Disc Review

My Ideal: A Tribute to Chet Baker Sings / Amos Lee (Dualtone Music)

マイ・アイディアル(ア・トリビュート・トゥ・チェット・ベイカー・シングズ)/エイモス・リー

昨日はお昼、ご近所のレコード屋さん、文京区白山の“WOO-EEE-WOO STORE”で能地祐子とともにレコード・コンサート&トーク・イベント。寒い中、たくさんご来場くださってうれしかったです。一緒に盛り上げてくれたDJ ♡(ラブ!)ちゃんの選曲センスもごきげんで。やっぱりみんなで一緒に同じ空気を共有しながら好きな音楽を楽しむのって、この上なく楽しいですね。じゃんけん&抽選大会も盛り上がったし(笑)。まだまだみんなで集まることに関して、なんとも落ち着かない状況が続いてはいますが、早く以前のような日々が戻ってくれるといいなと、まじ思います。

で、夜、帰宅後は『M1』見て、サッカー見て。加えて昨日は、かつて一緒にいろいろ楽しい思いを共有した知人の他界を知ったりしたことあって。すっかり夜更かし。おかげで今朝は思い切り寝坊しました。ブログの更新も遅くなっちゃいましたよ。というわけで、午後になってからののんびり更新。取り上げるのは、諦観や喪失感をさりげなくたたえた物語を巧みに綴る歌詞と、フォーク、R&B、ジャズなどの影響が交錯する洗練された音楽性でおなじみ、エイモス・リーの新作です。

ノラ・ジョーンズあたりとともに世の注目を集めた世代のシンガー・ソングライターのひとり。今年のアタマに8作目のアルバム『ドリームランド』をリリースしたばかりながら、1年を待たず、さらなる新作が出ました。それが本作『マイ・アイディアル(ア・トリビュート・トゥ・チェット・ベイカー・シングズ)』。

タイトルからもすぐわかる通り、これ、エイモスさんの重要なルーツのひとつであるチェット・ベイカーへの愛を超ストレートに表出したカヴァー・アルバムだ。あ、チェット・ベイカーへの…というより、副題にもある通り『チェット・ベイカー・シングズ』というアルバムに対するトリビュート作。

まあ、デビュー以降数年、ブルーノートに在籍していたこととか、ちょいハスキーな歌声とか、そのあたりからもチェット・ベイカーなりこのアルバムなりがエイモスさんにとって重要なルーツのひとつであろうことは想像に難くないわけですが。多くのミュージシャンが試みた新型コロナのロックダウン期間中のルーツ見直し企画のひとつらしく。地元フィラデルフィアで、デヴィッド・ストリーム(ピアノ、トランペット)、マディソン・ラスト(ベース)、アンワー・M・マーシャル(ドラム)らを従えてレコーディングされた。

『チェット・ベイカー・シングズ』というアルバムはまず1954年に10インチLP(あるいは7インチ×2枚)というフォーマットで8曲入りの盤が出て。その後、1956年にその8曲をすべてB面にまとめて収め、A面に新録した6曲を追加した12インチLPが再発されたのだけれど。

今回エイモスさんはその1956年盤を下敷きに、そのままの曲順で全14曲をカヴァー。アナログLPはこの14曲入り。で、CDおよびデジタル・ダウンロードにはさらに2曲、1958年の『(チェット・ベイカー・シングズ)イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー』に収められていた「エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー」と「アイム・オールド・ファッションド」のカヴァー2曲が追加されている。

で、総じて言うと。仕上がりはわりと微妙で(笑)。オリジナルの味をあまり大きく損なわないようにという敬愛に満ちた配慮からか、そのままじゃん…みたいな個所も多く。え、これ、カラオケやってんの? 的な。

もちろん、よく聞き込むと細部にいろいろ自分なりのアプローチにもトライしている部分もあって。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とか、“For Oskar and Eli”という副題が付けられていて。これは、スウェーデンのトーマス・アルフレッドソン監督による2008年の映画『ぼくのエリ 200歳の少女(Let the Right One In)』の主人公、オスカーとエリに捧げる曲へと歌詞に手を入れたりしつつ微調整されてて。面白い。

なので、エイモス・リーに対して好感をもって接することができる限りは、これ、とっても楽しいアルバム。そうでないとツッコミどころ満載、みたいな(笑)。チェット・ベイカー盤聞いたほうがいいだろ、と言われればそれまでの仕上がりで。なんともはや、ではありますが…。

でも、エイモスのチェット・ベイカー愛をがっつり感じられる1枚であることは確か。寒い日のウォーキングのおともにはなかなかほっこりして、よき、かも。

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