー、ジェイムス・ブラウン、エルトン・アンダーソン、ジョン・リー・フッカー、ジョニー・ギター・ワトソン、モーズ・アリソン、ジョン・D・ラウダーミルク、セントルイス・ジョー・オーデンらのカヴァーを交えた全33曲。

ストリーミングの曲順で言うと、1曲目「イーズ・マイ・ハート(イーズ・マイ・ペイン)」から14曲目「ファイヴ・アフター・フォーAM」までがオリジナル『ザ・ジョニー・ウィンター・ストーリー』。15曲目「パーチマン・ファーム」から24曲目「アヴォカド・グリーン」までの10曲が『アバウト・ブルース』。で、25曲目「ステイ・バイ・マイ・サイド」から33曲目「プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス」まで(+『アバウト・ブルース』にも収録されている19曲目「バッド・ニュース」を途中に加えた全10曲)が『アーリー・タイムズ』の収録曲だ。

R&Bっぽい曲も多いし、「銀色の月明かりの下で(By the Light of the Silvery Moon)」のようなグレイト・アメリカン・ソングブックものまである。1960年代後半からのコロムビア期のハードな切り口とも違う、1980年代以降のアリゲイター〜ポイント・ブランク在籍期のルーツィなアプローチとも違う、ソリッドでタイトでコンパクトで、あの手この手、まだまだ何でもあり…の若々しいジョニー・ウィンターの姿が堪能できる。楽しい。あーんど、痛快!

マイケル・グレイヴズが最新リマスタリングを担当。ピート・ウェルディングによる1969年オリジナル『ザ・ジョニー・ウィンター・ストーリー』に掲載されていたライナーノーツも付いてます。

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