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Disc Review

Alive at the Village Vanguard / Fred Hersch & Esperanza Spalding (Palmetto Records)

アライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード/フレッド・ハーシュ&エスペランサ・スポルディング

自身のトリオやソロではもちろん、ジュリアン・ラージやビル・フリゼールらとのデュオで、あるいはストリング・カルテットと組んで、さまざま柔軟なフォーマットで持ち前の豊かな詩情というか、イマジネイティヴな色彩感というか、そういったものを繊細に表現し続けているジャズ・ピアニスト、フレッド・ハーシュ。

彼はもう何年も、毎年3週間、ニューヨークの名門ジャズ・クラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードにヘッドライナーとして招かれているのだけれど。2018年にはかのエスペランサ・スポルディングを迎えまたまた素晴らしいデュオ・パフォーマンスを披露。そのときの記録がライヴ・アルバムとしてリリースされた。

ハーシュとエスペランサが出会ったのは、ハーシュが病から復帰後の2013年。今は閉店してしまったニューヨークのジャズ・クラブ“ジャズ・スタンダード”で行なわれていたハーシュ恒例のデュオ・パフォーマンス・シリーズのゲストのひとりとしてエスペランサが招かれたのが最初のセッションだったとか。

その後、2018年5月にやはりジャズ・スタンダードで再共演することになったのだが、それがとてつもなくうまくいったことに気を良くして、同年10月19日から21日まで、今度は場所をヴィレッジ・ヴァンガードへと移して3日間、ライヴ録音を前提に改めて共演。その際のパフォーマンスの中から選りすぐられた音源で構成されたのが本作『アライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』だ。

ガーシュウィン・ナンバー「バット・ノット・フォー・ミー」でスタート。以降、2012年にトリオ編成でリリースした『アライヴ・アット・ザ・ヴァンガード』でも披露されていたハーシュ作品のスキャット版「ドリーム・オヴ・モンク」、ミゲル・ゼノンとの共演でも取り上げていたチャーリー・パーカー作のカリプソ「マイ・リトル・スウェード・シューズ」、ボビー・トゥループの「ガール・トーク」、セロニアス・モンクの「エヴィデンス」、ビル・エヴァンスとトニー・ベネットのデュオによる名演でも知られるシナトラ・ナンバー「サム・アザー・タイム」、エグベルト・ジスモンチの「ロロ」、2009年に出たジャズ・スタンダードでのライヴ盤でのジョー・ローリーによる名唱も忘れがたい「ア・ウィッシュ(ヴァレンタイン)」まで。

スタンダード・ナンバー、偉大な先達ジャズメンのレパートリー、ハーシュの既存曲などを取り混ぜつつ、なごやかさと緊張感とが絶妙に交錯する素晴らしいデュオ・パフォーマンスが展開されていく。エスペランサがいっさいベースを弾かず、あくまでもヴォーカリストとして共演しているのも興味深いところ。新たな歌詞を即興的に付け加えてみたり、自分なりにいじってみたり、自在なスキャットを聞かせてみたり。まじ、かっこいい。楽器はハーシュのピアノ1本。そんなある意味とことん自由な環境の下、両者ともにのびのび、奔放なインタープレイを聞かせてくれる。

時に叙情的。時に躍動的。二人ともフレージングがやばい。ある種アナーキーですらあるインプロヴィゼーションの絡み合いがごきげんにスリリングだ。なんでもハーシュはこの公演直後、股関節置換手術のために入院する予定だったらしく。松葉杖がなければ歩けない状態だったそうだが、演奏からそうした辛さはまるで伝わってこない。二人の交歓がこの上なく深く豊かなものだった証だろう。

毎夜、事前にアレンジを決めることなく、セットリストさえ漠然としたままステージに臨んだそうで、同じ曲ですら毎日思いきり違う仕上がりになっていたのだとか。3日分、全部聞きたいなぁ。

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