Disc Review

Harvest: 50th Anniversary Edition / Neil Young (Reprise Records)

ハーヴェスト(50th アニヴァーサリー・エディション)/ニール・ヤング

今朝は大騒ぎだ。あ、いや、サッカーはもちろんだけど。ビーチ・ボーイズの『セイル・オン・セイラー1972』6CDが出て。ポール・マッカートニーの7インチ・シングル80枚組(!)も出て。エルヴィス・プレスリーの『エルヴィス・オン・ツアー』6CD+ブルーレイストリーミングが始まって。ニール・ヤングの『ハーヴェスト』50周年記念エディション3CD+2DVDも出て。どれ聞いていいやら。やばいです。あわあわです。

スペイン戦、勝ってほしいけどむずかしそうだから、まあ、画面だけ見つつどれか聞こう、と。なら、いちばん曲数が少ないニール・ヤングかなぁ…ということで。ニール・ヤングの『ハーヴェスト』にしました。50周年記念エディションが出ると予告されてすぐ、ぼくは2LP+7インチ+2DVDというセット(Amazon / Tower)をネットで予約して。でも、当然まだブツは届いていなくて。とりあえず音だけ、先にストリーミングで楽しみました。

もちろん、サッカーの展開がすごいことになりすぎて。ちょっと後半、何度か、特に例のVARのあたりで思いきり上の空になりつつも(笑)。若き日のニール・ヤング、堪能しました。やっぱり名盤。しみました。ちなみに、ぼくはニール・ヤング・アーカイヴズの会員にもなっているので、ハイレゾでストリーミングを楽しめることになっているのだけれど、時差の関係でまだ試合の間は配信スタートしてませんでした。それはおいおい、ね。

さて、この50周年エディション。通常のセットは3CD+2DVD。内訳としては、ディスク1が1972年のオリジナル・アルバムの最新リマスターCD。ディスク2がブートレッグなどでおなじみ、1971年に英BBCで収録されたライヴの初オフィシャル・リリースCD。ディスク3が「バッド・フォグ・オヴ・ロンリネス」「過去への旅路(Journey Through the Past)」「ダンス・ダンス・ダンス」という未発表アウトテイク3曲を収めたCD。

で、ディスク4が『ハーヴェスト・タイム』と題された未発表ドキュメンタリー映像のDVD。これはカリフォルニアの牧場にニール・ヤングが作ったブロークン・アロー・ランチ・スタジオをはじめ、ロンドンのバーキング・タウン・ホール、ナッシュヴィルのクァドラフォニック・サウンドなどで行なわれたアルバム『ハーヴェスト』のレコーディングの模様をドキュメントした2時間の貴重な映像作品だ。もう1枚のDVD、ディスク5には前出BBCのスタジオ・ライヴの模様が収められている。

といっても、ぼくの手元にはまだブツがないので(笑)。映像のほうは見られていないのだけれど。これは年末に向けて思いきり楽しめそう。さらにブツがないとよくわからないハードカヴァー・ブックレット。これもすごそうだ。資料で見たところによれば、写真家/プロデューサー/ミュージシャンであるジョエル・バーンスタインによる書き下ろしライナーノーツ、未公開の貴重な写真の数々が掲載されているとのこと。

『ハーヴェスト』の素晴らしさについては別に今さらぼくが語り直す必要もないと思う。「男は女が必要(A Man Needs a Maid)」とか「アラバマ」とか、歌詞をめぐって物議をかもした楽曲も多い1枚ではあるけれど、このアルバムでニール・ヤングが提示した様々な“愛”への熟考と、ケニー・バットリー(ドラム)、ティム・ドラモンド(ベース)、ジャック・ニッチ(キーボード)、ベン・キース(ペダル・スティール)という顔ぶれによるザ・ストレイ・ゲイターズとともに実現したナチュラルな音作りが以降のシンガー・ソングライターの在り方に与えた影響は計り知れない。

高校生のころ、このアルバムを何度も何度もリピートしてニール・ヤングの素晴らしいアコースティック・ギター・プレイをなんとか真似したいと一所懸命練習したことを思い出す。この人、カントリー系の基本ピッキング・テクニックをしっかりマスターしているようで、たとえばヘロイン中毒に陥っていく友、ダニー・ウィッテンの痛ましい姿を描いたと言われる「ダメージ・ダン(The Needles And The Damage Done)」などでは、低音弦によるベース音と高音弦によるコードとを交互に弾き分けるカントリー・ピッキングが聞けるし。シングルとしても大ヒットした「孤独の旅路(Heart Of Gold)」や冒頭を飾る「週末に(Out On The Weekend)」で聞くことができる、アタマ2拍でブリッジ部を叩くようにゴンゴンッと低音弦側を弾き、そのあと高音弦でコードを鳴らすテクニックもかっこよかった。わー、懐かしい。

エレクトリック・ギターをガシガシ奏でる「アラバマ」「国のために用意はいいか?(Are You Ready for the Country?)」「歌う言葉(Words)」とか、ロンドン・シンフォニーの壮麗なオーケストレーションをバックに配した「男は女が必要」と「世界がある(There's a World)」とかも含め、バッファロー・スプリングフィールド時代からのニール・ヤングの多彩なスタイル、過去・現在・未来のすべてがコンパクトに凝縮されている感じ。

バーンスタインがライナーで指摘しているらしいのだけれど、アルバム『ハーヴェスト』に関わった者たち、たとえばアルバムをバックアップしたストレイ・ゲイターズのメンバー全員、さらには共同プロデュースを手がけたエリオット・メイザー、エンジニアのヘンリー・ルーウィ、マネージャーのエリオット・ロバーツ、アート・ディレクターのトム・ウィルクスなど、みんな他界している。まあ、そういう年回りってことになるわけで。仕方ないことではあるものの。

そういう故人たちの思いは今もこうして真空パックされ、時を超えて生き続けているのだな、と。そんなこともしみじみ感じる50周年記念エディションなのでした。ぼくも最近、とてもお世話になった大切な仲間を亡くしたばかりで。彼も『ハーヴェスト』を大好きだったよなぁ…とか思い出しながら、50年という歳月をしみじみ噛みしめたりしているわけです。BBCライヴでの「過去への旅路」や「ラヴ・イン・マインド」みたいなピアノ弾き語りも泣けます。亡くなった友人にも聞かせてあげたかったな。

さて、とりあえず寝て(笑)。ブツの到着を待ちます。映像が楽しみ!

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