Disc Review

Say Less / Raul Malo (Mono Mundo Recordings/Thirty Tigers)

セイ・レス/ラウル・マロ

今年の夏、ベンチャーズは来日しないのだとか。かつて黄金のオリジナル・フォーと呼ばれたメンバーはもはやひとりもいなくなってしまったベンチャーズではありますが。やはり彼らの来日は夏の風物詩。コロナ禍を乗り越えて去年、3年ぶりの来日ツアーを行ってくれたものの。今年は夏のツアーなし。

まあ、新作アルバム制作のためということなので、アルバム完成後にはきっと日本にやってきてくれることでしょうが。でも、ちょっと寂しいのは確か。ギター・インストって今どうなんだろう。存在感、まだ少しはあるのかな。ファンとしてはその行く末が大いに心配ではありますが。

そんなご時世に、しかし! 本来はバンドのフロントを張るリード・ヴォーカリストであるにもかかわらず、なんとソロ名義でギター・インスト・アルバムをリリースしたツワモノが現われましたよ!

ちょっとエキゾチックな国境テイストを存分にたたえたマイアミ本拠のカントリー・バンド、ザ・マヴェリックスのシンガー/ギタリスト/ソングライター/プロデューサー、ラウル・マロの新作。“多くを語らない”というタイトル通り、これが真っ向からのエレキ・インスト・アルバムなのでありました。

といっても、いわゆるサーフィン・ロックンロール系のエレキ・インストではなく、デュアン・エディとか、チャンプスとか、ファイアボールズとか、ジョー・メイフィスとか、そっち系の、サックスやオルガンなども交えつつ展開するトゥワンギーなギター・インスト。

シンガーとしてのラウル・マロは第二のロイ・オービソンとか評されたりもする個性だけれど。面白いことにギタリストとしてもその味があるというか。なんとも言えない中南米風味がやばく漂っているというか。けっして超絶テクニックを駆使してピロピロ弾きまくったりするわけではなく、低音弦メインに淡々とメロディを綴って、アームを効果的に活用したコードワークを随所にあしらって、魅惑の音像を作り上げる、みたいな。そういう仕上がり。グッときます。

キューバ系、ラティーノ系を中心に、懐かしの映画サントラ系あり、ジャンプ系あり、ロックンロール系あり、レトロ・ポップ系あり。マヴェリックスのメンバーたちも3曲に参加。基本、ラウル・マロの自作曲だけれど、1曲だけがカヴァー。サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オヴ・サイレンス」をトゥワンギーにぶちかましています。デヴィッド・リンチとかが喜びそうな深くダークな世界観にしびれました。

そういえば来月のCRTは新作が話題のポール・サイモン・ナイト。ラウル・マロもCRTを祝福してるのかなー、とか、勝手なこと思いながら、にやにや聞いているのでした。ギター・インスト、やっぱいいなぁ…。

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