ラヴェット!/ベティ・ラヴェット
この夏の告知をいくつか。
まずは7月1日と2日、横浜大さん橋ホールで行なわれる『YOKOHAMA MUSIC STYLE Vol.3 -Guitar Trade Show-』。全国のギター・ショップ、コレクター、ギター・ビルダー、楽器メーカー、中古レコード店などが横浜に集結して、ギターにまつわるいろいろな展示とか、大規模なギター・トレード・ショーとか、ライヴとか、トーク・ショーを展開するマーケット型の恒例人気イベントです。
ここにぼくも参加します。7月2日の16時から会場内特設ステージで、佐橋佳幸くんと2人でそれぞれが好きなアナログ・レコードを持ち寄ってのトーク&レコード・コンサート。もちろん持って行くLPレコードはイベントに合わせてギター関連。かけるレコード・プレーヤーは日本が誇る“レーザー・ターンテーブル”。最強の音質で古今のギター名演を堪能していただけると思います。サハシはきっとレコードだけでなくギターも持ってきてくれるんじゃないかなぁ…。勝手に期待してます。持ってこなくても会場にはギターがいっぱいうなってるけど(笑)。
詳細はオフィシャルWebサイトでご確認ください。
で、7月8日からは毎夏・冬恒例の早稲田大学エクステンションセンターでの『英米ロック史』講座。8月5日まで、毎週土曜日のお昼、ポップ・ヒストリーに名を刻む偉大なアーティストとか音楽ムーヴメントとかをひとつずつ取り上げて深掘りします。
2015年からスタートして、コロナ禍でのリモート講座も含めると今回が15回目になるのかな。取り上げるのは、ジョニ・ミッチェル(7月8日)、フリートウッド・マック(7月15日)、モータウン・レコード(7月22日)、バート・バカラック(7月29日)、山下達郎(8月5日)の5組。ご興味ある方はオフィシャルWebサイトをチェックしてみてください。バカラックは以前も取り上げていますが、今年の訃報を受けて改めてその功績を振り返りたいと思っています。
8月アタマにはちょっと前までラジオでやっていた企画をライヴで再現するイベントも計画中。これは詳細が決まったらすぐお知らせしますね。
毎月恒例のペースが復活したCRTのほうは、PCでご覧の方は右側、スマホでご覧の方は下方に掲載してあるCRTインフォをご参照ください。今月のテーマはポール・サイモン。来月は、夏のCRTといえば…の、あのアーティストを取り上げる予定。こちらも近々詳細を告知します。
と、もろもろの業務連絡を終えたところで、取りいそぎニュー・リリースのピックアップを。本日リリースされたデトロイトのベテラン歌姫、ベティ・ラヴェットの新作です。
2003年に復活して以降は、主にロックとかカントリーとかの分野の楽曲をカヴァーしながら、持ち前のファンキーでディープな感覚で新たな次元へと昇華させてきたベティ姐。その流れの中で2010年には傑作『ブリティッシュ・ロック解釈』とかも生まれたわけですが。今回はひとりのソングライターに照準を絞った1枚。なんと、ランドール・ブラムブレットの作品集だ。
ブラムブレットはご存じの通り、スティーヴ・ウィンウッド、グレッグ・オールマン、ボニー・レイット、ロビー・ロバートソン、エルヴィン・ビショップなどのサポート・ワークで知られるマルチ・インストゥルメンタリストで。と同時に自身でもアルバムを過去15作近くリリースしてきているソウルフルなシンガー・ソングライターでもあって。
そんなブラムブレットの曲をベティ姐が取り上げたのは2015年のアルバム『ワーシー』収録の「ホエア・ア・ライフ・ゴーズ」が最初かな。そこで手応えを得たということか、今回は全曲がブラムブレット作品。ベティ姐がアルバムまるごと誰かひとりの作品で固めたのはたぶん2018年のボブ・ディラン作品集『シングス・ハヴ・チェンジド』以来だと思う。
プロデュースはスティーヴ・ジョーダン。ジョーダンがもちろんドラムを担当して、ベースはピノ・パラディーノ、ギターがラリー・キャンベルとクリス・ブルース、キーボードがレオン・ペンダーヴィス…というのがベーシックなバンドの顔ぶれだ。そこにスティーヴ・ウィンウッド、ジョン・メイヤー、ジョン・バティステ、レイ・パーカー・ジュニア、チャールズ・ホッジス、アンソニー・ハミルトン、モンテ・クロフト、ジェイムス・カーター、ペドリート・マルティネスらが曲によってゲスト参加し彩りを加えている。
ほとんどがヴォーカルも含めてワン・テイクかツー・テイクで録音されたとかで。名手たちならではの余裕といい感じの緊張とが絶妙に交錯するファンキーな音世界が構築されている。ベティさん、1946年生まれだから今年77歳になったはずなのだけれど。バリバリ。間もなくサマー・ツアーもスタートさせるみたいだし。かっちょええなぁ。
ベティさん本人の揺るぎなき歌心をがっちり提示する最新作であると同時に、ソングライターとしてはけっして正当な評価を勝ち得ているとも言い切れないランドール・ブラムブレットの真の才能にも改めてスポットを当てようというスリリングな好盤。それを自身の姓を堂々と名乗ったアルバムとして届けてくれたベティ姐の心意気にしびれます。