Disc Review

Hackney Diamonds / The Rolling Stones (Polydor/Universal)

ハックニー・ダイアモンズ/ザ・ローリング・ストーンズ

先週見て大いに盛り上がらせてもらったテデスキ・トラックス・バンドの来日公演とか、セッションからの未発表ボーナス・トラックを追加して先日新装リリースされたトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ『MOJO』の拡張エディションとか、そういうのを体験しながら、あー、やっぱロックはいいよねー…と、まあ、思いきりざっくりとではあるものの、改めてそんなアホみたいな思いを新たにしている今日このごろでありますが。

その気分をさらに後押ししてくれたのがローリング・ストーンズの新作『ハックニー・ダイアモンズ』だ。間にいくつものライヴ盤やベスト盤、ブルースのカヴァー・アルバムなどが挟まってはいたものの、オリジナル・スタジオ・アルバムとしては2005年の『ア・ビガー・バン』以来。18年ぶり。うれしい。

共同プロデューサーにアンドリュー・ワットを起用し、ポール・マッカートニーとかレディ・ガガとかスティーヴィー・ワンダーとかエルトン・ジョンとかを曲によってゲストとして迎えた1枚で。先行シングル「アングリー」が出た瞬間からすでに各所で絶賛の嵐。アルバム全編、まじかっこいい。この人たち、やっぱすげえな、と。思い知らされました。

もちろん、中にはむりやり難癖つけているようなレビューもあって。曰く、“自分たちのアウトロー・イメージをなぞっているだけ”とか“もう一山当てようとしているだけ”とか“ゲストを迎えるならなぜ若手のヒップホップ・アーティストとかを起用しないのか”とか…。どれもほとんどチンピラの言いがかりみたいなものでしかないのだけれど。

現存オリジナル・メンバーはもうミック・ジャガーとキース・リチャーズだけ。どちらも80歳くらい。途中加入のロニー・ウッドも76歳。そんな年回りのミュージシャンたちが、しかしこれだけナチュラルに、堂々と、しかもけっこう強烈にロックできる時代がやってきたんだなという事実にはやはり胸が躍るし。そういうシーンを作り上げるうえで彼らストーンズが果たした役割はとてつもなくでかいんだよなぁ、という感慨も深い。

前述した通り、あちこちにたくさんの紹介文が載っているので、今さら本ブログで詳細を綴る必要もないとは思うけれど。全曲ごきげんだった中、個人的には生前のチャーリー・ワッツのプレイを記録した2曲、「メス・イット・アップ」と「リヴ・バイ・ザ・ソード」にドハマリした。特に、ビル・ワイマンが1993年の脱退後、なんと30年ぶりに出戻り客演した「リヴ・バイ・ザ・ソード」のほう。ミック、キース、ロニー、ビル、チャーリー! しびれる。

あと、ラストに収められたマディ・ウォーターズ「ローリング・ストーン・ブルース」のカヴァー! ミック、キース、ロニーの3人によるアコースティック・セッションで。やばい。ミックがぐっと抑制の効いた歌声でつぶやく“俺が生まれる前、お袋が親父にこう言った。「男の子が生まれてくるの。その子は転がる石〜ローリング・ストーンになるのよ」”という一節は鳥肌ものだ。半世紀以上に及ぶローリング・ストーンズの歴史が、この瞬間、大きな大きな一巡りを、感動的に描くのだ。

日本盤CDはこの後に1曲、2020年に発表された「リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン」がボーナス収録されていて。曲が多いのはうれしいっちゃうれしいのだけれど。アルバムとしては「ローリング・ストーン・ブルース」で終わったほうが美しい。ボーナスの前にいったん再生ストップしときましょう。

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