スウィート・ドリーミン/テックス・クリック
以前、マック・デマルコが創設したプライベート・レーベル“マックズ・レコード”からの初アルバムをここで紹介したことがあるテックス・クリック。オーストラリア出身のインディ・ポップ系シンガー・ソングライター/キーボード・プレイヤーですが。
そのときも書いたのだけれど。なんでもテックスくん、モデルをやっている彼女が仕事で日本に来ることになったとき一緒に来日。ところが、新型コロナ禍に巻き込まれ当時本拠地にしていた米ニューヨークに戻れなくなってしまったらしく。結局そのまま東京に居残り。ミュージック・ビデオを日本で撮影したりしながらパンデミックをやり過ごしていた、と。東京でのライヴ告知とかも目にした覚えがある。
さらにそのまま東京に居着いちゃったみたいで。マックズ・レコードからの2年半ぶりの新作は東京録音。バンドキャンプを見たら“Recorded in the confines of his Tokyo attic studio”とか書いてあったから、東京の“屋根裏”的なスタジオで、限られた状況下、ピアノ、ギター、ベース、シンセサイザー、パーカッションなど、ほぼすべての楽器を自分ひとりで演奏しながらレコーディングされたようだ。マイルズ・マイジャベックがドラマーとしてクレジットされているけれど、それはオーストラリアとのリモート・レコーディングだったとのこと。マック・デマルコとのつながりも含めて、感覚的に日本としっくりご縁がある感じなのかな。
収録曲はもちろんすべて自作で。ロマンティックだったり、ハーフトルだったり、瞑想的だったり、耽美的だったり、切なかったり、気だるかったり…。今回も愛と感傷をテーマに、深く内省へと思いを巡らせた1枚に仕上がっている。押し出しは強くないけれど、いいシンガー・ソングライターだなと思います。フィジカルは今のところヴァイナルのみかな。前作ともども静かに、長く聞き続けられそう。