彩(エイジャ)(2023年リマスターLP)/スティーリー・ダン
ドナルド・フェイゲン監修の下、続いているスティーリー・ダンの最新リマスター・シリーズ。1972年のファースト『キャント・バイ・ア・スリル』を皮切りに、1973年の『エクスタシー(Countdown To Ecstasy)』、1974年の『プレッツェル・ロジック』と、去年の11月以降、順を追って最新リマスター盤の発売が続いてきたのだけれど。
ここで一気に1977年の『彩(エイジャ)』が出ちゃいました。1975年の『うそつきケイティ(Katy Lied)』と1976年の『幻想の摩天楼(The Royal Scam)』を2枚飛ばし。おいおい。どうしたんだろう。あまり売れてないのかな。売れてないので、ここはやっぱりいちばん人気の『エイジャ』で、みたいな? だとしたら複雑だけれど。
まあ、そんなこと言っていても仕方ないので、もちろんこれもゲットしました。今回もドナルド・フェイゲンの監修下、バーニー・グランドマンがリマスタリング。といっても、『エイジャ』のマスタリング前のフラットな状態のオリジナル・アナログ・マスターはもともと納品されていないらしく、行方知れず。今回はEQ処理されていないコピー・マスターからのリマスターらしい。
180g通常アナログLPの他、アナログ・プロダクションのSACDハイブリッド盤とか、UHQR 200g重量盤/Clarity Vinylによる超高音質45回転LP2枚組ボックスとか、いろいろ出てます。が、通常LP以外はバカに高価だし、もともとオリジナルのLPも持っているので、今回もそちらのお高いブツはスルー。既出3作同様、ぼくは192kHz/24bitのハイレゾ音源で入手しましたー。
まあ、内容については今さら語る必要など何ひとつない、誰もが聞きまくってきた大傑作なわけですが。太さと奥行きが増した感じの今回のリマスター音質で聞き直してみると、ドラムの間合いとか、タイム感とか、ハットやシンバルの刻み方とか、そういったところに改めて打ちのめされた。
この人たちの場合、初期、普通のバンド編成だったころはジム・ホッダーがドラムを担当していたわけだけれど。以降、アルバムを重ねるごとにジェフ・ポーカロとか、ジム・ゴードンとか、たまーにハル・ブレインとかの参加を経て、『幻想の摩天楼』あたりからはバーナード・パーディとリック・マロッタ、東西の腕ききを使い分けるようになって。
『エイジャ』ではその二人に加え、ポール・ハンフリー、ジム・ケルトナー、スティーヴ・ガッド、エド・グリーンが参加。パーディが2曲、それ以外のドラマーが1曲ずつを叩いている。中でもガッド。やっぱこの人がすごい。圧倒的。タイトル・チューンの間奏以降のフィルなど、もはや独壇場。シンバルの使い分けのニュアンスとかも秀逸で。次作『ガウチョ』でドラム3曲、パーカッション1曲を手がけることになるのも当然という感じ。もちろん派手さでは負けるものの、「安らぎの家(Home at Last)」でのパーディの跳ね感とかもやばい。
というわけで、とりあえず思いきり楽しんではいますが。次はどうなるの? なんか、12月に『ガウチョ』が出る、みたいなニュースも伝わってきているようだけど。“ケイティ”と“摩天楼”はどうなるの? 心配だ。『エイジャ』と『ガウチョ』出してとりあえずシリーズ終了とか、そんなことにだけはならないよう、心から祈っております。