Disc Review

Aperture / Hannah Jadagu (Sub Pop)

アパーチャー/ハナ・ジャダーグ

テキサス州メスキート出身、現在はニューヨークで大学に通っているというハナ・ジャダーグ。ハイスクール時代から書きためた曲をサウンドクラウドなどで発表しながら徐々に注目を集めて、卒業したばかりの2021年、なんと愛用のiPhoneを使って録音したという正真正銘のベッドルーム・ポップEP『ホワット・イズ・ゴーイング・オン』をサブ・ポップからリリースして、ぼくたちを驚かせてくれたものですが。

ひたすら内省的、極私的だけれども、フックの効いたキャッチーなメロディ作りのセンスがとても新鮮だった。と、そんな彼女のフル・アルバムがいよいよ完成しましたー。アルバム・タイトルの“アパーチャー”というのはカメラの絞りとか、レンズの口径とか、小さな穴とか、そういう意味だけど。ベッドルームのような小さな隙間から外側の世界を覗き見していく、みたいな、そういう感触に貫かれた1枚ってことかも。

相変わらずクレイロやスネイル・メイルあたりからの影響が濃いパーソナルな世界観を引き継ぎつつ、フランスのソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストのマックス・ロバート・ベイビー(フランスの人だからロベール?)を共同プロデューサーに迎え、ぐっとプロフェッショナルな音作りを聞かせた1枚に仕上がっている。

当初はニューヨークとパリで、データをやりとりしながらのリモート・レコーディングだったようだけれど、やがてハナさんがパリへと渡り、マックスさんのスタジオで作業。ドラムなども本格的に導入した多彩なアレンジでハナ持ち前のメロディ感覚をバックアップしている。

この人の場合、ベッドルーム・ポップといっても、キーボードではなくギターのカッティングやリフを中心に曲が編み上げられているところが特徴的で。その辺の個性が今回もうまく発揮されている。先行シングルとして出た「セイ・イット・ナウ」とか、まさにそんな感触だし。爆音ギター・リフに導かれてスタートする「ホワット・ユー・ディッド」みたいな曲もあるし。でも、シンセやコーラスにふわっと包まれながらスタートする「ワーニング・サイン」みたいな曲も魅力的だし。やはり一筋縄にはいかない才能だな、と。

どうせならiPhoneでフル・アルバムいっちゃてもらいたかった気もしなくはないけれど、まあ、今回のような方向性も彼女自身の成長にとって欠かせないグレードアップだったのでしょう。

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